概要情報
事件名 |
住友電気工業 |
事件番号 |
大阪地労委 昭和52年(不)第77号
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申立人 |
X1 外個人5名 |
被申立人 |
住友電気工業 株式会社 |
命令年月日 |
昭和57年 5月27日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
反執行部派の活動家である申立人X1ら6名について、昭和50年な
いし52年の昇給及び賞与に関して同一組合に属する同一勤続年数の他の組合員に比べ低く査定し、昇給及び賞与の支払いを行っ
たことが争われた事件で、平均的な支給額による是正及びそれによる差額の支払い(年5分加算)並びに文書手交を命じ
た。 |
命令主文 |
主 文
1 被申立人は、申立人X1、同X2、同X3、同X4、同X5及び同X6に対し、同人らの本俸、生産奨励金、職務加給及び期
末賞与ランクを次表のとおり是正されたものとして取り扱い、是正日以降得たであろう諸給与相当額(既に支払ったものを除く)
並びにこれに年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
氏 名 是正 本 俸 生 産 職務加給 期末賞
年月日 (円) 奨励金 与ラン
(昭和 (円) ク(昭
年.月 和50年
.日) 夏季分
~同52
年夏季
分)
50.1.1 62,615 35,127 6級A-III
X1 51.1.1 65,225 43,375 6級A-IV E
52.1.1 101,800 17,418 6級A-V
50.1.1 50,849 28,526 5級-II
X2 51.1.1 52,834 35,135 5級-II E
52.1.1 82,491 14,107 5級-III
50.1.1 50,849 28,526 5級-II
X3 51.1.1 52,834 35,135 5級-II E
52.1.1 82,491 14,107 5級-III
50.1.1 45,495 25,523 4級B-V
X4 51.1.1 47,070 31,302 5級-I E
52.1.1 73,766 12,621 5級-II
50.1.1 - - 4級B-V
X5 51.1.1 - - 5級-I -
52.1.1 - - 5級-II
50.1.1 33,548 18,820 3級-IV
X6 51.1.1 35,068 23,320 4級A-I E
52.1.1 54,935 9,399 4級A-II
注) 期末賞与ランクの是正日は、当該賞与の各支給日とする。
2 被申立人は、申立人ら各人に対し、速やかに下記の文書(ただし、X5に対しては、本俸、生産奨励金及び期末賞与に関する
部分を除く)を手交しなければならない。
記
年 月 日
各申立人あて
住友電気工業株式会社
代表取締役 Y1
当社は、昭和50年、同51年及び同52年の本俸、生産奨励金、職務加給及び期末賞与について、貴殿を不当に差別して取り
扱いましたが、これら行為は、大阪府地方労働委員会で労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認められました
ので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判定の要旨 |
0120 政治(党)活動
0126 反執行部・分派活動
申立人らの活動の中には、職場の合理化などに反対して組合の機関決定によらず夜勤や残業拒否をするなど組合活動の限度を越え
たものもみられるが、多くは労働条件に関して組合執行部や会社に対して意見を表明し、ビラ配布等を行い、役員に立候補し選挙
活動を行うなど正当な組合活動の範囲内のものであるとされた例。
1202 考課査定による差別
昭和50年ないし52年の賃金及び賞与の支給に当たり、申立人6人に対して同一勤続年数の他の同一組合員の平均以下に査定し
たことについて、申立人ら各人の考課査定が客観的、合理的な理由に基づくものとは認められず、申立人らが組合の中にあって独
自の活動を行っていて会社がこれらの活動を著しく嫌悪していたとみられることなどから、不当労働行為であるとされた例。
4419 現存格差を一挙に是正した例
申立人X1らの昇給差別の救済として、同一勤続年数の組合員の各職級ごとの平均支給額による是正を命ずることが相当とされた
例。
4419 現存格差を一挙に是正した例
申立人X5の昇給差別の救済に当たり、同一勤続年数の組合員との間に現存する職務加給差別に限り、組合員の平均支給額による
是正を命ずることが相当とされた例。
4413 給与上の不利益の場合
申立人X1らの賞与の査定是正に当たって、同一勤続年数の組合員に比し妥当なランク付けをされている申立人X5を除き、平均
的なEランクに是正すべきであるとされた例。
5200 除斥期間
なされるべき昇給・賞与等のランク引上げを行わなかった会社の昭和50年ないし52年の各不行為は、それぞれ発令されるべき
時点で完結する1回限りのものであるが、一般に、昇給差別事件では、会社の決定行為が秘密裏に行われ、資料も非公開であるた
め、数年後に始めて差別事実を知り得るのが普通であることからみて、差別の存在を知った日もしくは知り得べきであると客観的
に認められる日から1年以内は救済申立てを行いうると解することが法の趣旨にかなうものと考えられるところ、本件は個人申立
てであり、差別の事実調査等に組合の協力を得られなかったこと等を考慮すれば、申立日から2年3カ月遡及して救済を求めるも
のであっても、許容されるものと解すべきであるとされた例。
5147 その他
最終陳述書において、申立外の53~55年の賃金格差の是正等を求めたのに対し、申立外の事項に属するもので、判断の必要は
ないとされた例。
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業種・規模 |
非鉄金属製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集71集387頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1982年9月15日
389号 59頁
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