労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  第一工業製薬 
事件番号  京都地労委 昭和49年(不)第4号 
申立人  第一工業製薬労働組合 
被申立人  第一工業製薬 株式会社 
命令年月日  昭和54年 9月26日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  39年から51年までの昇給・昇進・格付けについて、別組合員よりも低く査定したことが争われた事件で、組合員の39年から51年までの昇給について毎年の平均点が別組合員の平均より1点減じた数値を下回らない範囲での再査定とそれに基づく職級、号俸の格付け是正及び専門職への任用と差額支給、及びポスト・ノーティスをを命じ、上記査定の是正を上回る申立て部分については棄却した。 
命令主文  1. 被申立人は、申立人のすべての組合員の昭和39年から同51年までの昇給及び専門職任用を含む職級、号俸への格付けに関し、以下の方法でこれを是正し、同人らが得たであろう諸給与相当額と現実に支払われた額との差額を支払わなければならない。
(1) 被申立人は、申立人のすべての組合員の昭和39年から同51年までの昇給に関する査定において、同人らの査定点(各査定項目の評点の合計にウェイト加重をしたもの)の毎年の平均点が第一工業製薬労働組合(昭和38年 8月結成)のすべての組合員の査定点の毎年の平均点から1点を差し引いた数値を下回らない範囲内で、申立人の個々の組合員につき再査定を行わなければならない。
(2) 被申立人は、上記再査定に基づき、管理職及び専門職への任用を除き、申立人の組合員につき第一工業製薬労働組合(昭和38年 8月結成)の組合員と同一条件で職級、号俸の格付けをしなければならない。
(3) 被申立人は、上記査定及び職級、号俸の格付けの是正に基づき、次の基準に従い申立人の組合員を専門職に任用しなければならない。
(1) 昭和46年の専門職任用については、同年改正前の旧給与規定の定める一般職掌級職に格付けされた者全員及び同年 4月 1日時点において、一般職掌2級職上の者で過去3年間の昇給査定が標準以上の者、又は、その期間の昇給査定は標準を下回るが概ね標準に近い者であって、同時点において、担当している職務が専門職掌に相当すると認められる者(査定にE以下を含む者は除く)、並びに、同時点において一般職掌2級職下の者で、過去3年間の昇給査定が標準を上回る者(その期間の査定に一般職掌3級職としての査定を含む場合、3級職の査定にDを含む者は除く)、又は、その期間の昇給査定が概ね標準と認められる者であって、同時点で担当している職務が専門職に相当すると認められる者。
(2) 昭和47年から同51年までの専門職試験について、申立人の組合員の各年の受験資格取得者数を上記査定及び職級、号俸の格付けの是正に基づいて確定し、その総数に、第一工業製薬労働組合(昭和38年 8月結成)の昭和47年から同51年までの間の合格者総数を同じく受験資格取得者総数で除した合格率を乗じて得た人数(少数点以下はは切り捨て)を上記期間における申立人の組合員からの専門職任用者の総数とし、これを各年の申立人の組合員の受験資格取得の人数に応じて按分した人数を各年の申立人の組合員の専門職任用人員とし、被申立人が適宜の方法により申立人の組合員の中から選抜した者。
2. 被申立人は、下記内容の文書を申立人に提出するとともに、同内容の文章を縦1メートル、横 1.5メートルの大きさの模造紙に墨書し、被申立人の京都工場、大潟工場の各正門内の従業員の見易い場所にそれぞれ10日間掲示しなければならない。

 会社は、組合を嫌悪し、組合の組合員に対し、第一工業製薬労働組合(昭和38年8月結成)の組合員に比べて昇給及び職級、号俸の格付けにおいて低く評価し、不利益な取扱いをしたことは不当労働行為であったことを認め、今後かかる行為はいたしません。
 以上、京都府地方労働委員会の命令により誓約いたします。

年    月    日
 第一工業製薬労働組合
  執行委員長 X1 殿
第一工業製薬株式会社
代表取締役 Y1

3. その余の請求を棄却する。 
判定の要旨  5201 継続する行為
「継続する行為」とは、本来数個の行為が、不当労働行為意思の単一性、行為の形態、種類の同一性時間的連続性などの故に、全体として一個の不当労働行為と目されるものをいうと解されるところ、昇給差別の場合、昇給査定、昇給決定及び賃金支払の各行為は全体として一個の行為として把握すべきであり、これが同一の不当労働行為意思のもとに毎年反覆累行されるときは全体としてこれを一つの「継続する行為」とみるのが相当である。これは昇進差別についても同様であり、本件の場合39年度から51年度までの昇給、昇進差別が同一の不当労働行為意思に基づくものと認められる以上、これら全部を「継続する行為」として審査の対象とすることが相当である。

1202 考課査定による差別
2901 組合無視
組合員に対する低査定の理由として会社のあげる事由の殆んどに合理性がないこと、5名の個別立証の結果は会社の低査定を裏付けたもので、組合員全体が別組合員に比較して不当に低査定を受けていることを推測させるものであること、従来の労使関係からみて会社が組合を嫌悪していることが推認されること、専門職任用については、専門職試験制度自体が不当労働行為の一環としての重要な役割を果している面があることから39年から51年までの昇給、昇進、格付差別が不当労働行為であるとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
専門職任用差別の是正として、昇給の再査定と職級、号俸の格付けの是正結果に基づき、46年の任用については過去3年間の昇給査定が標準以上の者で職務が専門職に相当する者、47年ないし51年の任用については別組合員の専門職試験の合格率を組合の受験資格取得者に適用して得た人数から選抜する等の基準により専門職に任用すべきことを命じた例。

4415 賃金是正を命じた例
実質欠時間の多いことを理由に昇給に際し組合員に対してなした低査定は是認しうるとし、組合員の査定点の平均点が、別組合の組合員の平均点から1点を差し引いた数値を下回らない範囲内での再査定を命じた例。

5201 継続する行為
39年度から51年度までの査定とそれに基づく昇給及び昇進、その決定、支給及び発令行為は、同一の不当労働行為意思に基づくものと認められるからこれらは「継続する行為」として全部を審査の対象とすることが相当であるとされた例。

業種・規模  化学工業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集66集261頁 
評釈等情報   

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