労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  有田交通 
事件番号  和歌山地労委 昭和53年(不)第3号-2 
和歌山地労委 昭和54年(不)第1号-2 
申立人  全国自動車交通労働組合総連合会和歌山地方連合会和歌山自動車交通労働組合中紀分会 
申立人  全国自動車交通労働組合総連合会和歌山地方連合会和歌山自動車交通労働組合 
被申立人  有田交通 株式会社 
命令年月日  昭和61年 2月27日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)組合員に昭和53年年末ないし55年夏期の各一時金を支給しなかったこと、(2)別組合との間に唯一交渉団体約款があることを理由に、交渉事項について同組合と調整するよう求めたこと、(3)組合員に湯浅営業所の閉鎖通知を送付したこと、(4)組合と協議することなく新賃金算出基準を一方的に実施したこと、(5)組合旗の撤去及び営業車の持帰り禁止を通告したこと、(6)営業所長らの組合脱退勧奨等が争われた事件で、(1)組合員に対する一時金の支払い、(2)唯一交渉団体約款を理由に交渉事項について組合間の調整を求めることの禁止、(3)組合の弱体化を意図した営業所閉鎖通知の禁止、(4)新賃金算出基準の一方的実施の禁止、(5)文書手交を命じ、組合旗の撤去及び営業車の持帰り禁止の各通告、所長らの言動の一部については棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員X1、同X2、同X3に対して昭和53年年末、同54年夏期、同 年年末及び同55年夏期の各一時金を被申立人の中紀地区営業所で支払われたのと同じ基準  で、それぞれ支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人組合との団体交渉に際し、他の労働組合との唯一交渉団体協定の締結 を理由に、団体交渉事項について組合間の調整を求めたりして申立人組合を軽視するような 支配介入をしてはならない。
3 被申立人は、職制を通じて申立人組合の結成を妨害したり、勤務時間割を一方的に変更し たり、運転日報の記載漏れに藉口して申立人組合分会長に不利益取扱いを示唆する通知等を したり、申立人組合の弱体化を意図した営業所閉鎖通知をしたりして申立人組合の運営を支 配し、介入してはならない。
4 被申立人は、申立人組合員であることをもって不利な賃金算出基準を一方的に実施するよ うな不利益取扱いをしてはならない。
5 被申立人は、申立人に対し、本命令の交付の日から7日以内に下記の文書を手交しなけれ ばならない。
                     記
  当社が、貴組合及び貴組合員に対して、一時金を支給しなかったこと、唯一交渉団体協定 の締結を理由に要求事項の調整を求めたこと、職制を通じて組合の結成を阻止しようとした こと、勤務時間を一方的に変更したこと、分会長に解雇を示唆する通知等をしたこと、営業 所を閉鎖する通知を行ったこと、賃金算出基準について差別したことは、労働組合法第7条 第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると和歌山県地方労働委員会によって認定さ れました。よって、当社は、今後このような行為を一切いたしません。
                              昭和  年  月  日
                            有田交通株式会社
                             代表取締役 Y1
   全国自動車交通労働組合総連合会和歌山地方連合会
    和歌山自動車交通労働組合
     執行委員長 X4 殿
   全国自動車交通労働組合総連合会和歌山地方連合会
    和歌山自動車交通労働組合中紀分会
     分会長 X1 殿
6 申立人らのその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
営業成績不良等を理由に、従業員の大部分が組合員である三営業所にのみ52年度末一時金を支給しなかったことが不当労働行為とされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
申立人組合分会と協議することなく分会員の存在する二営業所にのみ新賃金算出基準を実施したことが不利益取扱いとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
営業所長Y2が分会員X2を飲食に誘い、組合結成を思いとどまるよう働きかけたことが、不当労働行為とされた。

2620 反組合的言動
分会員らに対し営業所を閉鎖する旨の文書を送付したことが不当労働行為とされた例。

2611 その他の従業員の言動
2620 反組合的言動
3411 その他の従業員の言動
元別組合員名で分会員の妻らに送付された組合を批判する手紙は、会社が分会員を申立人組合から脱退させるため送付したものであるとの組合の主張が斥けられた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
社長が葬儀社を設立するかのようにみせかけ、分会長の妻の実家に商売上の圧力をかけたことが、分会長を辞めさせることを意図してなしたものとは認められないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
営業所長Y3が分会長X5に対し、運転日報の記載漏れについて文書で回答するよう、更に、回答をしない場合には解雇等の方法をとる旨の指示書および通知書を送付したことが、X5が分会長に選出された後間もなく行われていること等から不当労働行為とされた例。

3020 組合活動への制約
無許可で会社施設に掲揚された組合旗を撤去するよう通告したことは、組合旗の掲揚場所や旗の大きさからみて、支配介入とはいえないとされた。

3020 組合活動への制約
営業車の持帰り禁止を通告したことが支配介入とはいえないとされた例。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
組合結成の翌日、営業所の勤務体制を2段階方式から就業規則どおりの5段階方式に変更したことは支配介入とされた例。

3104 別組合利用・別組合員宅訪問
組合の団交申し入れに対し、唯一交渉団体協定を締結している別組合との間で交渉事項について調整を行い、団交に望むよう求めたことが不当労働行為とされた例。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
不利益な新基準を適用された結果生じた賃金差額相当額については、既に会社から支払われているので、これについての救済利益は存しないとされた。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
申立人組合分会印南班が消滅しても分会が存在している以上、支配介入については印南営業所の勤務時間割り変更について救済する必要があるとされた例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
X6ら6名は、何ら特別の意思を留保することなく、申立人組合らに対し書面をもって脱退届けを提出しているのであるから、同人等は賃金等の差別について救済を受ける権利を放棄したものと認められるとされた。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集79集312頁 
評釈等情報   

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