労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  前橋信用金庫 
事件番号  群馬地労委 昭和59年(不)第2号 
群馬地労委 昭和60年(不)第2号 
申立人  前橋信用金庫従業員組合ほか12名 
被申立人  前橋信用金庫 
命令年月日  昭和61年 1月18日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  金庫が、(1)組合の役員選出に介入及び職場集会を妨害したこと、(2)組合員3名の降格、(3)組合員9名の机を他の職員から隔離して配置、(4)組合員1名を窓ガラス拭き、店舗内外の清掃等の雑役的作業に従事、(5)組合員10名を、就業規則等を無断で書証として地労委に提出したことを理由に、懲戒戒告処分、(6)組合員の配転、(7)臨時給与の支払い等が争われた事件で、(1)上記(1)ないし(5)の行為などによる支配介入の禁止、(2)組合員3名の降格がなかったものとしての取り扱い及びバック・ペイの支払い、(3)組合員9名の机の適正配置、(4)組合員1名に対する雑役的作業の中止、本来の業務への就労、(5)組合員10名に対する懲戒戒告処分の撤回、(6)ポスト・ノーティスを命じ、降格に対する慰謝料の支払いを求める申立ては却下し、組合員の配転、和解が成立している臨時給与の支払い等は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合の役員選出に介入すること、職場集会を妨害すること、また、組 合員を降格すること、組合員の机を他の職員から隔離して配置すること、組合員に雑役的作 業を行わせること、組合員を懲戒戒告処分することなどにより申立人組合の組織運営に支配 介入してはならない。
2 被申立人は、申立人X1に対する昭和59年3月8日付調査役(代理待遇)解任及び同年4月 10日付主事から事務職2級への降格をなかったものとして取り扱い、同人に対し、臨時給与 を含め同人が受けるはずであった職務手当及び資格手当相当額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人X2に対する昭和59年3月8日付調査役(次長待遇)解任及び同年4月 10日付主事から事務職2級への降格をなかったものとして取り扱い、同人に対し、臨時給与 を含め同人が受けるはずであった職務手当及び資格手当相当額を支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人X3に対する昭和59年4月10日付調査役(代理待遇)解任及び副主事か ら事務職2級への降格をなかったものとして取り扱い、同人に対し、臨時給与を含め同人が 受けるはずであった職務手当及び資格手当相当額を支払わなければならない。
5 被申立人は、申立人X2、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8、同X9、同X10及び同X3 の机をいずれも他の職員の机と並べるなど適切な位置に配置しなければならない。
6 被申立人は、申立人X5に対して行わせている雑役的作業を直ちに中止し、同人を本店営業 部得意先係の本来の業務に就かせなければならない。
7 被申立人は申立人X4、同X3、同X1、同X7、同X10、同X5、同X11、同X12、同X2及 び同X9に対して行った昭和59年11月19日付懲戒戒告処分を撤回しなければならない。
8 被申立人は、命令書交付の日から7日以内に縦1m×横1.5mの白色木板に下記のとおり楷 書で墨書し、被申立人の本店及び各支店内の従業員の見易い場所に10日間掲示しなければな らない。
                     記
  金庫が、貴組合及び貴組合員に対して行った次の行為は、不当労働行為であると群馬県地 方労働委員会において認定されました。
  今後かかる行為は一切行わないよう十分留意いたします。
  1.貴組合の役員選出に介入したこと及び職場集会を妨害したこと。
  2.貴組合の組合員であるX1、X2及びX3を降格したこと。
  3.貴組合の組合員であるX2、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10及びX3の机を他の職   員から隔離して配置したこと。
  4.貴組合の組合員であるX5に対して窓ガラス拭き、店舗内外の清掃等の雑役的作業を行わ   せたこと。
  5.貴組合の組合員であるX4、X3、X1、X7、X10、X5、X11、X12、X2及びX9に対し   て懲戒戒告処分を行ったこと。
                              昭和  年  月  日
  前橋信用金庫従業員組合
   執行委員長 X4 殿
                           前橋信用金庫
                            代表理事 Y1
9 被申立人は、第2項から前項までの事項を履行したときは、遅滞なく当委員会に文書で報 告しなければならない。
10 申立人の慰謝料の支払いに関する申立ては、これを却下する。
11 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員X1ら3名に対する調査役解任および3~4階級降格は、従来の慣行上更には社会通念上著しく妥当性を欠くもので、M執行部あるいはその支持者として活動していることを理由とした不当労働行為である。

1300 転勤・配転
組合員X3,X5に対する配転は、両名に生じた不利益、組合活動等についての疎明がないこと、配置転換当時、本人及び組合から何らこの配置転換が不当である旨の申入れもなかったこと等から不当労働行為とはいえない。

1300 転勤・配転
組合員X13に対する配転及びX14に対する助勤命令が、同人等の組合活動に対する報復であると認めるに足る十分な疎明がないとして組合の主張が斥けられた。

1300 転勤・配転
組合員X1,X12に対する配転は、同人らが行なっていた組合活動及びこの配転により生じた不都合、不利益等についての十分な疎明がなく、不当労働行為とはいえない。

1602 精神・生活上の不利益
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3200 不当労働行為とされた例
3300 不当労働行為とされた例
組合員X2ら9名を排除、隔離するような机の配置換えを行ったことは、同人らが労委において補佐人として活動したり、金庫と対立するM執行部を指示する活動をしたことに対する報復的な不当労働行為とされた例。

2624 組合人事への干渉
組合内部に二つの執行部が成立したことは、O執行部からの三役変更届を組合の代表者印がないままにM執行部に確認することなく受理し、金庫がM執行部を一切無視し、O執行部と団交等を行っている事実等からみて、金庫が組合役員選出に介入した結果によるものと推認せざるを得ないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
Y2考査役が、組合員等に対し、当時の組合の副執行委員長であった組合役員候補者X1について、「赤だ、共産党だ、共産党とつながっている。」などと女子職員らに言うよう指示したことが、X1を組合役員から排除するためのものであったとされた。

2610 職制上の地位にある者の言動
2624 組合人事への干渉
金庫の利益代表者であるY1支店長らが、組合員に対し、組合執行部に批判的なY1らが支持する役員選挙に関する内規案に賛成するよう働きかけたことが、組合の運営に対する支配介入であるとされた。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3200 不当労働行為とされた例
3300 不当労働行為とされた例
本店営業部において得意先係の職務を担当していたX5に対し、窓ガラス拭き、店舗内外の清掃など雑役的作業を命じたことは、組合が不当労働行為の申立てを行い、同人が補佐人として活動したことに対する金庫の報復的な不当労働行為であるとされた。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3300 不当労働行為とされた例
役職者任命運用内規、人事異動基準、有給休暇簿、出勤簿等の写等を金庫に無断で労働委員会に提出したことを理由として、組合員X4ら10名を懲戒戒告処分に付したことは、金庫はこれらの証書のいずれの部分が業務上の秘密に属するかの疎明を全くしていないこと等からみて、不当労働行為とされた例。

3100 スパイ
申立人組合が合同職場集会を予定していた日に金庫が合同業務推進会議を開催したことは、集会を妨害する目的で行ったもので、支配介入であるとされた例。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
組合員X4ら10名に対する昭和59年度期末臨時給の支払いについては、裁判所で和解が成立したことにより、被救済利益はなくなったとされた。

5005 損害賠償の請求
降格に対する慰謝料の支払いを求める請求について、労働委員会の判断すべき事項でないので却下する。

5122 和解・取下
本件を申立てたM執行部は、組合規約から見て、代議員会における三役不信任決議及び執行委員会での解任決議により解任されたとは認められないから、その後選出されたO執行部により申立ての取下書が提出されたとしてもそれにより事件が終結したとはいえない。

5122 和解・取下
U執行部が選出された時点で、組合は事実上M執行部派とU執行部派に分裂したものと判断されるから、執行委員長U名による取下げは、申立人組合とは別個の組合からのものであり、この取下げによって事件が終了したとはいえない。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集79集81頁 
評釈等情報  労働法律旬報 1986年3月25日 1140号 50頁 

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