労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  社会保険神戸中央病院 
事件番号  兵庫地労委 昭和53年(不)第7号 
申立人  社会保険神戸中央病院労働組合 
被申立人  社会保険神戸中央病院 
被申立人  社団法人 全国社会保険協会連合会 
命令年月日  昭和57年 4月 9日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  病院が従来の慣行を無視し、時限スト参加の組合員に対して就業規則上の始業時からの賃金カットを行う旨通告し、賃金カットしたこと、病院附近の民家等数十カ所に貼付した「健康保険改悪反対」等記載したポスター、ステッカーを組合に無断で撤去し、同貼付に対する処分通告を行ったこと、総婦長らの職制が組合員である看護婦3名に対し、不利益取扱いを示唆したり、組合脱退の示唆、勧奨等を行ったことが争われた事件で、賃金カット通告の撤回、賃金カットされた組合員64名に対する賃金カット相当額の金員の支払い、ビラ貼付を理由とする処分通告の撤回及びこれらに関する誓約文書の交付並びに組合員に対する組合からの脱退の示唆、勧奨及び反組合的言動による支配介入の禁止を命じ、賃金カット分についての年5分相当額の加算及びポスト・ノーティスについては申立てを棄却した。 
命令主文  主     文
1 被申立人らは、申立人組合になした昭和53年4月10日付「スト決行に対する賃金カットについて」と題する書面による通告を撤回しなければならない。
2 被申立人らは、申立人組合の組合員である別表1(末尾添付)記載の64名に対して、それぞれ同表記載の金員を支払わなければならない。
3 被申立人らは、申立人組合になした昭和53年4月28日付「地域住民を対象とする民家等に対するビラ貼付について」と題する書面による通告を撤回しなければならない。
4 被申立人らは、本命令書受領後、速やかに、下記内容の文書を申立人組合代表者に交付しなければならない。
                記
    昭和 年 月 日
  社会保険神戸中央病院労働組合
   執行委員長 X1 殿
               社会保険神戸中央病院
                病院長 Y1
               社団法人 全国社会保険協会連合会
                会長  Y2
 当病院及び当連合会は、貴組合が社会保険神戸中央病院付近の民家等に貴組合名義で貼った健康保険改悪反対等と記載したポスター及びステッカーを撤去したことは、兵庫県地方労働委員会の命令により、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断されましたので、今後、かかる行為を行わないことを誓約致します。
5 被申立人らは、申立人組合員に対し、申立人組合からの脱退を示唆ないし勧奨したり、反組合言動をしたりして、組合に対する支配介入をしてはならない。
6 申立人のその余の申立ては棄却する。 
判定の要旨  0200 宣伝活動
病院近辺の民家等へポスター等を貼付して、「健康保険法改悪反対」を訴えたことが政治活動であるとしても、組合は主たる機能としての労働条件の維持改善等の活動の他に、従たる機能として政治活動を行いうるものであり、これらの行為は正当な組合活動の範囲内の行為であるとされた例。

1204 スト・カット
時限スト参加の組合員に対し、従来からの午前9時までは賃金カットしないという慣行を然るべき手順を経ることなく、一方的に変更し、就業規則上の始業時刻である午前8時30分から賃金カットを実施したことが不利益取扱いであるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
総婦長及び2名の婦長による組合員である看護婦X2ら3名に対する組合脱退勧奨、組合誹謗等の言動が支配介入とされた例。

3020 組合活動への制約
病院近辺の民家等へ「健康保険法改正反対」のためのポスター等を貼付した行為が正当な組合活動の範囲内にあるものと認められる以上、病院が管理権の及ばない民家等に貼付したこれらのポスター等を組合の承諾もなく自力で撤去したことは、支配介入であるとされた例。

3410 職制上の地位にある者の言動
総婦長及び2名の婦長が組合員である3名の看護婦に対して行った組合脱退勧奨、組合誹謗等の言動について、総婦長は全看護婦を管理監督する立場にあるから病院の行為というべく、また2名の婦長の行為は一連の不当労働行為の数カ月後に、しかも総婦長の行為と同時期に行われていることなどと考え併せれば病院の意向を体して行ったものと判断せざるを得ないとされた例。

4916 企業に影響力を持つ者
本件病院は、独立採算制を採用し、就業規則の制定、病院職員の給与の決定等は病院長の権限であること等からみて、事実上自主、独立かつ統一的に管理運営される一つの社会的存在であり、また、不当労働行為制度は現実の労使関係に即して事実上救済することを目的とするものであるから、当事者適格を有するものと認むべきであるとされた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集71集334頁 
評釈等情報  労働法律旬報 1982年7月25日 1052号 59頁 
労働経済判例速報 昭和57年9月20日 1128号(33巻25号) 16頁 

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