労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東洋現像所 
事件番号  神奈川地労委 昭和49年(不)第19号 
申立人  映演総連東洋現像所労働組合 
申立人  X2 
申立人  X3 
申立人  X4 
申立人  X1 
被申立人  株式会社 東洋現像所 
命令年月日  昭和52年11月 4日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  42年以降の昇格及び昇給の査定に当り、組合員については他の比較対象となる従業員よりも低く査定した事件で、48年4月以降の申立人らの格付・賃金の比較対象従業員グループの標準的な位置までの是正と年5分相当額加算のバックペイ、昇格・昇給等の差別的取扱の禁止及び陳謝文の手交・掲示と是正結果の各人に対する通知を命じ、48年3月以前の昇格・昇給等に関する申立ては却下し、申立人らの役職への昇格及び役付手当の支給等については棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人X1、同X2、同X3及び同X4に対して、それぞれ同人らの賃金を次表のとおり是正したものとして以後の賃金額を是正し、かつ、同表右欄に掲げる金員を支払うとともに、同人らの職扱いについて昭和48年10月以降少なくとも1級以上昇格したと同様の取扱いをし、かつ、同人らを各比較対象者群の標準的職位につけなければならない。

 申立人名 昭和48年4月の 昭和49年4月の 支払うべ
       基本給     基本給     き金員

 X1    157,412円以上  214,812円以上  700万円

 X2    123,959円以上  168,681円以上  200万円

 X3    123,959円以上  168,681円以上  210万円

 X4    119,106円以上  166,011円以上  350万円

 被申立人会社は、今後申立人組合の組合員を申立人組合に所属することを理由として昇格、昇給等について、一切差別的取扱いをしてはならない。
3 被申立人会社は、申立人に対し、個人別に是正結果を一覧表をもって通知しなければならない。
4 被申立人会社は、申立人組合に対し、この命令発令後5日以内に次の内容の陳謝文を手交するとともに、縦1メートル、横2メートルの白色木板に明確に墨書し、これを被申立人会社の横浜工場正門前に14日間毀損することなく掲示しなければならない。
          陳  謝  文
 会社は、貴組合員に対し、昇格、昇給等の差別を行ったとして、これが神奈川県地方労働委員会から労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 会社は、これらの行為によって、貴組合及び貴組合員に対して不利益を与えたことを深く陳謝し、速やかに是正するとともに、以後このような行為は一切しないことを誓約します。
   昭和 年 月 日
  映演総連東洋現像所労働組合
      執行委員長 X1 殿
          株式会社 東洋現像所
             代表取締役 Y1
5 申立人の昭和48年3月以前の昇格、昇給等に関する申立てを却下する。
6 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
2901 組合無視
申立人ら4名の格付け、賃金の現状は、比較対象者グループとの間に著しい格差が存在すること、同人らを低く査定する合理的理由に乏しいこと、会社が同人らの組合活動を嫌悪してきたであろうことは推認するに難くないこと等を勘案すると、会社の差別的取扱いにより申立人ら4名に累積されてきた格付・賃金の著しい格差は、会社が職能給制度に藉口して申立人らの格付・賃金を低く抑えることによりそのみせしめ的効果を期待し、組合の弱体化を意図したものと認めざるを得ない。

4413 給与上の不利益の場合
申立人ら4名の格付・賃金における現状の格差は著しく、これが組合に対する支配介入の手段として、現に作用している以上、このような格差の現状を将来にわたり放任することは不当労働行為制度の趣旨からみても許されず、昭和48年4月以降申立人ら4名の格付・賃金を比較対象グループの標準的なところまで是正させるとともに、昭和52年10月までの差額相当額を支払わせることが相当である。

5201 継続する行為
毎年行われる昇給・昇格に対する差別行為が、継続する行為に該当するか否かは、事実関係を審理し具体的事実に即して判断すべきであり、本件申立前1年以上の昇給・昇格問題は直ちに却下すべきとの会社主張は採用できない。

5201 継続する行為
一貫した不当労働行為意思のもとに昇格させないという不作為の継続と差別賃金を月々継続して支給してきたという事実のみでは継続する行為と認めることは困難であるが、年1回行う昇給決定措置は向後1年間毎月何程の賃金を支払うべきかを定める性質のものであり、12回の賃金支払行為を経てはじめて現実的なものとしてその目的を完全に達成するものであるから昇給決定措置と賃金支払行為とは不即不離の関係に立つと考え、本件申立ては、昭和49年8月22日であるが、昭和48年4月の昇給決定までが本件の救済対象となる。

業種・規模  映画・ビデオ制作業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集62集415頁 
評釈等情報  労働経済判例速報 昭和52年12月30日  966号(28巻 3号) 41頁 

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