労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  マル善 
事件番号  大阪地労委 昭和54年(不)第74号 
大阪地労委 昭和55年(不)第61号 
申立人  全大阪金属産業労働組合 
被申立人  株式会社 マル善 
命令年月日  昭和57年 8月18日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  (1)団交で合意した事項について、確認書の作成・調印に応じなかったこと、(2)ユ・シ協定の締結等未解決の11項目に関する団交にあたり不誠実な態度に終始したこと、(3)配偶者控除の不正申告を理由に分会書記長を出勤停止処分にしたこと、(4)プレート着用戦術を企画・指導したことを理由に分会三役を出勤停止処分にしたこと、(5)社外工Y1との傷害事件を理由に副分会長を出勤停止処分にしたこと、(6)年末一時金に関する団交にあたり不誠実な態度に終始したこと、(7)会社施設の利用を拒否していること等が争われた事件で、確認書の作成・調印の応諾、11項目に関する誠意ある団交の応諾、(3)ないし(5)の理由による組合三役等に対する出勤停止処分がなかったものとしての取扱い及びバックペイ、並びに(6)、(7)を含めたポスト・ノーティスを命じ、社外工Y1との傷害事件により負傷した副分会長の治療費実費の支払いを求める申立てについては棄却した。 
命令主文  主   文
1 被申立人は、申立人に対し、申立人の昭和54年9月21日付け23項目の要求について、同月29日申立人との間に合意に達した12項目に関する確認書の作成及び調印に応じるとともに、未解決の11項目に関する団体交渉に誠意をもって応じなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員X1に対して、配偶者控除の不正申告を理由とした昭和54年10月18日付け5日間の出勤停止処分がなされなかったものとして取り扱い、平均賃金日額5日相当分及び昭和54年年末一時金減額相当分を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合員X2、同X3及び同X1に対して、就業時間中のプレート着用を企画・決定・指導したとの理由による昭和54年12月4日付け2日間の出勤停止処分がなされなかったものとして取り扱い、平均賃金日額2日相当分及び昭和55年夏季一時金減額相当分を支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人組合員X3に対して、社外工Y1との間に生じた傷害事件を理由とした昭和54年12月3日付け1日の出勤停止処分がなされなかったものとして取り扱い、平均賃金日額1日相当分及び昭和55年夏季一時金減額相当分を支払わなければならない。
5 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して、速やかに被申立人の工場正門付近の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
              記
                    年 月 日
 全大阪金属産業労働組合
  執行委員長 X4殿
               株式会社 マル善
                代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において労働組合法第7条第1号乃至第3号に該当する不当労働行為であると認められましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
              記
(1)昭和54年9月21日付け23項目の要求のうち、同月29日に合意に達した12項目に関する確認書の作成及び調印を拒否するとともに、未解決の11項目に関する団体交渉に誠意をもって応じなかったこと
(2)貴組合員X1氏を、配偶者控除の不正申告を理由に昭和54年10月18日付けで5日間の出勤停止処分に付したこと
(3)貴組合員X2氏、同X3氏及び同X1氏を、就業時間中のプレート着用を企画・決定・指導したとの理由により、昭和54年12月4日付けでそれぞれ2日間の出勤停止処分に付したこと
(4)貴組合員X3氏を、社外工Y1氏との間の傷害事件を理由に、昭和54年12月3日付けで1日の出勤停止処分に付したこと
(5)昭和54年年末一時金に関する団体交渉において、考課基準についての説明を拒否する等不誠実な態度に終始したこと
(6)貴組合から届出のあった工場食堂の使用を承認しなかったこと
(7)(1)貴組合が掲揚した組合旗を撤去し、(2)工場敷地内での職場集会の開催を妨害し、(3)休憩時間中の組合文書の配布を禁止したこと
6 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
配偶者控除の不正申告を理由とする分会書記長に対する5日間の出勤停止処分が、同人は、会社に迷惑をかけたことを詫び、妻を所轄税務署に足を運ばせる等して誠実に解決に努めたことが認められることから、酷に過ぎるものであり、会社の反組合的感情を考えるとき、会社の真意は、同人を不利益に取扱い、分会の弱体化を企図した不当労働行為である。

0210 リボン・ワッペン等の着用
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
団交で合意した事項の確認書の作成及び調印の拒否等に対する抗議行動としてのプレート着用戦術を企画・決定・指導したことを理由とする分会三役に対する出勤停止処分が、得意先からの受注を減少させ業務に支障を生じさせたとの事実も認められない本件の場合、分会三役を不利益に取り扱い、かつ分会の弱体化を企図して行った不当労働行為である。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
社外工Y1との傷害事件を理由とする副分会長X3に対する出勤停止処分は、傷害事件はY1の一方的行為であり、X3はむしろ被害者であったと認められるのであって、X3が職場秩序を乱したとは考えられず、同人を不利益に取り扱うことにより組合の弱体化を図らんとした不当労働行為である。

2249 その他使用者の態度
ユニオン・ショップ協定の締結等11の未解決項目に関する団体交渉にあたり、「聞き入れる気持はない」として不誠実な姿勢を示したことが不当労働行為になる。

2240 説明・説得の程度
年末一時金に関する団体交渉にあたり、組合の要求する会社の売上げ総額、経費の総額等の経理の内容及び従業員に対する考課基準についての説明及び資料の提出を拒否し続けた会社の態度が、不当労働行為である。

2252 署名・調印拒否
団体交渉で合意した事項について労働協約化するか否かは各当事者の自由である等として確認書の作成及び調印に応じなかったことが、正当な理由なく団体交渉を拒否する態度に相当するもので不当労働行為である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
3020 組合活動への制約
工場食堂及び会社敷地内での職場集会を認めず、工場敷地内に掲揚された組合旗を撤去し、休憩時間中の組合文書の配布を禁止したことが、職場秩序を乱したり、作業能率に影響を与えたことは認められず、いずれも分会の弱体化を企図して行った不当労働行為であるとされた例。

5008 その他
社外工Y1との傷害事件において負傷した副分会長X3の治療に要した2日間の欠勤を出勤扱いとすること、及びこれに伴う賃金、治療費実費等を支払うことを求める申立てについて、労働委員会の権限外として棄却した。

業種・規模  一般機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集72集173頁 
評釈等情報  労働判例 1982年12月15日  395号 61頁 

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