概要情報
事件名 |
宝幸製作所 |
事件番号 |
神奈川地労委 昭和54年(不)第12号
|
申立人 |
総評全国金属労働組合神奈川地方本部宝幸製作所支部 |
被申立人 |
株式会社 宝幸製作所 |
命令年月日 |
昭和54年 7月24日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
|
事件概要 |
他社への経営権譲渡に当たり、上部団体からの脱退を強要し、組合分裂により上部団体を脱退して独立した別組合との唯一交渉団体条項を理由に上部団体支部として存続している申立人支部からの団交申入れを拒否すると共に、申立人支部提出の要求書、団交申込書等一切の文書の受領を拒否しさらに申立人支部組合員の賃金から別組合の組合費を一方的にチェックオフした上で、別組合に引渡し、返還要求に応じなかった事件で、別組合との唯一交渉団体条項を理由とする団交拒否の禁止と誠意ある団交の応諾、組合費のチェックオフの中止及び返還並びにポスト・ノーティスを命じた。 |
命令主文 |
1. 被申立人は、申立人支部は存在しないとか、株式会社宝幸製作所労働組合と唯一交渉団体条項を締結しているので同組合の了解がなければできないなどという理由で、申立人支部が申し入れた団体交渉を拒否してはならない。 被申立人は、昭和54年 1月22日付で申立人支部が申し入れた団体交渉に速やかに誠意をもって応じなければならない。 2. 被申立人は、申立人支部所属組合員の賃金から、株式会社宝幸製作所労働組合の組合費をチェック・オフしてはならない。既にチェック・オフした昭和54年 1月分以降の金員相当額を支部所属組合員に対し、速やかに返還しなければならず、株式会社宝幸製作所労働組合に引渡し済みであることを理由に返還を拒否してはならない。 3. 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白紙に読み易い字体で下記のとおり墨書し、被申立人川崎工場内の従業員の見易い場所に1週間掲示しなければならない。
誓 約 書 当社は、日本弁管工業株式会社に経営権を譲渡するに当り、宝幸製作所支部を総評全国金属労働組合から脱退させるために干渉、介入したこと、株式会社宝幸製作所労働組合の組合費を申立人支部所属の組合員からチェック・オフして返還しないこと及び申立人支部の存在を否定し、これとの団体交渉を拒否したこと等はいずれも不当労働行為であると神奈川県地方労働委員会により認定されました。 当社としては、このような不当労働行為を行ったことにつき深く反省するとともに、今後、総評全国金属労働組合及び同組合宝幸製作所支部所属組合員に対し、一切の不当労働行為を行わないことを誓約します。
昭和54年 月 日
従業員各位
株式会社 宝幸製作所
代表取締役 Y1 |
判定の要旨 |
2111 唯一交渉団体条項
組合分裂により上部団体を脱退した別組合との唯一交渉団体条項を理由に直ちに上部団体支部として存続している支部の団体交渉権を否認することはできないばかりでなく、会社が他社への経営権譲渡に際し、支部を上部団体から脱退させるために干渉・介入したこと等を併せ考えると、もともと支部と締結していた唯一交渉団体条項を別組合との協約であるとしてこれを利用し、別組合の支部に対する態度に藉口して、支部の存在を否定する会社の労務政策を実現するために団交を拒否しているものであって、その拒否理由は正当たりえない。
4603 その他
申立人支部組合員の賃金から組合分裂により独立した別組合の組合費を一方的にチェックオフした上で別組合に引き渡し、支部組合からの返還要求に応じなかった会社の行為は申立人支部及び申立人支部組合員に対し、経済的損害、精神的圧迫を与えているものと認めざるを得ず、これら申立人支部組合員に対する経済的損失の補填について会社は責任を負うものである。
1603 組合活動上の不利益
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
申立人支部組合員の賃金から、組合分裂により独立した別組合の組合費を一方的にチェックオフした上で別組合に引き渡し、支部の返還要求に応じなかったことが、不当労働行為とされた例。
2253 受取り拒否・申入れなし
3106 その他の行為
申立人支部提出の通告書、要求書、団交申入書等一切の文書を受領しなかったことが団交拒否のみならず、支部への組織介入であるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社幹部の上部団体からの脱退強要が他社に経営権を譲渡するに当って行われた明白な支配介入とされた例。
4831 組織変更
組合分裂により、組合員の大部分は上部団体を脱退したが、従来からの上部団体支部として存続を確認した少数派である申立人支部の申立権が認められた例。
|
業種・規模 |
非鉄金属製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集66集80頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1979年10月15日 325号 72頁 
|