労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本シェーリング 
事件番号  大阪地労委 昭和54年(不)第16号 
申立人  総評化学一般日本シェーリング労働組合 
被申立人  日本シェーリング 株式会社 
命令年月日  昭和57年 6月14日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含 む) 
重要度   
事件概要  昭和53年度賃上げにおいて稼働率80%以下の者を賃上げの対象者 から除外する旨のいわゆる「80%条項」を適用したこと、組合活動による会社施設の使用を拒否したこと及び一時金及び昇格に ついて組合間差別をしたことが争われた事件で、昭和53年度賃上げ協定中の「80%条項」の撤回、同条項該当組合員に対する 賃上げの実施とそれに伴う一時金の是正及びこれらに伴う差額の支給(年5分加算)、組合活動のための会社施設利用応諾、52 年度・53年度の各一時金査定における別組合員との差別是正(同月数支給)及びそれによる差額の支給(年5分加算)、昇給・ 昇格の差別の是正とそれに伴う一時金の是正及びそれらに伴う差額の支給(年5分加算)並びにこれらに関するポスト・ノーティ スを命じ、申立日より1年前にかかる昇給・昇格差別についての申立ては却下した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合と締結した昭和53年度賃上げに関する 協定中、稼働率80%以下の者を賃上げ対象者から除外する旨の条項(以下「80%条項」という)を撤回し、同年度80%条項 該当の申立人組合員に対し、昭和53年4月から賃上げが実施されたものとして取り扱い、昭和53年度賃上げ相当額から既支給 額を控除した額及びこれに年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
2 被申立人は、昭和53年度賃上げにおける80%条項該当の申立人組合員に対する昭和53年夏季一時金及び同年冬季一時金 を、前記1によって同年度賃上げが行われたものとして算出し、その額から既支給額を控除した額及びこれに年率5分を乗じた額 を同年度賃上げにおける同条項該当の申立人組合員に支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合に対し社員食堂、大会議室、休憩室等会社施設を、業務に支障のない限り利用させなければならな い。
4 被申立人は、申立人組合員に対し、昭和52年夏季一時金、同年冬季一時金、昭和53年夏季一時金及び同年冬季一時金にお ける査定を次のとおり是正し、これによって算出した額から既支給額を控除した額及びこれに年率5分を乗じた額を支払わなけれ ばならない。
(1) 申立人組合員各人に対する査定部分を全日本シェーリング労働組合員に対して支給した上記各一時金の平均支給月数と同 一になるよう再査定すること
(2) 上記(1)の再査定は、査定に基づいて既に申立人組合員各人に支給した額を下回らない限度において行うこと
5 被申立人は、別表記載の申立人組合員らを同表記載の日付けをもって同表の資格級、職階にそれぞれ昇給、昇格したものとし て取り扱い、同日以降得たであろう賃金相当額から既支給額を控除した額及びこれに年率5分を乗じた額を支払わなければならな い。
6 被申立人は、別表記載の申立人組合員に対する昭和53年夏季一時金及び同年冬季一時金を、前記5によって昇級、昇格が行 われたものとして算出し、その額から既支給額を控除した額及びこれに年率5分を乗じた額を別表記載の申立人組合員に支払わな ければならない。
7 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して、被申立人会社正面玄関付近の従業員の 見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
              記
                       年 月 日
総評化学一般日本シェーリング労働組合
 執行委員長 X1殿
            日本シェーリング株式会社
             代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である と認められましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
              記
(1) 昭和53年度賃上げにおいて、80%条項を内容とする協定を貴組合に押し付け、貴組合員を不利益に取り扱ったこと
(2) 貴組合に対して、不当に会社施設の利用を拒否したこと
(3) 昭和52年夏季一時金、同年冬季一時金、昭和53年夏季一時金及び同年冬季一時金において、貴組合員を不当に低く査 定して不利益に取り扱ったこと
(4) 昇級、昇格に当たって貴組合員を差別的に取り扱ったこと
8 申立人組合の昭和53年3月30日以前に係る昇級、昇格についての申立ては、これを却下する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
昭和53年度賃上げにおいて、欠勤等の外に年次有給休暇、生理休暇、産前産後休暇、組合活動、団体交渉等による不就労を稼働 率の算出の基礎とし、「稼働率80%以下の者を賃上げの対象から除外する」旨のいわゆる「80%条項」を組合員に適用したこ とが、これらの項目には労働者の権利行使を著しく制限するものを含んでいること、別組合に比べ女子組合員の多い組合にとって 不利益を受ける度合いが高いこと等からみて不当労働行為であるとされた例。

3020 組合活動への制約
組合結成以来長年にわたって許可してきた会社施設の使用を、来訪した部外者との会合を行ったことを理由として、爾後これを拒 否したことが、会社の使用許可を受ける組合の手順に問題がなく、また施設利用により会社業務の支障を生ぜしめたことが認めら れないこと等から、不当労働行為であるとされた例。

1202 考課査定による差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
昭和52年度ないし53年度の各一時金の支給に当たり、組合員について考課査定を低く査定したことについて、両組合員の職種 による格差であるとの疎明が不十分であること、一時金交渉で会社が十分な協議をしないまま協定締結を強いたものと考えられる こと等から、不当労働行為であるとされた例。

1200 降格・不昇格
申立人組合員の昇級・昇格を別組合員及び非組合員等より遅らせたことについて、その理由の合理的な疎明がないこと等から、不 当労働行為であるとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
昇級・昇格差別の救済に当たり、組合員を5級に格付された年次ごとに1つのグループとし、その各グループ内の別組合員らの平 均的昇級・昇格者と同等となるよう是正することが相当であるとされた例。

5200 除斥期間
一時金差別に関する救済申立てについては、差別の存在を知った日もしくは知り得べきであると客観的に認められる日から1年以 内の申立てであれば可能であると解することが法の趣旨にかなうものであるとし、申立日より1年以上遡って救済を求める本件 52年夏冬一時金の救済申立てが許されるとした例。

5122 和解・取下
最後陳述書において組合員X2ほか4名につき5級に昇級したものとして取り扱うべき旨主張しても、すでに提出済みの準備書面 で同人らの請求が取り下げられたものと認められる以上、この部分の判断は要しないとされた例。

5200 除斥期間
昇進・昇格に関する申立てのうち、申立日である54年3月31日の1年以前にかかる部分は、差別の存在を知り得べき日から1 年経過しており、申立期間を徒過したものとして却下せざるを得ないが、申立日の1年前の時点で不利益扱いが存在し、それがそ れ以前の不当労働行為に帰因したものであればその是正を命じても法27条2項には抵触しないとされた例。

業種・規模  化学工業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集71集460頁 
評釈等情報  労働法律旬報 1982年11月10日 1059号 69頁 

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