労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本鋼管 
事件番号  神奈川地労委 昭和53年(不)第41号 
申立人  X1 外個人13名 
被申立人  日本鋼管 株式会社 
命令年月日  昭和57年12月13日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  反執行部派の活動家である申立人X1ら9名の社員資格を標準者に比べ低く格付けしたこと、申立人X2ら5名の賃金、一時金等の算定を標準以下に査定したことなどが争われた事件で、(1)申立人X1ら9名について昭和52年4月1日にさかのぼって職能区分及び社員資格の是正を行い、それに伴う賃金等の差額を支給すること(年5分加算)、(2)申立人X2ら5名について昭和53年4月1日にその効果が発生するようそれぞれの成績評価について標準的水準にあったものとして再査定し、それに伴う賃金等の差額を支給すること(年5分加算)及び(3)申立人X1ら13名に対して、組合活動を理由とする職能区分、社員資格、職務内容、賃金等について差別してはならない旨並びに文書手交を命じた。 
命令主文  主   文
1 被申立人は、次に表の「氏名」欄に掲げる申立人について、昭和52年4月1日にさかのぼって、それぞれ同表の「職能区分・社員資格」欄に掲げる職能区分及び社員資格に格付けし、併せて、監督技能系社員にあってはその格付けに伴う職能等級を同表の「職能等級」欄に掲げる等級に位置付け、その職能点を同表の「職能点」欄に、その発揮度を同表の「発揮度」欄にそれぞれ掲げるとおりであったものとして、事務技術系社員にあってはその格付けに伴う職能給については、その職能段階を同表の「職能段階」欄に、その運用区分を同表の「運用区分」欄にそれぞれ掲げるとおりであったものとして、各人の本給、職能給及び慰労金(一時金)を再計算し、当該再計算の結果に基づき、同日以降各人に支払うべきであった賃金相当額と既に支払った額との差額に、年5分の割合による金員を加算して、各人に支払わなければならない。
(1)監督技能系社員
 
 (下記組合員略)
         
(2)事務技術系社員
 (下記組合員略)
         
2 被申立人は、申立人X3、同X3、同X4、同X5及び同X6について、昭和53年4月1日にその効果が発生するようにそれぞれ勤務態度、勤務能力、勤務実績、職務遂行能力、能力の伸長度及び能力の発揮度について標準的水準にあったものとして再査定を行うとともに、次に掲げる措置を構じなければならない。
(1)再査定の結果、各人の資格点の累積点が上位の社員資格の昇格基準点に達することとなる者があるときは、同人の社員資格を昭和53年4月1日にさかのぼって、当該上位の社員資格に格付けし、併せてその格付けに伴う職能等級を相当の等級に位置付け、その職能点を「3点」に、その発揮度を「C」にそれぞれあったものとして、同人の本給、職能給及び慰労金(一時金)を再計算し、当該再計算の結果に基づき、同日以降同人に支払うべきであった賃金相当額と既に支払った額との差額に、年5分の割合による金員を加算して、同人に支払わなければならない。
(2)申立人のうち前号に掲げる者以外の者にあっては、再査定の結果に基づいて各人の本給、職能給及び慰労金(一時金)を再計算し、当該再計算の結果に基づき、昭和53年4月1日以降各人に支払うべきであった賃金相当額と既に支払った額との差額に、年5分の割合による金員を加算して、各人に支払わなければならない。
3 被申立人は申立人X1、同X7、同X8、同X9、同X10、同X11、同X12、同X2、同X3、同X13、同X4、同X5及び同X6に対し、第1項又は前項に掲げる期日後各人の職能区分、社員資格、職能等級、職務内容、本給、職能給及び慰労金(一時金)について、組合活動を理由とする差別を行ってはならない。
4 被申立人は、本命令交付の日から15日以内に下記の文書を申立人らに対し手交しなければならない。
                記
 当社が貴殿らに対し行った職能区分、社員資格、本給、職能給、慰労金(一時金)などにおける差別については、神奈川県地方労働委員会によって労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 当社は、命令書の主文に従い、その内容についても誠意をもって履行するとともに、これまで上記の行為により貴殿らに対し多大の不利益を与えてきたことを陳謝し、今後このような行為を貴殿らに行わないことを誓います。
   昭和 年 月 日
 X1  殿   X12 殿
 X7  殿   X2  殿
 X8  殿   X3  殿
 X14 殿   X13 殿
 X9  殿   X4  殿
 X10 殿   X5  殿
 X11 殿   X6  殿
              日本鋼管株式会社
              代表取締役 Y1 
判定の要旨  0200 宣伝活動
就業時間外に会社外で行われた政党細胞名等による申立人らのビラ配布等の諸活動につき、その主な内容が事業所内における労働者の固有の労働条件や組合運動にかかわるものである以上、たとえそれが政党細胞名によるものであったとしても、また、その批判の対象が組合の多数派ないし執行部に向けられていたとしても、正当な組合活動と認め得べきものであるとされた。

1200 降格・不昇格
申立人X1ら9名の社員資格を標準者に比べて低く格付けしたこと及び申立人X2ら5名の本給職能給等の算定を標準以下に査定したことにつき、会社の主張する低査定の理由には合理性が乏しく、また、申立人らの組合活動に対する会社側の対応の状況からみて、いずれも差別的不利益取扱いであり、申立人ら以外の従業員が申立人らの主張ないし活動に同調することを抑止する効果を期待して行った見せしめ的な不利益取扱いである。

4415 賃金是正を命じた例
社員資格の昇格差別及び本給、職能給等の算定の査定差別の救済として、申立人ら一般職社員の者については、普通又は標準の成績の者であれば、標準的に昇給、昇格するとの前提に立ち、この標準者を基準として、それとの比較により是正することはやむを得ない。

4413 給与上の不利益の場合
4416 将来にわたる不作為を命じた例
本件昇格等差別については申立ての時点を中心として現に受けている不利益取扱いの是正を命ずるにとどめるが、申立人らの成績評価につき、会社が本件申立ての数年前からなんらかの不利益な対応をしていたのではないかとする疑念を否定し得ず、本件不利益の是正後においても、正当な組合活動を理由とする差別の禁止を命ずるのが相当である。

5201 継続する行為
昭和48年度の時点で昇格格差が認められるとしても、昇格査定は毎年行われるのであるから、各年の前後にわたる不当査定相互の関連が認められて初めて継続する行為として認定されるものと思料されるところ、昇格の遅れが48年から申立て時に及ぶとの主張についての疎明は十分でなく、法27条2項による救済の対象とならないと判断せざるを得ない。

業種・規模  鉄鋼業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集72集491頁 
評釈等情報  労働法律旬報 1983年2月10日 1065号 58頁 
労働判例 1983年3月15日  400号 74頁 

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