概要情報
事件名 |
ウイザップタングステン工業 |
事件番号 |
神奈川地労委 昭和57年(不)第43号
神奈川地労委 昭和59年(不)第7号
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申立人 |
総評全国金属労働組合神奈川地方本部ウイザップタングステン工業支部菊地 和夫 ほか2名 |
申立人 |
総評全国金属労働組合神奈川地方本部 |
命令年月日 |
昭和60年 4月12日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
(1)協調性の欠如などを理由に組合員X1ら3名を主任に昇格させなかったこと、(2)昭和57年の昇給について、組合員を低査定したこと、(3)組合事務所の貸与を拒否したこと、(4)社長が組合を誹謗する発言を行ったこと、(5)構内でのビラ配布を禁止する鉄製の看板を設置し、会社構内におけるビラ配布を妨害したこと、(6)審問に出頭した会社側申出の証人については会社の職務行為に従事したものとして取扱い、組合側申出の証人については欠勤または有給休暇扱いとしたこと及び(7)上記(1)、(2)、(3)、(5)に関する団交において不誠実な対応をしたことが争われた事件で、(1)組合員X1ら3名の主任昇格及び昇格していれば得たであろう諸給与相当額と既に支払われている額との差額(年5分加算)の支払い、(2)昇格、昇給における差別の禁止、(3)組合事務所の貸与、(4)組合を誹謗する発言による支配介入の禁止、(5)構内でのビラ配布を禁止する旨の鉄製の看板の撤去及び業務に支障のない施設内でのビラ配布に対する妨害の禁止、(6)証人として労働委員会へ出頭した組合員X2に対する賃金相当額(年5分加算)の支払い及びこれらについてのポスト・ノーティスを命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人X1、同X3、同X2を昭和57年3月1日付けで主任に昇格させるとともに、同人らが上記のとおり昇格していれば得たであろう諸給与相当額と既に支払われている額との差額に年5分相当額を加算して、同人らに支払わねばならない。 2 被申立人は、申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部ウイザップタングステン工業支部の組合員に対して、組合員であることを理由に昇格、昇給において差別して取り扱ってはならない。 3 被申立人は、申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部ウイザップタングステン工業支部に対して社会通年上機能し得る程度の組合事務所を貸与しなければならない。 4 被申立人は、申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部ウイザップタングステン工業支部を誹謗する発言をして同支部の運営に支配介入してはならない。 5 被申立人は、被申立人が昭和57年8月5日に設置した構内でのビラ配布を禁止する旨の鉄製の看板を撤去するとともに申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部ウイザップタングステン工業支部が被申立人の施設内において行うビラ配布を業務上支障がない限り妨害してはならない。 6 被申立人は、申立人X2に対し、昭和58年9月21日の賃金相当額に年5分相当額を加算して支払わなければならない。 7 被申立人は、命令交付後速やかに次のとおりの文書を縦1メートル、横2メートルの白色木板に明瞭に墨書し、被申立人秦野工場正門入口附近の従業員の見易い場所に7日間掲示しなければならない。 記 当社が行った次の行為は、神奈川県地方労働委員会により、不当労働行為と認定されました。 当社は、ここに深く陳謝するとともに、再びこのような行為を繰り返さないことを誓約します。 1. 貴組合員X1、同X3、同X2を昭和57年3月1日付けで主任に昇格させなかったこと。 2. 貴組合員に対し、昭和57年度の昇給査定において差別して取り扱ったこと。 3. 貴組合に組合事務所を貸与しなかったこと。 4. 貴組合を誹謗する発言を昭和57年2月8日及び同年6月4日の誕生会で行ったこと。 5. 貴組合の会社構内でのビラ配布を妨害したこと。 6. 貴組合が昭和57年9月24日に申し入れた「不当差別、ビラ配布、組合事務所」についての団体交渉に誠実に応じなかったこと。 7. 神奈川県地方労働委員会に証人として出頭した貴組合員に対し、会社側証人と差別して取り扱ったこと。 昭和 年 月 日 総評全国金属労働組合神奈川地方本部 執行委員長 X4 殿 総評全国金属労働組合神奈川地方本部 ウイザップタングステン工業支部 執行委員長 X3 殿 ウイザップタングステン工業株式会社 代表取締役 Y1 8. 申立人らのその他の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1200 降格・不昇格
協調性の欠如などを理由に組合員X1ら3名を主任に昇格させなかったことが、不当労働行為とされた例。
1202 考課査定による差別
昭和57年の昇給について、社員1人平均6.21パーセント、査定は平均Cランクとすることを組合との間で合意し、組合ごとに当該平均値になるよう調整しているとしながら、申立人組合の組合員の査定については、その平均値をCランク以下としたことが、不当労働行為とされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
2900 非組合員の優遇
会社側申出の証人の労働委員会への出頭については、会社の職務に従事したものとして取り扱いながら、組合側申出の証人については、欠勤扱いしたことが、不当労働行為とされた例。
2240 説明・説得の程度
不当差別、ビラ配布等についての団交において、具体的説明を伴わない回答に終始する会社の態度が、不当労働行為とされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
社長が誕生会において、組合を誹謗する発言をしたことが不当労働行為とされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
「組合事務所については、会社は昭和54年3月末日を目途に探すよう努力する」旨の労働委員会のあっせん案を受諾した経緯が存在するにもかかわらず、組合事務所の貸与について全面的に拒否したことが、不当労働行為とされた例。
3020 組合活動への制約
構内でのビラ配布等を禁ずる鉄製の看板を設置し、会社構内のびら配布を妨害したことが、不当労働行為とされた例。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
不当差別、ビラ配布及び組合事務所の貸与についての団交における不誠実対応に対する救済として、これら3項目についての誠実な団交を求めたのに対し、これら3項目については、作為または不作為をそれぞれ命じているので、改めてこれについて団交を命ずる必要はなく、契約書の掲示を命ずることをもって足りるとされた例。
5200 除斥期間
労働委員会へ証人として出頭した組合員X1ら2名に関する差別取扱いの救済申立ては、行為の日から1年を経過しているので救済の対象としないとされた例。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集77集337頁 |
評釈等情報 |
 
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