労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東豊観光 
事件番号  大阪地労委 平成 2年(不)第21号 
大阪地労委 平成 3年(不)第1号 
大阪地労委 平成 3年(不)第16号 
大阪地労委 平成 3年(不)第30号 
申立人  自交総連東豊観光労働組合 
被申立人  東豊観光 株式会社 
命令年月日  平成 4年 3月31日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)会社慣行を無視して組合員X1を55歳で定年退職扱いとしたこと、(2)非組合員に対して別組合への加入を強要したこと、(3)組合員X2を観光バス見習い業務から専属運送業務へ配置転換したこと、(4)組合員を観光業務から排除等することにより組合員の収入を減少させたこと、(5)組合員X3及びX4に担当車両を与えなかったこと、(6)街頭宣伝活動を行った組合員を自宅待機処分にしたこと、(7)年休を取って組合活動を行った組合員X5及びX6に対し年休の取消処分を行ったこと、(8)団交を拒否し又は誠実に応じなかったこと、(9)組合員の入会を拒否している親睦団体に会社が援助をしていること、(10)夏季一時金を前年に比べて大幅に減額したこと、(11)定期昇給において組合員を差別したこと、(12)会社営業所内の組合旗を一方的に撤去したこと、(13)組合事務所内の会社貸与の備品を一方的に撤去したことが争われた事件で、(3)については、X2に対する配転命令のなかったものとしての取扱い及び観光主体の業務への従事、(4)については、観光業務に従事していれば得たであろう寸志等の収入相当額の支払い及び同様の不利益取扱いの禁止、(5)については、X3及びX4への担当車両の割当て、(6)については、自宅待機処分のなかったものとしての取扱い及びバックペイ、(7)については、X5及びX6に対する年休取消処分のなかったものとしての取扱い、(8)については、誠実団交の実施、(9)については、親睦団体への組合員差別禁止の働きかけ及び入会可能になるまでの間の同等の福利厚生措置の組合員への実施、(10)については、夏季一時金の是正及びバックペイ、(11)については、昇給の是正及びバックペイ、及び(1)、(2)、(12)、(13)に関する文書掲示を命じた。 
命令主文  主  文
1.被申立人は、申立人組合員X2に対し、平成2年3月29日付け神戸港埠頭公社での勤務を命じた配転命令をなかったものとして取り扱うとともに同人を観光業務を主体とした業務に従事させなければならない。
2.被申立人は、申立人組合員10ら14名に対し、平成2年3月17日(X2にあっては、同年5月28日)から同年11月5日までの間、同人らが観光業務に従事していれば得たであろう寸志、紹介料収入相当額として 520,000円(X2にあっては、360,000 円)及びこれに命令交付日から同金額を支払うまでの間年率5分を乗じた金額を支払わなければならない。
3.被申立人は、申立人組合員に対し、観光業務を主体とする業務に従事させ、その行先及び回数において、申立人組合員以外の乗務員と同等に取り扱わなければならない。
4.被申立人は、申立人組合員X3に対し、新車又はこれと同等の中型サロンカーを、同佐藤利之に対し新車又はこれと同等の小型スタンダードカーを担当車両として割り当てなければならない。
5.被申立人は、下記の表中氏名欄記載の申立人組合員(X7を含む)に対する同表中自宅待機処分期間欄記載の間の自宅待機処分及び同期間中に会社が貸与した書物の読書感想文の提出を命じる処分をなかったものとして取り扱い、同表中金額欄記載の金額及びこれら金額を給与より控除した日から同金額を支払うまでの間これに年率5分を乗じた金額を支払わなければならない。(下記の表については略)
  
6.被申立人は、申立人組合員X5に対する平成2年8月13日付け年次有給休暇取消処分及び同X8に対する同年9月25日付け年次有給休暇取消処分をそれぞれなかったものとして取り扱わなければならない。
7.被申立人は、申立人との団体交渉に、社長等決定権限のある者を出席させ、実質的な交渉がなされるよう誠実に応じなければならない。
8.被申立人は、豊和会に対し、申立人組合員が同会への入会について他の従業員と差別されることのないよう働きかけるとともに、申立人組合員が同会に入会できるようになるまでの間、申立人組合員に対し同会会員と同等の福利厚生措置を講じなければならない。
9.被申立人は、申立人組合員(X7を含む)らに対し、平成2年夏季一時金について元年夏季一時金と同額とし、既に支払った金額との差額及びこれに2年7月10日から同差額を支払うまでの間年率5分を乗じた金額を支払わなければならない。
10.被申立人は、申立人組合員X10ら9名に対し、平成3年度定期昇給にかかる昇給額について、申立人組合の組合員全員の固定給に対する平均引上率が6.01%になるよう(計算に際して、坂正治については、再査定により昇給すべき額の2倍の額を用いる)、かつ、各人については被申立人が既に示した回答額を下回らないよう再査定し、再査定後の額と既に支払った額との差額及びこれに年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
11.被申立人は、1メートル×2メートル大の白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して、被申立人会社南営業所及び北営業所の玄関付近の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
            記
                    平成 年 月 日
自交総連東豊観光労働組合
 代表者 執行委員長 X9 殿
          東豊観光株式会社
           代表者 代表取締役 Y1
 当社が、行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
            記
1.貴組合員X1氏を平成2年2月12日付けで定年であるとして退職扱いとしたこと。
2.当社代表取締役Y1が平成2年1月16日に、当時貴組合員であった従業員X11氏に対し「組合員であり続けるならば、満55歳で辞めてもらう」旨発言する等、貴組合員に対し組合脱退工作を行い、また、Y2人事課長が同年4月頃、新規採用予定者との面接において「別組合に入ることを採用の条件としている」旨発言する等、新規採用者及び非組合員に対し貴組合への加入を妨害したこと。
3.当社北営業所及び南営業所において貴組合が掲揚する組合旗を一方的に撤去したこと。
4.貴組合が貴組合事務所において使用していたエアコン、コピー機及びソファーについて、平成2年8月27日エアコンを使用不能とし、コピー機を同所より持ち出したこと及び同年9月1日ソファーを同所から持ち出したこと。 
判定の要旨  0200 宣伝活動
本件街頭宣伝活動は、会社の諸々の行為に対する抗議行動としてなされたもので、その態様等からみて、妥当性を欠いたものとまではいえず、正当な組合活動の範囲内にあるとされた例。

1106 契約更新拒否
会社が、組合員X1を55歳定年退職扱いとしたことは、過去5年間実施されてきた特段の事情のない限り56歳定年扱いとする慣行を無視したもので不当労働行為であるとされた例。

1203 その他給与決定上の取扱い
街頭宣伝活動を行った組合員の年休を取り消し、欠勤扱いとし、賃金カットしたことが不当労働行為に当たるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
1202 考課査定による差別
組合員に対する平成2年夏期一時金を同元年夏期一時金と比べ大幅に減額したことは不当労働行為に当たり、また平成3年定期昇給について、組合員の平均昇給率をその他の従業員に比べ著しく低く査定したことが不当労働行為に当たるとされた例。

1300 転勤・配転
1400 制裁処分
組合員X2を観光バス見習い業務から港埠頭公社での専属運送業務へ配置転換を命じたことは不当労働行為であり、同配置転換を拒否した組合員X2に対して営業所整備課での勤務を命じ、かつ、配転拒否を理由に出勤停止処分を行ったことが不当労働行為であるとされた例。

1302 就業上の差別
会社が、組合員X2に対して未だ観光バス業務に従事させていないことは不当労働行為であり、組合員に対して送迎業務のみ従事させ、観光業務に従事させないことが、賃金及び相当額にのぼる寸志、紹介料等の収入減を意図した不当労働行為に当たるとされた例。

1302 就業上の差別
組合員に対して観光業務に従事させてはいるが、なお、行先、回数において組合員を他の乗務員と比べ不利な配車をしているとして、これが不当労働行為に当たるとするとともに、会社は、組合員X5及びX6が、現在、他の従業員と同等以上の車に乗務していると主張するのみで、担当車両を与えない合理的理由を疎明していないので、両人に担当車を与えていないことも不当労働行為に当たるとされた例。

1400 制裁処分
街頭宣伝活動が就業規則に違反するとして、組合員に対し、自宅待機処分、文書提出命令及びこれに係る賃金カットを行ったことが不当労働行為に当たるとされた例。

1601 福利厚生上の差別
親睦団体が規約で組合員を排除する意思を明示し、組合員の入会を拒絶したことは、会社が同会に援助を行っていることから、このことは会社の行う福利厚生活動において組合員を差別する不当労働行為に当たるとされた例。

2248 実質的権限のない交渉担当者
会社が、組合との団交を拒否したり、社長が団交出席を拒否し、交渉権限のない者を出席させたり、組合に対し賃料の提出を拒否し、内容について何の説明も行わないことが不誠実な態度であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社常務が組合員に対して、組合員であり続けるならば、55歳で定年退職させる等の発言をしたことが、組合脱退の強要もしくは勧誘であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
社長らが、組合事務所備付けのエアコン、コピー機等を搬出したことが支配介入であるとされた例。

3020 組合活動への制約
会社が営業所のベランダに掲揚した組合旗の撤去の求め、組合がこれを拒否したところ、会社が一方的にこれを撤去したことが支配介入であるとされた例。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
会社は、組合員X1に対する定年退職扱いを撤回して、その後嘱託社員として処遇しているが、本件について組合は団結権侵害の回復のためのポスト・ノーティスを求める被救済利益を有するとされた例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
本件救済対象者X7は、会社退職により組合を脱退しているが、同人は救済を放棄していないので、他の対象者と同様の救済を命じるとされた例。

4407 バックペイの支払い方法
4415 賃金是正を命じた例
観光業務に従事する乗務員が得る寸志、紹介料は、その業務に従事すればほぼ確実に得られる収入であり、事実上乗務員の賃金を補完し、賃金と同様の機能を果たしていること等から、これら収入相当額の支払いが命ずるとともに、寸志、紹介料収入相当額の算定については、少なくとも通年にわたり、記録があり、記録のある者のうち最も額の低い者と同程度の額を下回らないものと認めるのが相当であるとされた例。

4414 その他の不利益の場合
組合は賃金カット額の本払いを求めているが、会社は、それぞれのカット額を両名に送金しているので、年休取消しがなかたものとすることのみ命じれば足りるとされた例。

4414 その他の不利益の場合
親睦団体入会拒否の救済として、組合員が同会入会に当たり差別されることのないよう働きかけるとともに、組合員が同会入会までの間、組合員に対し同会会員と同等の福利厚生措置を講じるよう命じた例。

4413 給与上の不利益の場合
平成3年定期昇給に関する救済として、組合員の平均定昇率が管理職を除く従業員の平均定昇率と同率となるよう是正を命じた例。

4614 文書手交のみを命じた例
組合事務所備付けのエアコン等の撤去の救済として、これら物件の設置及び機能回復についてあえて命令によることなく、労使双方が折衝等の自主努力によって解決することが望ましいとして、文書掲示を命じた例。

業種・規模  道路旅客運送業(バス専業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集94集366頁 
評釈等情報   

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