概要情報
事件名 |
杏林製薬 |
事件番号 |
東京地労委 昭和53年(不)第81号
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申立人 |
合化労連化学一般関東地方本部杏林製薬支部ほか個人5名 |
被申立人 |
杏林製薬 株式会社 |
命令年月日 |
昭和62年 1月13日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)昭和52年春以降の賃金体系変更に関する団体交渉で誠実に対応しなかったこと、(2)昭和52年度の昇給実施及び同夏期一時金、冬期一時金支給に当たり、申立人X1ら5名を差別取扱いしたことが不当労働行為であるとして争われた事件で、(1)X1ら5名の52年度昇給額及び各一時金額の是正、これによる差額の支払い、(2)不誠実団交に関するポスト・ノーティス、(3)上記(1)及び(2)に関する地労委への履行報告を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人杏林製薬株式会社は、申立人X1、同X2、同X3、同X4、同X5ら5名に対し、次の措置を講じなければならない。 (1) 昭和52年7月1日付けで、X1、X2、X3ら3名の等級をいずれも6等級に是正したうえ、同人らの昭和52年度昇給額をそれぞれ16,100円に是正し、また、同日付けでX4、X5両名の等級を5等級に是正したうえ、両名の同年度昇給額を14,500円に是正し、それぞれ支給済の同年度昇給額との差額を同人らに支払うこと。 (2) 上記申立人X1ら5名に対する昭和52年度夏期一時金の支給額を、いずれも評点73.8点に対応する加算支給率で算出した額に是正し、それぞれ支給済の同一時金支給額との差額を同人らに支払うこと。 (3) 上記申立人X1ら5名に対する昭和52年度冬期一時金の支給額を、いずれも総支給率 280パーセントで算出した額に是正し、それぞれ支給済の同一時金支給額との差額を同人らに支払うこと。 2 被申立人杏林製薬株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に下記のとおり楷書で明瞭に墨書し、被申立人会社の本社および開発技術センターの従業員の見易い場所に10日間掲示しなければならない。 記 昭和 年 月 日 合化労連化学一般関東地方本部 杏林製薬支部 執行委員長 X2 殿 杏林製薬株式会社 代表取締役 Y1 当社が行った下記の行為は、不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 記 昭和52年春以降の賃金体系変更に関する団体交渉において、貴組合からの再三にわたる督促にもかかわらず、同年7月4日に至るまで賃金体系変更についての提案を行わず、またその後も貴組合からの度重なる新賃金体系についての説明の要求や質問に対し具体的な説明を行わず、さらに翌53年7月6日に至るまで、会社の「休日」でなければ団体交渉に応じないなどの態度をとりつづけ、誠実な団体交渉を行わなかったこと。 (注:年月日は文書を掲示した日を記載すること。) 3 被申立人杏林製薬株式会社は、前項1項、第2項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
52年度昇給、同夏期及び冬期一時金につき、申立人組合の組合員を非組合員と比べて低く査定したことが不当労働行為とされた例。
2240 説明・説得の程度
2243 対案不提出
会社は、別組合に対しては新賃金体系の導入を提示しながら、組合に対しては再三にわたる督促にもかかわらず、提案すら行わないこと、提案した以降における会社の一連の対応からみて実質的な団体拒否とされた例。
4415 賃金是正を命じた例
組合員5名の昇給額の是正のうち、3名については6等級に格付けした上で、各16,100円に、他の2名は5等級に格付けした上で、各14,500円にするよう命じた。
4415 賃金是正を命じた例
組合員5名の52年度夏期一時金の加算支給率は、同年度における大学卒非組合員の平均評点に対応する加算支給率とすることが相当とされた。
4415 賃金是正を命じた例
組合員5名の52年度冬期一時金の総支給率は、全従業員の中点の支給率と同率にすることが相当とされた。
4505 その他
団交の主題である賃金体系変更問題は、既に解決済であるので、その救済方法としては、ポスト・ノーティスを命ずるにとどめるのが相当とされた例。
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業種・規模 |
化学工業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集81集49頁 |
評釈等情報 |
労働法律旬報 小野幸治 1987.6.10 1169頁 64頁 
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