労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  福岡記念病院 
事件番号  福岡地労委 昭和58年(不)第1号 
福岡地労委 昭和58年(不)第7号 
福岡地労委 昭和59年(不)第18号 
申立人  福岡医療労働組合 
被申立人  医療法人 大成会 
命令年月日  昭和60年10月28日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  (1)病院の不正事実等をまとめた「違法告発文書」や不正医療実例報告書を県医師会理事らに提供したこと、診療報酬の不正請求事件をねつ造し、虚偽の内容をマスコミに公表したこと等を理由に分会長ら4名を懲戒解雇したこと、(2)検査室の縮小を理由に検査科の検査技師及び検査助手である分会員12名を庶務、事務等の業務に配置転換を命じたこと、上記(1)及び(2)に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したこと、(3)組合を誹謗・中傷し、組合からの脱退を強要し、看護婦応募者に対み黄犬契約を迫ったことなどが争われた事件で、(1)分会長ら3名に対する懲戒処分がなかったものとして取扱い、原職復帰、バック・ペイの支払い、(2)分会長2名に対する昭和57年12月17日付配置転換命がなかったものとしての取扱い、原職復帰、バック・ペイの支払い、(3)組合誹謗、脱退強要、黄犬契約等の禁止を命じ、団交応諾及びポスト・ノーティスについては申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人福岡医療労働組合福岡記念病院分会員X1、同X2、同X3に対する昭和57年12月15日付の懲戒解雇処分がなかったものとして取り扱い原職に復帰させるとともに、X1に対し同処分がなければ受けるはずであった賃金相当額を、X2、X3に対しては同処分がなければ受けるはずであった賃金相当額と両名がすでに受け取った賃金相当額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人福岡医療労働組合福岡記念病院分会員X4、同X5に対する昭和57年12月17日付配置転換命令がなかったものとして取り扱い原職に復帰させるとともに、両名に対し同命令がなければ受けるはずであった賃金相当額と両名が既に受け取った賃金相当額の差額を支払わなければならない。
3 被申立人は、組合誹謗、脱退強要、黄犬契約等を行うことにより、申立人組合の活動に支配介入してはならない。
4 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0200 宣伝活動
組合が不正事実等を「違法告発文書」や不正医療実例報告書にまとめ、県医師会理事らに提供した行為は、正当な組合活動として是認しなければならず、若干の行過ぎを認めるにしても、医療事業の公益的性格を考慮すると、全体としては未だ病院として受忍すべき範囲内にあったと認めるのが相当であるとされた例。

0200 宣伝活動
組合が使用者の不明朗・不正な行為をマスコミに公表した行為は、不正事実の存在及び不正が存在すると信じるにつき相当性が是認できるのみならず、組合による記者会見が単に病院による診療報酬の不正請求のみを取りあげているものではなく、労組法違反や時間外手当の未払いなどの労基法違反の問題も含めた総体的な病院の過度の経営優先主義を社会的にアピールすることを目的としてなされていること及び8・25協定成立後も病院が、組合に対する支配介入を続け、冬期一時金交渉に際し別組合に比し不誠実な対応をなしたことに対し、これに対抗する最終的手段として記者発表に踏み切った事情も考慮すると、記者発表はことの成り行き上やむをえざる行動であったと認めざるをえないとされた例。

1103 背信行為
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合ないし分会によるフロッピーディスク3枚の秘匿、県医師会理事らへの「違法告発文書」等の資料提供行為、8・25協定の締結、不正請求等のマスコミ公表はいずれも正当な組合活動として評価できるので、これを理由として、分会長X1ら4名に対し懲戒解雇を行ったことは不当労働行為であるとされた例。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
検査室の縮小を理由に検査技師、検査助手である分会員12名を庶務、事務等の業務に配置転換したことが不当労働行為とされた例。

2500 別組合の結成・援助
病院の第二組合結成への誘導の事実、57年夏期一時金支給にまつわるボーナス署名等は、支配介入であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
病院の職制らが組合を誹謗し脱退を迫る発言を行ったり、同職制らが発起人として進められたボーナス妥結署名において、分会員らに対し組合員であることの嫌味を言いながら署名を強要したことが、病院の組合潰しの意を体してなされた不当労働行為であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2625 非組合員化の言動
8・25協定以後においても新規採用の面接者に対して第二組合への加入書に記入させたり、看護婦応募者に対し、院長が組合を誹謗・中傷し、「組合に入るなら採用できない」と黄犬契約を迫ったことが不当労働行為であるとされた例。

4503 他の救済との関係で団交の必要性を認めなかった例
申立人組合が分会員X1らに対する懲戒解雇及び配置撤回に関する団交応諾を求める申立てについて、上記処分及び配転命令がなかったものとして取り扱うこと等を命じているので、その必要がないとして斥けた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集78集322頁 
評釈等情報   

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