労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  飛鳥タクシー 
事件番号  奈良地労委 昭和60年(不)第1号 
申立人  X2 
申立人  X1 
申立人  奈良県自動車交通労働組合飛鳥タクシー分会 
被申立人  飛鳥タクシー  株式会社 
命令年月日  昭和62年 5月18日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)分会への加入妨害等の言動をなしたこと、(2)従業員を慫慂して結成させた別組合と分会とを、組合事務所貸与等において差別的に取り扱ったこと、(3)分会員X1の更衣室のある建物入口のスペアキーを同人に交付しなかったこと、(4)事務職員である分会員X2に無線配車業務への配転を命じ、これを拒否したことを理由に出勤停止処分にしたこと、(5)分会員に残業を拒否したこと、(6)時間外労働について誠実に団交しなかったこと等が不当労働行為であるとして争われた事件で、上記(1)、(2)による支配介入の禁止、X1に対するスペアキーの交付、X2に対する職場復帰、処分のなかったものとしての取り扱いとバックペイ、残業禁止措置の解除と公平な取り扱い、時間外労働についての誠実団交の実施、これらに関する文書手交を命じ、営業車の持帰禁止措置、X1の交通事故惹起にかかる出勤停止処分等についての申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、従業員に対して申立人分会への加入を妨害するような発言をし、また申立人分会の組合員に対して申立人分会からの脱退を勧奨したり、組合組織が拡大しないよう求めるなどして申立人分会の運営に支配介入してはならない。
2 被申立人は、従業員を慫慂して別組合を結成させ、その組合と申立人分会との間に合理的理由なくして差別的取扱をすることで別組合を助長するなどして、申立人分会の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、生駒駅前営業所の電気設備の故障を修理し、申立人X1に対し同営業所入口のスペアキーを交付しなければならない。
4 被申立人は、申立人X2に対して次の措置を含め昭和60年1月7日以降も就労していたと同様の状態を回復しなければならない。
 (1) 昭和60年1月5日に申立人X2に対し発した配転命令をなかったものとして取り扱い、同人を職場に復帰させること。
 また、今後同人をどのような業務に従事させるかは、同人の能力、経験等を考慮して同人及び分会とすみやかに話し合いを行うこと。
 (2) 昭和60年1月7日以降現在まで申立人X2が通常どおり就労したならば同人が受けるはずであった賃金相当額を支払うこと。
 (3) 申立人X2に対してした昭和60年2月20日付3日間及び同年3月2日付5日間のそれぞれの出勤停止処分がなかったものとして取り扱うこと。
5 被申立人は、分会員以外の乗務員との間に差別を設けている分会員に対する残業禁止措置を解除し、それぞれの勤務形態に応じて分会員とそれ以外の乗務員との間で不公平の生じないよう取り扱わねばならない。
 また、被申立人は、時間外労働について申立人分会とは誠実に団体交渉を行わねばならない。
6 被申立人は、申立人分会に対し、下記内容の文書をすみやかに手交しなければならない。
               記
                    昭和 年 月 日
 奈良県自動車交通労働組合飛鳥タクシー分会
 分会長 X1 殿
               飛鳥タクシー株式会社
               代表取締役 松 尾 淳 夫
 当社が、貴組合に対し、下記の不当労働行為を行った旨奈良県地方労働委員会により認定されました。
 よって、今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。
               記
 (1) 従業員に対し貴分会に加入しないよう働きかけたり、貴分会員に対して分会からの脱退を勧奨したり、分会組織の不拡大を求めたこと。
 (2) 従業員を慫慂して別組合を結成させ、それを助長することで貴分会の組合活動を妨害したこと。
 (3) 貴分会の分会長X1氏に対して生駒駅前営業所入口のスペアキーを交付しなかったこと。
 (4) 貴分会員X2氏に対し昭和60年1月5日に配転命令を発したこと、そして同命令違反を理由として同人の就労を拒否したり、出勤停止処分にしたこと。
 (5) 貴分会員以外の乗務員との間に差別を設けて貴分会員に対し残業禁止措置をしたこと。
 (6) 貴分会が申し入れた昭和59年年末一時金、X2氏の職種変更及び残業協定の締結についての団体交渉を誠実に行わなかったこと。
7 申立人らのその余の申立てはこれを棄却する。 
判定の要旨  1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、事務職員で唯一分会に加入したX2に対し、事務的職務から無線配車業務に職種変更したことが不当労働行為とされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、三六協定未締結を理由に分会員に就業時間以後の区別を設けたことが不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
1401 労務の受領拒否
会社が、事務的職務から無線配車業務に職種変更したことに対し、同人が拒否したことを理由に就労拒否及び出勤停止処分に付したことが不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
会社が、X1の交通事故に対し始末書を求め、同人が拒否したことから出勤停止処分に付したことは、会社の正当な処分権を行使したものであり不当労働行為とはいえないとされた例。

1604 その他
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が施設管理の必要性に藉口して、更衣室のある建物入口のスペアキーを分会長X1に交付しないことが不当労働行為とされた例。

2240 説明・説得の程度
X2の配転に関する団交について、その必要性、妥当性を十分説明・説得を行ったとの疎明がないとして、会社の態度は団交拒否に当たるとされた例。

2244 特定条件の固執
年末一時金に関する団交について、会社は別組合との妥結額に固執し、それを分会に押しつけようとする交渉態度は、誠実なものとは言い難く不当労働行為とされた。

2244 特定条件の固執
残業協定締結に関する団交において、新就業規則及び新賃金規程に対する組合の同意がなければ三六協定を締結しないという会社の態度は、団交拒否に当たるとされた。

2500 別組合の結成・援助
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社が、会社に忠実なX3らをして別組合を結成せしめ、かつ、会社施設を申立人組合に貸与しない等の差別をしたことが支配介入とされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
社長の、別組合の結成を援助することを条件とする組合からの脱退あるいは分会組織拡大の自粛を求めるなどの発言が支配介入とされた。

2610 職制上の地位にある者の言動
2625 非組合員化の言動
社長が、X4に対し恫喝を加え、分会への加入を阻止すべき露骨な妨害行動を行ったことについて、正確な時期を特定できないが、I証言とも考慮すれば支配介入とされた例。

2611 その他の従業員の言動
2700 威嚇・暴力行為
組合の、社長がX5をして分会長X1に対し脅迫発言を行わせて組合活動の弱体化を企図したとの主張は、X5が社長の意を受けて発言したものでなく、X5自身が分会に嫌悪感を抱いて発言したものであるとして斥けられた例。

2620 反組合的言動
X6が給与支給額に係る会社の説明を求めた行為について、X6が無線を占拠して無線業務に支障をきたしたこと、上司に暴言をはいたことから報告書を発したことは企業秩序維持の見地からやむを得ない措置と認められ不当労働行為とはいえないとされた例。

3106 その他の行為
営業車の持ち帰り禁止措置が、組合及び組合員の労基署、陸運事務所への申告に対する会社の報復的措置であるとまで断定できず支配介入とはいえないとされた例。

3106 その他の行為
営業車の持ち帰り禁止措置に対し、書記長X7の通勤手当増額がなされていないことを不満に持ち帰っていたことから、会社が、持ち帰らないよう指示したとしても禁止措置が道路運送法等の趣旨によるものであるから支配介入とまではいえないとされた例。

3106 その他の行為
X6が給与支給額に係る会社の説明を求めた際、組合員との紛糾に狼狽した常務Y2がとっさの判断で警察官の出動要請をしたものであり、警察の力によって組合活動を威圧しようとしたものではないとされた例。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
年末一時金にかかる団交が不誠実団交と判断されるものの、当該一時金は会社と組合との間で既に妥結し、組合員は受領しているので、団交を命じる必要がないとされた例。

4614 文書手交のみを命じた例
ポスト・ノーティス請求については、今後の労使関係の安定を配慮し、文書手交が相当とされた例。

5124 その他の審査手続
Kの就労拒否期間中の賃金相当額の支払いは、既に仮処分決定により支払われているが、本件救済として改めて賃金相当額の支払いを命じることを妨げるものでないとされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集81集417頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約300KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。