労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  各和精機 
事件番号  埼玉地労委 昭和50年(不)第3号 
申立人  総評全国金属労働組合埼玉地方本部 
申立人  総評全国金属労働組合埼玉地方本部各和精機支部 
被申立人  各和精機 株式会社 
命令年月日  昭和55年 7月10日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  就業時間中の組合活動等を理由とする執行委員長の譴責処分、退職勧誘拒否を理由とする組合員らの配転、賃金・一時金の査定差別等が争われた事件で、譴責処分及び配転処分の取消し、原職または原職相当職への復帰、賃金及び一時金の考課の再査定、職級の是正、バックペイ、支配介入の禁止、ポスト・ノーティスを命じ、その余の申立てについては棄却した。 
命令主文  1. 被申立人会社は、総評全国金属労働組合埼玉地方本部各和精機支部執行委員長X1に対し、「職場放棄の抗議集会に関する始末書の提出」を命じた昭和50年5月20日付け譴責処分を取り消さなければならない。
2. 被申立人会社は、申立人支部の組合員X2、同X3、同X4、同X5に対する昭和51年3月13日付け、同X6に対する同年同月26日付け各配置転換命令を取り消し、同人らをそれぞれ原職または原職相当職に復帰させなければならない。
3. 被申立人会社は、昭和47年度以降の賃金昇給額配分の考課査定と一時金配分の考課査定について、被申立人会社主張の考課制度の手続きに従い、申立人支部組合員らに対する考課査定額の平均が各和精機労働組合員らに対する考課査定額の平均と同一になるよう考課査定をし直して是正の上、既に支払済みの給料及び一時金との差額を速やかに支払わなければならない。ただし、再考課査定にあたっては、既になされた考課査定による支給額を下回ってはならない。
4. 被申立人会社は、申立人支部所属の下記組合員らに対し、次の措置を採らなければならない。
(1) X7、X8及びX6を昭和49年4月16日付けで1級に、同52年4月16日付けで2級に、X9、X3及びX10を同49年4月16日付けで2級に、X11、X4及びX1を同日付けで3級に、X12及びX13を同日づけで4級に、X2及びX5を同日付けで5級にそれぞれ昇級させなければならない。
(2) 上記日付けで職能給を是正し、その間同人らが既に支給を受けた職能給の金額との差額を同人らに対し速やかに支払わなければならない。
5. 被申立人会社は、申立人支部組合員らが申立人支部組合に所属していることを理由に各和精機労働組合員らと差別して人事考課査定及び職能給査定などにおいて不利益な取扱いをしてはならない。
6. 被申立人会社は、本命令受領の日から3日以内に下記内容を縦1メートル横 1.5メートルの白紙に墨書し、被申立人会社本社構内の従業員の見やすい場所に継続して7日間掲示しなければならない。(年月日は掲示した日を記載すること。)
           記
                  昭和 年 月 日
総評全国金属労働組合埼玉地方本部
  執行委員長  X14 殿
総評全国金属労働組合埼玉地方本部各和精機支部
  執行委員長  X1 殿
            各和精機株式会社
              代表取締役 Y1
 当会社の下記の行為は、不当労働行為であると埼玉県地方労働委員会において認定されました。今後、このような行為を繰り返さないよう注意します。
              記
(1) 総評全国金属労働組合埼玉地方本部各和精機支部執行委員長X1氏に対し、「職場放棄の抗議集会に関する始末書の提出」を命じた昭和50年5月20日付け譴責処分をなしたこと。
(2) X2氏、X3氏、X4氏及びX5氏に対する昭和51年3月13付け、X6氏に対する同年同月26日付け各配置転換を命じたこと。
(3) X1氏ら13人に対し、賃金昇給額配分及び一時金配分の各考課査定について各和精機労働組合員らと差別をしたこと。
(4) X7氏、X8氏及びX6氏を昭和49年4月16日付けで1級に、同52年4月16日付けで2級に、X9氏、X3氏及びX10氏を同49年4月16日付けで2級に、X11氏、X4氏及びX1氏を同日付けで3級に、X12氏及びX13氏を同日付けで4級に、X2氏及びX5氏を同日付けで5級にそれぞれ昇給させなかったこと。
7. 被申立人会社は、前各項の命令を履行したときは、速やかに当委員会に文書でその旨を報告しなければならない。
8. 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
組合が時間内の抗議集会を開いたのは、前日別組合に賃上げ回答しながら、当組合には担当部長の出張を理由に回答も交渉延期の連絡もしなかったことに抗議して行った権利擁護のためのやむを得ない措置であり、このことについては会社側に事前に届出書を出しており、また従来届け出による就業時間内の集会を認める慣行及び協約が存在しており、抗議集会は正当な組合活動であったと認められる。

1300 転勤・配転
退職勧誘を拒否した8名のうち5名について配転を命じた行為についてみるに、まず退職被勧誘者の人選割合において大差あり、また、退職拒否と配転命令の時間的接着性、配転先職場の悪環境、身体的条件の無視、組合歴等を総合判断しても、また個別にみても、会社の言う配転理由には合理性が疑わしく、配転者が配転先の職場がいやになり退職していくのを期待してなされた退職勧誘拒否に対する報復であり、不当労働行為である。

5201 継続する行為
会社が組合活動を嫌悪し続け、同組合員を差別する意図のもとに毎年度の昇給の決定にあたり、差別を繰り返しその差別が是正されることなく支払いが継続し年々その差額が累積している本件においては、会社の不当労働行為意思が一貫して存在し、各個の行為は連絡して一体をなし、本件申立て当時に至っているものと判断できるから、申立の日より一年以前のものは却下すべきとの会社主張は採用できない。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
就業時間中の抗議集会が正当な組合活動とされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
申立人組合員らに対する賃金差別が不当労働行為とされた例。

1300 転勤・配転
退職勧誘を拒否した組合員の配転に合理性が認められず不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
就業時間中の抗議集会開催を理由とする執行委員長の譴責処分が正当な組合活動に対する不利益処分であり不当労働行為とされた例。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
就業時間中の抗議集会開催を理由とする執行委員長の譴責処分が組合に対する支配介入であり不当労働行為とされた例。

4415 賃金是正を命じた例
賃金・一時金差別の救済として、別組合員の平均考課点まで是正させるとともに差額相当額を支払うよう命じた例。

1202 考課査定による差別
5121 挙証・採証
賃金・一時金の査定に関し会社側が組合員個々の査定内容や別組合員の査定状況について疎明しないので、別組合員との比較のかわりに全社員平均額の比較により、差別の有無を検討するのもやむを得ないとされた例。

4418 継続する行為を認めた例
5201 継続する行為
毎年度の昇給の決定行為にあたり、会社の不当労働行為の意思が数年にわたり一貫して存在している場合「継続する行為」に当るとされた例。

業種・規模  輸送用機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集68集75頁 
評釈等情報  労働法律旬報 細田初男 昭和55年 8月25日 1006号 26頁 

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約747KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。