概要情報
事件名 |
東京教育図書 |
事件番号 |
東京地労委 昭和62年(不)第77号
東京地労委 昭和63年(不)第27号
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申立人 |
東京出版合同労働組合 |
被申立人 |
有限会社 東京教育図書 |
命令年月日 |
平成 2年 9月18日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)業務命令違反を理由に組合員2名を出勤停止処分に付したこと、(2)営業収入激減を理由に執行委員長ら2名を解雇したこと、(3)組合員らに対してのみ昭和62年夏季・年末一時金に相当する金銭を支給しなかったこと、(4)会社役員による支配介入発言、組合員に対する本来業務外し、業務取上げ、電話の取次拒否、労働委員会の調査審問に出席した組合員の早退・遅刻届の不受理及び不誠実団交について争われた事件で、(1)については、上記2名の出勤停止処分がなかったものとしての取扱い及びバックペイを、(2)については、上記2名の解雇がなかったものとしての取扱い、原職復帰及び賃金相当額と仮処分決定による支払済金等との差額相当額の支払い(年5分加算)を、(3)については、一時金相当額の支払い(年5分加算)を、(4)については、文書掲示を命じ、併せて上記命令の履行報告を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人有限会社東京教育図書は、申立人東京出版合同労働組合所属の組合員X1に対して行った昭和62年12月25日付出勤停止処分、および同X2に対して行った昭和62年12月26日付出勤停止処分がいずれもなかったものとして取扱い、同処分がなかったとすれば受けるはずであった賃金相当額を、それぞれ支払わなければならない。 2 被申立人会社は、申立人組合所属の組合員X1および同X3の両名に対し、次の措置を含め昭和63年3月25日付解雇がなかったと同様の状態に回復させなければならない。 (1) 昭和62年5月19日当時従事していた原職相当職(担当業務)に復帰させること。 (2) 解雇の翌日から原職相当職に復帰するまでの間に、両名が受けるはずであった賃金相当額と、既に支払い済みの解雇予告手当および東京地方裁判所における仮処分決定により既に支払い済みの金額との差額、並びにこれに対する各支払日の翌日から支払い済みまで、年5分の割合による金員を支払うこと。 3 被申立人会社は、申立人組合所属の組合員X1、同X3および同X2に対し、昭和62年夏期一時金に相当するものとして、それぞれの月額基本給および家族手当の 0.9か月分相当の金額と、これに対する62年7月26日から支払い済みまで、年5分の割合による金員を支払わなければならない。また、被申立人会社は、申立人組合所属の組合員X1、同X3、同X2および同X4に対し、昭和62年年末一時金に相当するものとして、それぞれの月額基本給および家族手当の1か月分相当の金額と、これに対する62年12月11日から支払い済みまで、年5分の割合による金員を支払わなければならない。 4 被申立人会社は、本命令受領の日から1週間以内に、下記の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に明瞭に墨書して、被申立人会社の本部事務局および大阪支局の入口付近の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。 記 年 月 日 東京出版合同労働組合 執行委員長 X5 殿 有限会社東京教育図書 代表取締役 Y1 当社の行った以下の行為は、いずれも不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 (1)(1) 当社の役員が、昭和62年6月29日の連絡会議で、貴組合らの団体交渉のメンバーを「団交屋」と呼び、「これはあなた達の要求ではなく上部組織の要求だ。これについてけじめをつけろ。今後あなた達組合員とは一諸に仕事をしたくない」とか、同年7月11日、当社の大阪支局で「自分達の要求は自分達でいうべきだ、職員は横に座っているだけで団交屋だけがしゃべっている。ふきだまりの組合は認めない、けじめをつけるつもりだ」などと発言したこと。 (2) 当社が、貴組合所属の組合員X3、同X6の両氏に対し、62年7月22日「自己変革建白書」の提出を命じ、その不提出を理由に、同年8月6日以降、井上氏に対して引き続き本来業務以外の教材発送業務を、X6氏に対して、同じく引き続き本来業務以外のダイレクト・メールの宛名書き業務をそれぞれ命じたこと。また当社が、貴組合所属の組合員X1氏から同年10月16日教材作成業務を、同年11月20日教室指導者対象の学習会の業務を、および63年1月12日中央教室の生徒指導業務をそれぞれ取り上げたこと。 (3) 当社が、62年6月1日以降、外部から当社にかかって来る電話を、貴組合所属組合員の当社の従業員が受けることを禁じたこと。また、当社が、貴組合所属組合員で、本件の補佐人ともなっている当社従業員らが、62年8月以降63年2月までの間、東京都地方労働委員会の調査・審問に出席するにあたり、早退届および遅刻届を受理しなかったこと。 (2) 当社が、貴組合の申し入れた昭和62年賃上げ・夏期一時金および同年末一時金要求の団体交渉において、関係資料を提示して当社主張の根拠を具体的に明らかにするなど誠実な対応をしなかったこと。(注:年月日は掲示した日を記載すること。) 5 被申立人会社は、前各項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判定の要旨 |
1201 支払い遅延・給付差別
非組合員又は管理職には支給しながら分会員に対してのみ、昭和62年夏期・年末一時金に相当する金銭を支給しなかったことが差別取扱いに当たるとされた例。
1400 制裁処分
業務命令違反を理由に、分会執行委員長X1及び同書記次長X2を出勤停止処分に付したことが、命令違反に藉口し嫌がらせとしてなされた不当労働行為であるとされた例。
2000 人員整理
分会執行委員長X1及び同副委員長X3に対する解雇は、人員整理に名を藉りてなされた不当労働行為であるとされた例。
2240 説明・説得の程度
昭和62年賃上げ、夏期・年末一時金をめぐる団交における会社の態度は、単に経営悪化の事由を抽象的に繰り返すのみで、経営状況等の根拠資料を一切示さなかったもので誠実な交渉態度とはいえないとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
団交の席上における会社役員の発言は、使用者として許される言論の範囲を逸脱したもので、支配介入に当たるとされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
外部からの電話を組合員が受けることを禁止し、分会関係の電話の取次を中止したことが支配介入に当たるとされた例。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会結成直後に分会副執行委員長X3、書記長X6を含む組合員4名から本来業務を取り上げ、教室指導者の勧誘業務を命じたことは分会結成に対する嫌がらせないし報復であるとされた例。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会副執行委員長X3及び書記長X6に対して「自己変革建白書」の提出を命じ、この不提出を理由に両名を引き続き非本来業務に従事させたことが支配介入に当たるとされた例。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会執行委員長代行X1から本来業務を取り上げたことが支配介入に当たるとされた例。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
本件の補佐人又は証人となった分会員の早退届又は遅刻届を受理しなかったことは、就業規則上の秩序維持に名を藉りた嫌がらせであり、支配介入に当たるとされた例。
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
分会執行委員長ら2名の解雇の救済として、賃金相当額から解雇予告手当、仮処分決定による支払い分を控除するのが相当であるが、同決定前の賃金相当額について支払いを受けていないことを考慮すると、上記控除後の額に年5分を付加した金銭の支払いを命じるとした例。
4413 給与上の不利益の場合
4421 文書掲示等を命じた例
分会員以外の従業員に一時金に相当する金銭を支給していたことに対して、ポスト・ノーティスを命じるのが相当であるとされた例。
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
会社の支給実態を考慮し、昭和62年夏期一時金に見合う金額としては各人の基本給及び家族手当の0.9カ月分相当額とし、同年年末一時金については1カ月分相当額とし、それぞれ年5分の割合による金銭を付加して支払うよう命じた例。
4505 その他
団交における会社の不誠実な対応に対して、ポスト・ノーティスを命じるのが相当であるとされた例。
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業種・規模 |
出版・印刷・同関連産業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集91集64頁 |
評釈等情報 |
 
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