労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  東京暖冷器製作所 
事件番号  神奈川地労委 昭和55年(不)第25号 
神奈川地労委 昭和56年(不)第9号 
申立人  総評全国一般労働組合神奈川地方本部東京暖冷器労働組合 
被申立人  株式会社 東京暖冷器製作所 
命令年月日  昭和57年11月 4日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  賃金一時金等に関する不誠意団交、無許可集会を理由とする組合役員の厳重注意処分、会社施設利用に当たっての使用時間、場所の規制、同施設利用についての同好会等との差別取扱い、組合事務所の貸与及び組合掲示板設置の拒否、組合役員に対する年末一時金の低査定及び減額、組合役員3名の配転、臨時大会開催予定日の休日の出勤日への振替え、振替えされた出勤日についての年次有給休暇の不承認と賃金カット、課長代理への昇進を条件とする組合脱退の示唆等が争われた事件で、誠意ある団交応諾、会社施設利用の許可に当たっての組合活動規制の禁止、厳重注意処分の撤回、組合事務所の貸与及び組合掲示板設置に関しての誠意ある団交の実施、組合員X1に係る年末一時金の差額相当分(社員平均支給月数分支給済額)の支払い、組合役員2名の配転命令の取消し及び原職復帰、申立組合員係る配転、賃金等についての不利益な差別の禁止、組合大会の開催妨害等支配介入の禁止、申立組合員であるか否かの問い合わせの禁止並びにこれらに関するポスト・ノーティスを命じ、会社施設利用の差別取扱い、組合副委員長X2の配転及び賃上げの実施期日の差別取扱いについては、申立てを棄却した。 
命令主文  主   文
1 被申立人は、申立人の申し入れる団体交渉について、合理的な理由なく一方的に交渉期日を引き延ばしたりなどして変更し、かつ、交渉場所及び交渉時間について規制することなく誠意をもって、これに応じなければならない。
2 被申立人は、申立人の会社施設利用の許可に当たり合理的な理由なく、使用時間、使用場所を変更するなど組合活動を規制してはならない。
3 被申立人は、申立人の組合員X3、同X4、同X5及び処分時の組合員X2に対し、昭和55年10月9日付けでなした「厳重注意」を撤回しなければならない。
4 被申立人は、組合事務所の貸与及び組合掲示板設置の問題について、誠意をもって申立人との団体交渉に応じ、解決に当らなければならない。
5 被申立人は、申立人の組合員X1に対し、昭和55年度年末一時金について同人の基本給の 2.6か月分と現実に支給した額との差額相当額及びこれに対する昭和55年12月10日から年5分の割合による金員を支払わなければならない。
6 被申立人は、申立人の組合員X4に対し、昭和56年1月6日付けで、同X6に対し昭和55年12月16日付けでそれぞれなした配置転換命令を取り消し、両名を原職に復帰させなければならない。
7 被申立人は、申立人の組合員であること又は組合活動を理由に今後、申立人の組合員を配置転換、賃金、一時金などについて他の従業員と不利益に差別してはならない。
8 被申立人は、正当な理由なく申立人の組合員の休日を振り替え、また年次有給休暇の行使を制限することにより組合大会の開催を妨害し、又は参加者を欠勤扱いとして賃金を控除したりして申立人組合の運営に支配介入してはならない。
9 被申立人は、従業員に対し、賃金計算上必要であるとの理由で申立人の組合員であるか否かを問い合わせてはならない。
10 被申立人は、下記の文書を本命令交付の日から7日以内に縦1メートル横2メートルの白色木板に墨書し、被申立人会社東京本社及び茅ヶ崎工場の正門近くの従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
             記
                 昭和 年 月 日
 総評全国一般労働組合神奈川地方本部
 東京暖冷器労働組合
  執行委員長 X3 殿
             株式会社 東京暖冷器製作所
              代表取締役 Y1
 当社が行った下記行為は、神奈川県地方労働委員会によって労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、貴組合に遺憾の意を表し、今後再びこのような行為を繰り返さないことを約束します。
(1)貴組合の申し入れた団体交渉について、交渉期日を変更し、交渉場所、交渉時間を規制したこと。
(2)貴組合の会社施設利用を許可するに当たり、使用時間、使用場所を変更するなどして組合活動を規制したこと。
(3)貴組合の組合員X3、同X4、同X5及び処分時の組合員X2に対し、厳重注意処分をしたこと。
(4)貴組合の組合員X1の昭和55年度年末一時金を、他の従業員より少なく支給したこと。
(5)貴組合の組合員X4及び同X6を配置転換したこと。
(6)貴組合の組合員について、配置転換、賃金、一時金などで、他の従業員と異なる扱いをしたこと。
(7)休日を振り替え、かつ、貴組合の組合員の年次有給休暇について、その行使を制限し、又は欠勤扱いにして賃金を支給しなかったこと。
(8)従業員に対し、貴組合の組合員であるか否かを問い合せたこと。
11 その余の申立ては棄却する。 
判定の要旨  0202 会社施設の利用
昼休み中における工場中庭での無許可の組合集会について、昼休み休憩時間中の中庭広場の従業員の集会や運動のための所用がすでに会社内で定着した慣行であり、かつ同集会が業務に支障を与えたとも認められないことから、正当な組合活動である。

1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
賃上げの実施期日を他の従業員の実施日より2カ月遅れとし、差別取扱いしようとしたことが不当労働行為であるとの組合の主張につき、地労委の勧告により支給日前にそのことは是正されたことからみて、不当労働行為とはならない。

1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
無許可集会の指導実行を理由として、組合三役4名の昭和55年年末一時金を1ランク低く査定し、その他の組合役員8名の同一時金の支給予定額から一律3%のカットをしたが、集会は規律紊乱行為とはいえず、正当な組合活動であり、それを理由とする不利益取扱いが不当労働行為であるとされた例。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合副委員長X4を40名を超える職場の職長のポストから機械加工経験者であることを理由に他の小規模の職場の職長へ配転したことが、事実上の降格であり業務上の必要性も合理的な理由も認められない不当労働行為である。

1300 転勤・配転
2700 威嚇・暴力行為
組合役員X6を専任職員が本人1人だけのJIS対策室(日本工業規格許可関係業務)へ配転したことが、営業部への配転を拒否した報復的な措置であり、不当労働行為である。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合副委員長X2をプロジェクトチームの構成員に任命したことにつき、同人の座席を業務部資材課から製造部生産管理課に移動したとはいえ、同室で隣り合わせの席であり、期間も6カ月程で、資材係長の職務も解かれていないことからみて、配転とは言えず不当労働行為ではない。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
昼休みに開催した屋外での無許可集会を理由として組合役員4名を厳重注意処分に付したことが、不利益取扱いであり、組合弱体化を意図した不当労働行為である。

2212 交渉の場所・時間
組合の申し入れる団交について、必ず一方的に日時・場所・出席人員を変更規制し、期日を引き延ばしたことが、誠意ある団交を行ったとはいえない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2622 組合員調査
会社職制が、組合員であるか否かで賃上げ実施時期が異なることを理由に、従業員を個別に呼び、組合員であるか否か、加入時期はいつかなどを尋ねたことが、それを口実とする組合員の調査であり、組合脱退を示唆する支配介入行為である。

3020 組合活動への制約
同好会、クラブ活動等に対しては事前の許可なく会社施設の利用を認めているのは組合員に対する差別的取扱いであるとする組合の主張につき、組合員も従業員として各種サークルに属し、同施設を利用していることから、不当労働行為ではない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社は、組合事務所の貸与拒否の理由として、施設上の余裕がなく、寮の一室では私生活の自由と平穏を確保する上で問題があることなどをあげ、また、組合掲示板設置の拒否理由として、組合が現に正門前の隣地に掲示板を設置していること等をあげるが、いずれも合理性がなく、団交においても会社に問題解決の誠意を認め難いことから、これら貸与等の拒否は組合弱体化を意図した不当労働行為である。

3020 組合活動への制約
会社施設利用の許可願に対し、不許可にしたり、使用時間や使用場所を変更したり、制限したことが、施設利用許可手続を利用した不当労働行為とされた。

3020 組合活動への制約
組合の臨時大会開催予定日である休日を、需要急増を理由に出勤日として振替え、更に会社施設の使用許可を遅らせることにより、大会開催期日を不確定にし、組合員をして年次有給休暇の請求を余儀なくさせ、時季変更権を行使したものというべく、これらは組合活動に干渉する不当労働行為であるとされた例。

3020 組合活動への制約
振替休日の日を再度出勤日に指定したところ、過半数の44名が年休届を提出したため会社が業務の運営を阻害されるとして時季変更権を行使したものの、結局37名が年休届を再提出し出勤せず、会社は、これに対し10名について年休扱いを認めず賃金カットしたことが支配介入であるとして申し立てられ、結局10名についてのみ欠勤扱いした合理的理由がなく、9名までが組合役員であることなどからみて、組合に対する支配介入であると判断された。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合副委員長であるX2に対し、課長代理への昇進をとるか組合にとどまるかの二者択一を迫り、昇進の条件として同人に組合脱退を余儀なくさせたことが、組合の運営に対する支配介入とされた。

4415 賃金是正を命じた例
組合集会を理由として支給予定額から3%の減額を受けた組合役員X1の55年年末一時金支給額は2.42カ月分とされているが、これを同人の成績不良等の結果であるとする会社の主張は認めがたく、同人の出勤率が 100%であることからすれば、同人に対する救済としては、社員平均である基本給の 2.6カ月分とすることが相当である。

4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
組合事務所の貸与及び組合掲示板の設置拒否の救済として、誠意ある団交による解決を命じた。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集72集408頁 
評釈等情報  労働判例 1983年3月1日  399号 65頁 

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約313KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。