労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  第2近畿生コン・第3近畿生コン 
事件番号  京都地労委 昭和61年(不)第14号 
京都地労委 昭和62年(不)第22号 
申立人  X1 ほか5名 
申立人  全日本運輸一般労働組合関西地区生コン支部 
被申立人  近畿生コン  株式会社 
命令年月日  平成 3年11月29日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)時間内組合活動に対する賃金保障について労働組合間で差別していること、(2)食事手当の支給要件について部門間で差を設けていること、(3)昭和61年以降の賃金改定等において組合員X1ら6名に差別的取扱いをしていること、(4)時間外労働手当の深夜割増率、残業保障時間等を一方的に変更したこと、(5)組合員X2の一時金をカットしたこと、(6)同人の基本給低額改定の是正要求を放置したこと、(7)組合事務所の貸与について組合間で差別的な取扱いをしていること、(8)昭和61年7月から9月まで組合員の残業を拒否したこと、(9)昭和63年6月に休日を一方的に変更したこと、(10)残業手当の計算方法による誤差の是正要求が放置されたことが争われた事件で、(1)については、組合への賃金保障を命じることは労委の裁量権を逸脱するおそれがあるとして文書掲示のみを、(3)、(5)、(6)については、申立期間を徒過した部分を却下し、その他の部分についてバック・ペイを、(7)については、組合事務所の貸与を命じ、併せてこれら事項に関する文書掲示を命じ、(2)、(4)についての申立ては棄却し、(8)から(10)までについては、申立期間を徒過しているとして、却下した。 
命令主文  1.被申立人近畿生コン株式会社は、昭和61年度から平成元年度までの賃金改定差額分、一時 金差額分及び福利厚生費未払い分として、X1、X3、X4、X5、X6及びX2に次の金 額(略)を支払わなければならない。
2.被申立人は、申立人組合と組合事務所の設置場所、面積等の具体的条件について協議した うえ、申立人組合に組合事務所を貸与しなければならない。
3.被申立人は、下記内容の文書を、縦1m×横1.5mの模造紙に楷書で明瞭に墨書し、近畿生 コン株式会社の従業員に見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
                     記
  昭和58年10月10日の全日本運輸一般労働組合関西地区生コン支部の事実上の分裂以降、会 社内に2つの組合が併存しており、このような複数組合併存下にあっては、使用者は各組合 に対して中立を保持しなければならなかったにもかかわらず、会社は全日本建設運輸連帯労 働組合関西地区生コン支部にのみ、時間内組合活動に対する賃金不控除の取扱や組合事務所 の貸与を行うなど、全日本運輸一般労働組合関西地区生コン支部及びその組合員に対し差別 的取扱を行ってきました。今般、京都府地方労働委員会から、これらの対応が不当労働行為 であると認定されました。よって、今後このような不当労働行為を行わず、両組合に平等に 対応いたします。
  以上、京都府地方労働委員会の命令により誓約いたします。
                                  年  月  日
   全日本運輸一般労働組合関西地区生コン支部
    執行委員長 X7 殿 
                          近畿生コン株式会社      
                           代表取締役 Y1
4.申立人の申立てのうち、次の不利益取扱に係る救済申立てを却下する。
 (1)申立て及び各追加申立て時において救済を申し立てている内容の中で、それぞれの申立   日現在で1年を経過した賃金支払行為に係る時間内組合活動に対する賃金保障のとりや   め。
  (2)昭和61年7月度賃金計算日から9月度賃金計算日までの期間において残業を拒否された   こと。
  (3)昭和63年6月に休日を一方的に変更されたこと。
  (4)残業手当ての計算方法による誤差の是正要求が放置されたこと。
  (5)X2に対する基本給低額支給のうち、平成元年8月7日以前の賃金支払日に支払われた   部分。
5.申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
製造部門従業員に対する食事手当の支給は、慣行に基づくものであり、すべての従業員を同様に扱っており、不利益は存在しないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
昭和61年賃金改定等の条件として 5項目の合理化案を提案し、これをすべて受け入れなければ賃金改定等を実施しないとしてこれを行わず、申立人らの賃金について差別したことが不利益取扱いであるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
定年57歳に達したX2の一時金を「2割カット条項」を適用して20%カットしたことが不利益取扱いであるとされた例。

2900 非組合員の優遇
同一企業内に複数組合が併存する場合、別組合の組合員に対してのみ時間内組合活動に対する賃金保障を行い、組合の組合員に対して賃金保障を行わないことが中立保持義務に反し不利益扱いであるとされた例。

1604 その他
組合員X2の基本給低額改定の是正要求に対して、これを放置したことが不利益取扱いに当たるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2901 組合無視
旧支部の分裂により2組合が併存し、旧支部の組合事務所が別組合に占有されている状況のもとで、会社は事務所設置を回答していることや組合が別組合と同規模の労働組合であることから、組合事務所を貸与しないことが支配介入に当たるとされた例。

2251 一方的決定・実施
会社が組合との合意もなく労働条件を一方的に変更することに問題はあるが、別組合との合意を根拠に全従業員に適用していた労働条件を変更したに過ぎず、不当労働行為には該当しないとされた例。

4613 P.Nのみを命じ、他の救済の必要性を認めなかった例
時間内組合活動に対する賃金保障の組合間差別の救済として、その格差の具体的是正を命じることは労委の裁量の範囲を逸脱するものであるとして、ポスト・ノーティスにとどめるのが相当とされた例。

4407 バックペイの支払い方法
運転手の賃金改定に伴う差額分として、別組合の組合員に対して行った賃金改定の額から不就労時間分の賃金を控除し、残業手当及び有給差額金へのはねかえり分を追加した金額の支払いを命じ、また一時金の差額分として、別組合の組合員に対して支給した一時金の基準となる金額から、欠勤日数分の欠格控除を行い、既に和解等で支払われた金額を控除した金額の支払いを命じた例。

4407 バックペイの支払い方法
製造部門の従業員の賃金改定の差額分の支払いとして、客観的に役職や職務内容等において同レベルであるとみなされる他の従業員に対する賃金改定額をもって回復額の基準として不就労時間数分の賃金を控除し、残業手当及び有給差額金へのはねかえり分を追加した金額の支払いを命じ、また、一時金の差額分の支払いとして、客観的に役職や職務内容等において同レベルであるとみなされる他の従業員に対する一時金の基準額及び前年度の一時金と同額を回復額の基準とし、欠勤日数分の欠格控除を行い、既に和解等で支払われた金額を控除した金額の支払いを命じた例。

4407 バックペイの支払い方法
組合員X2の一時金の是正について、別組合の組合員に支給した一時金の金額から、欠勤日数分の欠格控除を行い、既に和解等で支払われた金額を控除した金額の支払いを命じた例。

4414 その他の不利益の場合
福利厚生費の差別については、別組合の組合員1人につき5万円が支払われていることから、これと同額を組合員に支払うよう命じた例。

4602 組合との協議を命じた例
組合事務所の貸与差別につき、設置場所・面積等の具体的条件については労使の実情に即して自主的に決めることが適当であるとして、労使間協議のうえ組合事務所を貸与することを命じた例。

5200 除斥期間
組合員の基本給低額改定の是正要求の放置に対する申立てに関し、労委は「現に存する不利益」について救済しても法に抵触しないとする申立人らの主張が、本件には当てはめることはできないとして斥けられた例。

5201 継続する行為
本件で申し立てられている各行為は、形態、種類において様々で相互に切り離せないほど密接に関連を持つものではなく、すべてを一括して単一の不当労働行為であるということはできず、行為が「継続する行為」に当たるか否かは、当該行為の態様が客観的不可分一体であるか否かにより判断すべきであるとされた例。

5200 除斥期間
時間内組合活動に対する賃金保障をとりやめた会社の行為は、それぞれ賃金支払日及び一時金支払日における賃金控除等であり、その都度完結する1回限りの行為であるとして、申立日及び各追加申立日現在1年を経過した賃金支払行為に係る賃金保障とりやめについての申立てが却下された例。

5201 継続する行為
残業を割り当てないという会社の行為は、申立人らの一日の就労の終了とともに完結する1回限りの行為であり、また、休日の一方的変更により就労できず賃金カットされたことは、当該賃金支払日で完結する1回限りの行為であり、さらに残業手当の誤差の是正要求の放置は、各月の賃金支払日ごとに完結する1回限りの行為の累積であるとして、このことに係る申立てが却下された例。

5200 除斥期間
組合員X2に対する基本給低額改定の是正要求の放置は、各月の賃金支払日ごとに完結する1回限りの行為の累積であるとして、追加申立日現在1年を経過した賃金支払日の過少払いに係る申立てが却下された例。

業種・規模  窯業・土石製品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集93集425頁 
評釈等情報   

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