労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  金沢交通 
事件番号  石川地労委 昭和55年(不)第4号 
申立人  全自交石川県自動車交通労働組合金沢交通支部 
被申立人  金沢交通 株式会社 
命令年月日  昭和57年 3月 4日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  (1)別組合員による組合事務所破壊等の善後策を講ずるために支部が開いた全員集会について、不法集会であるとして支部組合員全員に解雇通告して暫くの間就労させなかったこと、(2)組合員X1の発言が不穏当であるとして出勤停止処分にしたうえ、さらに退職通告を行い就労させなかったこと、(3)上部組合の組合専従を解かれた組合員X2の復職を認めず、仮処分決定まで就労させなかったこと、(4)別組合員による暴行を受けたX3が休業した期間及びそれ以降別組合員による暴行を恐れて組合員が就労しえなかった期間について賃金を支払わなかったこと、(5)賃金協定を一方的に破棄し、別組合との間で締結した新賃金協定を押しつけ、それにより賃金を支払ったこと等が争われた事件で、(1)~(4)の就労しえなかった期間に対するバック・ペイ、新賃金協定締結までの間の旧協定の遵守、労使双方に対する新賃金協定締結のための誠意団交の実施、文書手交等を命じ、退職者に係る申立てについては棄却した。 
命令主文  主     文
1 被申立人は、申立人組合の組合員X4、同X3及び同X5に対し、同人らが昭和55年8月29日から同年9月3日までの間通常どおり就労したならば得たであろう賃金(賞与を含む。)を、すみやかに補償しなければならない。ただし、既に退職した者があればその者を除く。
2 被申立人は、申立人組合の組合員X1に対し、同人が昭和55年8月29日から同年10月2日までの間通常どおり就労したならば得たであろう賃金(賞与を含む。)を、すみやかに補償しなければならない。ただし、仮処分決定に基づく支払い済分を除く。
3 被申立人は、申立人組合の組合員X2に対し、申立人組合の組合員の平均賃金を基準として、同人が昭和55年10月21日から昭和56年1月20日までの間通常どおり就労したならば得たであろう賃金(賞与を含む。)を計算し、既に仮処分決定に基づいて支払った分との差額をすみやかに補償しなければならない。
 また、被申立人は、同人が既に昭和55年11月度、12月度及び同56年1月度の健康保険料、厚生年金保険料として支払った金員(事業主が負担すべき保険料)を、同人に対してすみやかに補償しなければならない。
4 被申立人は、申立人組合の組合員X3に対し、昭和56年4月12日に発生した傷害事件を原因として同人が休業したその間、同人が通常どおり就労したならば得たであろう賃金(賞与を含む。)を、すみやかに補償しなければならない。
5 被申立人は、申立人組合の組合員X4、同X5及び同X1に対し、同人らが昭和56年4月13日から同年同月28日までの間通常どおり就労したならば得たであろう賃金(賞与を含む。)を、すみやかに補償しなければならない。ただし、既に退職した者があればその者を除く。
6 被申立人は、申立人組合との間に新たな賃金協定が発効する日の前日まで、同組合と昭和50年10月31日に締結した賃金協定を遵守しなければならない。
 なお、被申立人、申立人双方とも誠意をもって団体交渉を鋭意行い、新たな賃金協定が締結されるよう努めなければならない。
7 被申立人は、すみやかに下記の文書を申立人に交付しなければならない。
             記
                       年 月 日
 全自交石川県自動車交通労働組合金沢交通支部
  執行委員長 X2殿
                金沢交通株式会社
                 代表取締役 Y1
 昭和55年7月以来、貴組合との間に数々の紛議があり、
そのなかで不当労働行為に該当する会社の行為があると
石川県地方労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。


8 被申立人は、1項から前項までの履行状況を当委員会に文書をもって報告しなければならない。
9 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
賃金協定を一方的に破棄し、新賃金協定の締結について支部と十分な団交を行わないまま、新協定の締結に至らないときは暫定的な賃金条件を適用すると通告し、実際にそれに基づき賃金を支払ったことが、別組合と締結した新賃金協定を支部に応諾させようとする意図に基づく不当労働行為であるとされた例。

1400 制裁処分
別組合員の暴行行為に関し会社代表が教唆したかの如く不穏当な発言をなしたとして支部組合員X1を出勤停止処分に付し、さらに退職の通告を行って約1カ月就労させなかったことが、暴行行為者を処分しなかったこと等に照らし、不利益取扱いにあたるとされた例。

1400 制裁処分
1401 労務の受領拒否
1602 精神・生活上の不利益
別組合員による脅迫行為や組合事務所破壊行為に関し善後措置を講ずるため支部が開いた全員集会について、会社側は不法集会であるとして集会参加者全員に対し解雇通告し、6日間就労させなかったことが、別組合員の暴力行為を会社が黙認していたこと等からみて、支部組合員に対する不利益取扱いに当たるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
3411 その他の従業員の言動
別組合員の暴行によりX3が休業した件に関し、本件は、会社が同組合幹部を慫慂して支部の弱体化を意図した結果誘発された事件であり、暴行を受けた結果労働できなかった期間に係るX3の賃金は、会社が支払うべきであるとされた例。

1602 精神・生活上の不利益
3411 その他の従業員の言動
X3に対する別組合員の暴行事件以降組合員3名が2週間ほど就労しえなかった件につき、別組合員の暴行は会社側の支部に対する嫌悪の姿勢に起因するものであり、暴行に対する恐怖感のため労働できなかった期間に係る支部組合員の賃金は、会社側が支払うべきであるとされた例。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
上部組合の組合専従を解かれたことに伴い行ったX2の復職の申入れを拒否したことが、不当労働行為であるとされた例。

4407 バックペイの支払い方法
就労拒否期間のバック・ペイに関し、裁判所による仮処分額(定額)では不十分であり、少なくとも支部組合員の平均賃金を基準として賃金を計算すべきであるとされた例。

4505 その他
支部と誠意ある交渉をしないまま別組合と締結した新賃金協定を適用しようとした会社側の行為に関し誠意団交を求めた申立てにつき、支部組合員の言動にも不穏なことがあったとして、労使双方に対し、誠意団交を求めた例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
不当労働行為事件の審査中に退職した労働者に係る申立てについて、退職した労働者がその申立てをあくまでも維持する意思を有しているとは認めがたいとして、申立てを棄却した例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
組合員X4に対する交通事故を理由とする賃金減額措置等についての申立てにつき、同人はすでに退職しており、申立て維持の意思を有しているとは認めがたいとして、被救済利益がないとした例。

4614 文書手交のみを命じた例
今後不当労働行為を行わない旨の誓約書の提出及び掲示並びに新規入社者に係る組合選択の自由の公表を求める申立てについて、誓約書の手交のみを命じ、また、組合選択問題については入社する労働者自身の問題であるとして斥けた例。

5008 その他
支部が被った損害等に係る賠償の申立てについて、労働委員会の責務は正常な労使関係の樹立に寄与し、制裁を伴わない原状回復を目的とするものであり、認容できないとされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集71集209頁 
評釈等情報   

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