労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本アイ・ビー・エム 
事件番号  神奈川地労委 昭和52年(不)第5号 
申立人  X1 外4名 
被申立人  日本アイ・ビー・エム 株式会社 
命令年月日  昭和53年12月27日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  申立人ら5名をマネージャー等の管理者に昇進、昇格させなかったことが争われた事件で、スタッフ・マネージャーへの昇進、バックペイ(年5分の割合による金員を含む)、昇給・昇進等の差別扱いによる支配介入の禁止、命令主文の社内報掲載・配布、ポスト・ノーティスを命じ、ラインマネージャーへの昇進については申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X1、同X2、同X3、同X4及び同X5の5名につき、次の措置を含め、昭和51年2月5日付でスタッフ・マネージャーに昇進させなければならない。
(1) 昭和49年12月1日付で5名をチーフの職位に格付すること。
(2) 昭和49年12月及び昭和50年12月の昇給については、5名の業績をいずれもAとして昇給額を査定し、賃金月額を是正すること。
(3) 昭和51年2月5日付で5名の職能格を主事に格付けすること。
(4) 上記(1)ないし(3)の措置及びフタッフ・マネージャーへの昇進措置により、5名の賃金月額を当該時点に遡って是正し、既に支払われた諸給与相当額との差額を、それぞれ年5分相当額を加算して支払うこと。
2 被申立人は、昇給、昇進、格付の考課基準とその方法を明らかにせず、これらを利用し、総評全国金属労働組合日本アイ・ビー・エム支部の組合員を差別扱いするなどして、同組合の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、本命令受領の日から1か月以内に、社内報「こんぱす」に本命令主文を掲載して全従業員に配布するとともに、本命令受領の日から3日以内に、下記文面を縦1メートル、横2メートル以上の白色木板に楷書で墨書し、藤沢工場の正面入口の従業員の見易い場所に毀損することなく1週間掲示しなければならない。
           従 業 員 各 位 へ
 当社は、総評全国金属労働組合日本アイ・ビー・エム支部を嫌悪し、同組合員X1、X2、X3、X4、X5の各氏に対し昇進・昇格の差別を行ってきましたが、これらは労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であることと神奈川県地方労働委員会により認定されました。
 当社としては、直ちに上記各氏に対し、神奈川県地方労働委員会の命令通り是正の措置をとり、併せて今後再びこのような行為をくり返さないことを表明します。
   昭和 年 月 日
             日本アイ・ビー・エム株式会社
               代表取締役 Y1
4 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  5124 その他の審査手続
申立人らが請求するそれぞれの時点までに管理者に昇進すべきものが昇進していないのは会社の不作為による不当労働行為であると認められるので、申立人らの管理者職位への昇進差別扱いの救済申立てを差別の発生時期が特定されないということだけで却下することは妥当でない。

5201 継続する行為
「継続する行為」に該当するか否かは具体的事実に即して判断されるべきで、単に、申立人らが救済を求める昇進・昇格の時期が申立てまでに1年以上経過しているとして直ちに申立てを却下することは妥当でない。

5201 継続する行為
会社の昇進措置行為と少なくとも過去3回の人事考課及び職位の格付けは一体不可分の関係にあると認められるので、昇進措置行為を命ずる場合にはその時点から遡及して三回目に当る人事考課を行った時点までは職位の格付けを含めて、これらを「継続する行為」として捉え一括して救済の対象とすることができる。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
申立人らをスタッフ・マネージャーに昇進させなかったことは不当労働行為だが、ライン・マネージャーに昇進させなかったことは不当労働行為でないとされた例。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
申立人らを管理者に昇進させないことが不当労働行為である以上、職能給を是正しないことも不当労働行為であるとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
管理者昇進措置行為の救済として、本件昇進措置以前3回の業績を昇進基準であるAとして、昇給額を是正し、職位をチーフに格付け是正するのが妥当とされた例。

5124 その他の審査手続
管理者に昇進させるか否かは人事権に基づく裁量行為であり、管理者昇進の申立ては審査になじまないとの会社の主張は、昇進の選考が組合幹部であることを理由に差別すれば不当労働行為とされる以上、その主張は採用できないとされた例。

業種・規模  精密機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集64集692頁 
評釈等情報   

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