労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  池上通信機 
事件番号  神奈川地労委 昭和51年(不)第18号 
神奈川地労委 昭和53年(不)第17号 
神奈川地労委 昭和53年(不)第40号 
申立人  総評全国一般労働組合神奈川地方本部 
被申立人  池上通信機 株式会社 
命令年月日  昭和56年 9月10日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  組合員8名に対する昭和50年度ないし52年度の昇給、夏季一時金及び年末一時金の低査定及び組合員4名に対する給与等級3級職への不進級が争われた事件で、50年度及び52年度の昇給・一時金についての、従業員平均査定値を基準とする再査定と差額(年5分加算)の支給(51年度については52年度昇給是正時点での格差是正)、組合員3名の3級職への進級措置及び差額の支給、組合に対する是正結果等の通知並びにポスト・ノーティスを命じ、組合員X1の進級差別に対する申立てについては同人が既に会社を退職し分会からも脱退していることから棄却した。 
命令主文  1.被申立人会社は、申立人労働組合藤沢工場分会組合員、X2他7名の昭和50年度と同52年 度における昇給、夏期一時金及び年末一時金の各査定につき、同人らを除く藤沢工場従業員 の平均査定値を基準とし、同人らの査定値がこれを下回らないよう査定をやり直し、是正の 上、これに基づき各金員を算出し、既支給額との差額相当額にそれぞれ年5分相当額の金員 を加算して支払わなければならない。
  ただし、昭和52年度の昇給是正については、昭和51年度の昇給格差分を含めて是正しなけ ればならない。
2.被申立人会社は、分会員X2、X3、X4の3級進級につき、その審査基準とした査定を やり直し、X2、X3については昭和50年3月16日付で、X4については昭和51年3月16  日付で3級職への進級の措置を講じ、これに基づき、それぞれ各金員を算出し、既支給額と の差額相当額に年5分相当額の金員を加算して支払わなければならない。
3.被申立人会社は、申立人組合に対し、主文1及び2による査定の是正結果とこれに基づく 各個人別原査定との対照表及び進級措置を通知しなければならない。
4.被申立人会社は、申立人組合に対し、本命令交付後5日以内に下記の誓約書を縦1m×横 2mの白色木版に鮮明に墨書して、被申立人会社藤沢工場の正門左わきに見易い高さを保っ て2週間にわたり破損することなく掲げなければならない。
                  誓  約  書
  当社が貴組合分会員に対し、昭和50年、51年、52年の各年にわたり、昇給、夏期一時金及 び年末一時金及び年末一時金の査定について非組合員と差別したこと、並びに進級を遅らせ たことは、神奈川県地方労働委員会より労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当 労働行為と認められました。当社は、かかる行為を反省し、分会員の査定及び進級について 速やかに是正措置を講ずるとともに、今後かかる差別的行為をくり返さないことを誓約しま す。
                                 昭和 年 月 日
   総評全国一般労働組合神奈川地方本部
    執行委員長 X5 殿
                            池上通信機株式会社
                             代表取締役 Y1
5.申立人組合のその余の申立ては、棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員8名に対する昭和50年度ないし52年度の昇給、夏季一時金及び年末一時金の低査定が不当労働行為とされた例。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
過去3年間における昇給査定が一定点数に満たないので分会員3名の3級職への進級を行わなかったとの会社の主張につき、それぞれの昇給査定が理由のない差別扱いであり、その他の合理的理由もない以上、進級させなかったことも不当労働行為にあたるとされた例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
分会員X1の進級差別に係る救済申立てにつき、同人がすでに会社を退職し、分会からも脱退していることから被救済利益がないとされた例。

5121 挙証・採証
賃金差別の立証責任は組合が負うべきであり、また分会員との比較対象非組合員を匿名で挙げることでは疎明したことにはならないとの会社主張につき、組合の立証には限界があり、完璧な立証を求めることは、この種の不当労働行為における救済の道を塞ぐことになって妥当でなく、会社が自ら保管する賃金資料の提出を拒否している以上、上記組合の疎明で昇給格差の存在を認めざるをえないとして斥けた例。

5201 継続する行為
昭和51年度の昇給及び一時金差別に関する救済申立ては昭和53年4月15日になされているのであるから、昇給決定措置と向後1年間の賃金支払い行為とは一体不可分の関係にあり「継続する行為」に該当することを考慮しても、なお申立て期間を経過しており、救済できないとしつつも、差別を放置することはできないので、51年度の差別賃金の累積分を含めて、52年度昇給決定時において是正させることを命じた例。

5201 継続する行為
分会員3名に対する進級差別に関する申立てが、進級させるべき50年3月16日及び51年3月16日から1年以上経過した53年9月1日になされたことにつき、進級は過去3年の昇給査定を基礎とするものであり、進級に関する会社の行為は昇給の不当査定にはじまり3級職への進級まで継続された一体不可分のもので、「継続する行為」にあたり、申立期間の制限に抵触しないとされた例。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集70集250頁 
評釈等情報   

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