労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  京王工業 
事件番号  神奈川地労委 昭和53年(不)第15号 
神奈川地労委 昭和53年(不)第24号 
神奈川地労委 昭和53年(不)第25号 
申立人  総評化学一般労連全統一労働組合 
被申立人  京王工業 株式会社 
命令年月日  昭和54年 3月16日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  社外団交固執等による不誠意団交、下級職制による組合脱退工作、組合用務のための食堂の使用禁止、他の従業員との残業割当て差別、労委出頭のための年休申請に対する欠勤扱い、組合事務所、掲示板、電話の貸与拒否等が争われた事件で、誠意団交応諾、組合誹謗及び組合脱退勧奨行為の禁止、食堂利用の従前どおりの取扱い、残業等に関する差別扱いの禁止、組合事務所等の貸与、労委出頭日分の賃金相当額の支払い及びこれらに関するポスト・ノーティスを命じ、ストライキの賃金カットの対象に住宅手当等を含んだことについての申立てについてはすでに労使双方合意の上是正済みであり、この部分に関するポスト・ノーティスの必要はないとして棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の申し入れる団体交渉にあたり、交渉の場所を会社外に固執したり期日を引き延すなどせずに誠意をもってこれに応じなければならない。
2 被申立人は、職制が申立人を誹謗・中傷したり、申立人組合員に対し同組合からの脱退を勧奨することを放置してはならない。
3 被申立人は、申立人の申し入れる大和工場食堂の利用について昭和53年2月以前と同様にこれを認めなければならない。
4 被申立人は、時間外及び休日労働に関し、申立人組合員を他の従業員と差別して取り扱ってはならない。
5 被申立人は、申立人に対して、すみやかに大和工場食堂2階の従業員用宿舎の1室に電話を架設のうえ、これを組合事務所として貸与しなければならない。
6 被申立人は、申立人に対してすみやかに大和工場食堂に縦横1メートルの掲示板を設置のうえ掲示事項の内容や事前の届出などの制限をすることなくこれを貸与しなければならない。
7 被申立人は、申立人組合員X1、同X2、同X3、同X4に対し、それぞれ昭和53年4月18日の賃金相当分を支払わなければならない。
8 被申立人は、下記の文書を本命令交付の日から7日以内に縦1メートル横2メートルの白色木板に墨書し被申立人本社の正門入口の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
 昭和  年  月  日
 総評化学一般労連全統一労働組合
   執行委員長 X5 殿
京王工業株式会社  
代表取締役 Y1

 当社が行った下記行為は、労働組合法第7条第1号、第2号、第3号及び第4号に該当する不当労働行為であると、神奈川県地方労働委員会で認定されましたので、貴組合に遺憾の意を表し、今後再びこのような行為を繰り返さないことを約束します。
(1) 団体交渉にあたり、交渉の場所を会社外に固執したり、期日を引き延すなど誠意をもって、これに応じなかったこと。
(2) 職制をして組合を誹謗・中傷させたり、組合員に対し組合から脱退を勧奨させたこと。
(3) 時間外及び休日労働に関して組合員を他の従業員と差別したこと。
(4) 組合事務所の貸与、同事務所の電話の架設及び会社施設の利用をいずれも拒否したこと。
(5) 掲示板貸与にあたって掲示事項の内容や事前届出などの不当な条件をつけたこと。
(6) X1外3名の補佐人として地方労働委員会出頭のための年次有給休暇申請を受理せず、欠勤扱いとしたこと。
 以上神奈川県地方労働委員会の命令によって掲示します。
9 申立人のその他の申立ては棄却する。 
判定の要旨  2245 引き延ばし
組合の団交申入れに対して、社内で開催することに特段の支障がないにも関らず社外での開催に固執したり、団交期日の延期についても相当とされる事由もなく徒らに引き延ばしたり、また団交を開催しても会社案に固執するなどの会社の団交に対する態度は、誠意ある団交を行ったとはいえず不当労働行為である。

2900 非組合員の優遇
従来の慣行として当日個別の従業員から都合を聞き命じてきた残業を組合員でない他の従業員には従来どおりとしながら、分会員のみあらかじめ一方的に作成した残業日程表にもとづき個々の分会員の都合も聞かずに命じたこと、さらにこれら残業日程表どおりに履行できなかった分会員ばかりか履行した分会員の残業をも禁止したことには合理性がなく明らかに差別行為であり、分会員の中には残業による増収を期待するものも多いことを知りながら組合脱退勧奨等組合切崩しの一環として会社は残業を命じなかったものといわざるを得ない。

3300 不当労働行為とされた例
労委に係属の別件救済申立て事件へ補佐人として出席するための年次有給休暇申請を受理せず欠勤扱いとした会社の行為には合理性が見出し難く、本件救済申立てに対抗した不利益扱いであり組合活動を規制せんとした7条3・4号にあたる不当労働行為である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
3500 処分の時期
係長らによる組合脱退勧奨行為が時期等からみて組合への支配介入とされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社がいったん合意した組合事務所の貸与を撤回したことが不当労働行為とされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合の情宣活動を著しく制限する条件を付して協定の成立を阻み、掲示板を貸与しなかったことが不当労働行為とされた例。

3020 組合活動への制約
組合集会等のための食堂使用を些細な違反を理由に禁止したことが不当労働行為とされた例。

4615 P.Nを認めないことに理由を付した例
ストライキの賃金カットに住宅手当等を対象としたことは認められるが、すでに是正済みであり、この部分に関するポスト・ノーティスの必要はないとされた例。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集65集197頁 
評釈等情報  労働判例 1979年7月1日  319号 76頁 

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