労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  旭コンクリート 
事件番号  新潟地労委 平成 3年(不)第1号 
申立人  総評・全日本建設運輸連帯労働組合小千谷支部 
被申立人  旭コンクリート 株式会社 
命令年月日  平成 5年 2月18日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、(1)賃金・一時金に関する団交において不誠実な対応をしたこと、(2)組合員以上の賃上げを非組合員に実施したこと、(3)組合分会長X1の担当車を同意約款を無視して他工場へ移動し、運転業務に従事させなかったこと、(4)取引業者の組合活動への介入を黙認したこと、(5)就業規則の変更等に関する団交を拒否し一方的にこれを実施したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
新潟地労委は、(1)、(5)について具体的資料を提出した誠実団交の実施、(2)について組合員に対する不利益取扱いの禁止、(3)について不利益取扱いの禁止及び組合に対する支配介入の禁止を命じ、併せて(1)、(2)、(3)、(5)について文書手交を命じた。その余の申立てについては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人との間における賃金、一時金及びその他の労働条件の変更に関する団体交渉において、速やかに被申立人の経営状態等を具体的に把握し得る資料を提出し、被申立人の回答ないし提案について十分に説明するなどして、誠意をもって応じなければならない。
2 被申立人は、賃金引上げ等において、合理的な理由なく非組合員を優位に取り扱い、申立人分会員を不利益に取り扱ってはならない。
3 被申立人は、申立人と事前に協議することなく、申立人分会員を運転手としての業務に従事させないなどして不利益に取り扱ったり、他の分会員や非組合員に対する見せしめとしたりして、申立人組合の弱体化を図るような支配介入をしてはならない。
4 被申立人は、申立人に対し、この命令書交付の日から5日以内に下記の誓約書を手交しなければならない。
 (注 年月日は手交した日を記載すること。)
               記
                 平成  年  月  日
総評・全日本建設運輸連帯労働組合小千谷支部
 執行委員長 X2殿
              旭コンクリート株式会社
               代表取締役 Y1
            誓  約  書
 会社が行った次の行為は、新潟県地方労働委員会において労働組合法第7条1号、2号及び3号に該当する不当労働行為であると認められましたので、今後このような行為を行わないことを誓約します。
(1)  平成2年賃上げ、同年夏期一時金、同年冬期一時金及び平成3年賃上げに関する団体交渉において、会社の経営状態等を示す資料の提示を拒否し、十分な説明をしないなど、貴組合との交渉に不誠実であったこと。
(2)  平成2年賃上げにおいて、賃金格差是正と称して組合員以上の賃上げを非組合員に実施したこと。
(3)  貴組合旭コンクリート分会長X1氏の担当大型生コン車を移動した上、約5か月間運転手としての業務に就かせなかったこと。
(4)  貴組合からの申入れにもかかわらず、就業規則の変更及び同意約款の解約に関する団体交渉に応じなかったこと。
5 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  2901 組合無視
賃上げ交渉途中で工場の勤務体制の変更を提案し今後の優先議題として協議するよう組合に申し入れたり、妥結前に一方的に加給した会社の態度が団交を形骸化させる不当労働行為であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
会社が賃上げにつき極端な低額回答をするにあたっては、会社全体の決算関係資料を提出する必要があり、会社が提出した資料からみて、会社の交渉態度は解決に向け誠実に努力しているとは認められないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
組合員との賃金格差是正を理由に季節雇用から通年雇用となった非組合員の運転手に対し賃上げを行ったことは、格差是正を口実として組合員の賃金を抑える方便であり、組合員に対する不利益取扱いとされた例。

2240 説明・説得の程度
一時金交渉で、前年比で著しく低額回答したことにつき、少なくとも当期の貸借対照表及び損益計算書を提出して説明すべきであったところ、会社のとった対応は、誠実団交とはいえないとされた例。

3900 「不利益の範囲」
分会長の担当大型生コン車を同意約款に基づく事前協議、労使の合意なく移動し、放置したことが、同人に対する職務上、精神上の不利益取扱いであるとされた例。

1302 就業上の差別
分会長の担当する大型生コン車を、同意約款に基づく事前協議、労使の合意なく移動し、放置したことが不当労働行為とされた例。

2613 使用者と取引関係者の言動
会社の取引業者がスピーカー積載の乗用車により組合員全員の自宅周辺で宣伝活動を行ったことが、会社の指示あるいは会社の意を体して行ったものとまでは認め難いとされた例。

2240 説明・説得の程度
一時金に関する団交における会社の態度は、関係資料の提示、交渉途中での他の交渉事項提案などを行っていることからみて、不誠実な交渉態度とされた例。

2245 引き延ばし
就業規則の変更及び同意約款の解約手続に関する団交を理由なく遅延させたこと等が不誠実な交渉態度とされた例。

4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
本件申立てに係る団交において決算関係資料等を提出しない会社の対応状況を考慮して、将来にわたる誠意のある団交応諾を命じた例。

業種・規模  窯業・土石製品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集96集223頁 
評釈等情報   

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