労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  葦原運輸機工 
事件番号  大阪地労委昭和48年(不)第1号 
大阪地労委昭和49年(不)第55号 
大阪地労委昭和49年(不)第93号 
大阪地労委昭和50年(不)第67号 
申立人  全国自動車運輸労働組合南大阪支部 
被申立人  葦原運輸機工 株式会社 
命令年月日  昭和52年 9月 9日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が賃金および一時金支給に際し組合員らを非組合員と比較して低く考課査定したこと、誠意ある団交を行わなかったこと、組合員に対し暴力・脅迫を行う等組合運営に支配介入したことをめぐる事件で、賃金および一時金について再査定による差額の支給(年5分の割合による金員の加算を含む。)、団交応諾、ポスト・ノーティスを命じ、除斥期間を徒過した昇給の考課再査定の申立て等は却下した。 
命令主文  1 被申立人は、X1、X2、X3、X4及びX5(以下「分会員ら」と総称する)に対して、基本給及び出勤基本給について下記の基準に従って算出し既に支払った額との差額を支払わなければならない。
              記
(1) 昭和47年4月の昇給について、分会員らの平均昇給額が基本給の場合、 2,633円を、出勤基本給の場合、 250円を下回らない額になるよう再査定して算出した額を分会員らの各昇給額とすること
(2) 47年7月、同年8月、同年10月及び48年11月の分会員らの基本給を別表(1)のとおり昇給させること
(3) 47年8月、同年10月及び同年11月の分会員らの出勤基本給を別表(2)のとおり昇給させること
2 被申立人は、分会員らに対して、47年1月分から49年12月分(ただし、48年1月?10月分及び49年1月?5月分を除く)までの賃金のうち、考課給部分について各年ごとに分会員らの平均考課点が分会員を除く本社勤務の現業員(以下「非分会員」という)のそれを下回らないように再査定し、それに基づいて算出した考課給額と既に支払った額との差額を支払わなければならない。
 ただし、再査定にあたっては、分会員らの従来の査定点数を同人らに不利益に変更してはならない。
 別表 (1)          別表 (2)

  昇給年月  平均昇給額   昇給年月  平均昇給額

  47年7月     364円   47年8月     86円
    8月    3,000円     10月     73円
    10月    1,273円     11月     36円
  48年11月    3,955円

3 被申立人は、分会員らに対して、47年1月分から49年12月分(ただし、48年1月~10月分及び49年1月~5月分を除く)までの賃金のうち、職能給部分について非分会員に対して支払った職能給の各年ごとの平均額と分会員らのそれとの差額を支払わなければならない。
4 被申立人は、X3及びX5については47年1月分賃金から、X2については48年8月分賃金からそれぞれ運転手として時間外手当を算定しなおし、既に支払った額との差額を支払うことを含め、同人らをそれぞれ前記各月以降運転手として取り扱わなければならない。
5 被申立人は、分会員らに対して、47年1月分から49年12月分(ただし、48年1月~10月分及び49年1月~5月分を除く)までの賃金のうち、通信手当部分について各年ごとに分会員らの平均連絡状況評価点が非分会員のそれを下回らないよう再査定し、それに基づいて算出した通信手当額と既に支払った額との差額を支払わなければならない。
 ただし、再査定にあたっては、分会員らの従来の連絡状況評価点を同人らに不利益に変更してはならない。
6 被申立人は、分会員らに対して、47年分の賃金のうち、特別手当部分について非分会員に対して支払った特別手当の平均額と分会員らのそれとの差額を支払わなければならない。
7 被申立人は、分会員らに対して、48年11月分から49年12月分(ただし、49年1月~5月分を除く)までの賃金のうち、物価手当について前記1~6によって是正した各賃金部分により算出した賃金総額に基づいて算定しなおした額と既に支払った額との差額を支払わなければならない。
8 被申立人は、分会員らに対して、報償金について分会員らの平均考課点が非分会員のそれを下回らないよう再査定し、それに基づいて算出した報償金額と既に支払った額との差額を支払わなければならない。
 ただし、再査定にあたっては、分会員らの従来の査定点数を同人らに不利益に変更してはならない。
9 被申立人は、分会員らに対して、47年夏季一時金について下記の基準に従って既に支払った額との差額を支払わなければならない。
              記
(1) 主文1に基づいて算定しなおした分会員らの基本給及び出勤基本給を基準に「基本」、「出勤率」及び「考課」を算出すること
(2) 「考課」の算出にあたっては分会員らの平均考課点が非分会員のそれを下回らないよう再査定すること
(3) 分会員らの「協力・事故」の平均額を非分会員のそれを下回らない額とすること
(4) 分会員らの「特別」の平均額を非分会員のそれを下回らない額とすること
10 被申立人は、分会員らに対して、47年年末一時金について、下記の基準に従って既に支払った額との差額を支払わなければならない。
              記
(1) 主文9の記(1)~(4)に同じ
(2) 分会員らの「期待」の平均額を非分会員のそれを下回らない額とすること
11 被申立人は、分会員らに対して、48年夏季一時金について下記の基準に従って既に支払った額との差額を支払わなければならない。
              記
(1) 主文9の記の(1)、(2)、(4)及び主文10の記の(2)に同じ
(2) 分会員らの「協力」の平均額を非分会員のそれを下回らない額とすること
12 被申立人は、分会員らに対して、48年年末一時金について下記の基準に従って既に支払った額との差額を支払わなければならない。
              記
 主文11の記の(1)に同じ
13 被申立人は前第1項?第12項による金員の支払いについて、年5分の割合による金員を併せて支払わなければならない。
14 被申立人は、下記事項について芦原運送分会と誠意をもって団体交渉を行なわなければならない。
              記
(1) 46年年末一時金に関する件
(2) 労使関係正常化等に関する件
(3) 寮食堂の閉鎖に関する件
15 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して会社正門付近の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
              記
                     年 月 日
     申立人代表者 あて
                  被申立人代表者名
 当社は、貴組合及び貴組合芦原運送分会員らに対して下記の行為を行いましたが、これらの行為は労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であることを認め、今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。
              記
(1) 貴分会員らをめがけ消火液を噴射させるなど7件の暴行を働いたこと
(2) 貴分会員5名の賃金等について不利益に取り扱ったこと
(3) 寮食堂の閉鎖に関する件等について、誠意をもって団体交渉に応じなかったこと
 以上、大阪府地方労働委員会の命令によって掲示します。
16 46年分、48年1月から10月分及び49年1月から5月分の賃金に関する申立ては、これを却下する。
17 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
47年昇給額に格差が生じた原因は、考課査定にあるが、会社の考課要素中、残業、休日出勤への協力等は本来労働者の自由な意思に委ねられている領域に属し、これらを考課要素とすること自体不当であって、分会員の残業時間等の少ないことは、格差を合理化するものではなく、他の考課要素の合理性についての会社の疎明もない以上、組合結成以来、活発に組合活動を行ってきたことを理由に考課査定を低く行い組合員らを不利益に取扱ったことに帰すると考えざるを得ない。

2240 説明・説得の程度
2242 回答なし
団交にあたって主張にへだたりが存する場合はそれぞれの根拠を相手方に具体的に示して相手方の納得を得るよう努力してこそ誠意ある団交を行ったといえるが、年末一時金を支払えない理由として「資金繰りに苦労しており、会社経営が非常に苦しい。」とのみ述べ続けたことは、根拠を具体的に示したとはいえず、会社が誠意をもって団交に応じたとはいえない。

5201 継続する行為
なされるべき昇給を行わなかった会社の各不作為は、それぞれの発令時に終了し、したがって、なされるべき昇給が行われなかったことによる不利益は不作為の結果によるもので「継続する行為」に該当しないが、なされるべき昇給が申立日の1年前以内においてもなお行われていない場合には、その不作為を救済対象とし、かつその限りにおいてなされるべき昇給の実現を命じることは「継続する行為」とは無関係で差し支えない。

2700 威嚇・暴力行為
団交の経過報告をなしていた組合員に対する会社職制の暴行が、組合への支配介入とされた例。

2700 威嚇・暴力行為
寮食堂閉鎖に関する団交要求をなした組合員に対する会社職制の暴行が、組合への支配介入とされた例。

2700 威嚇・暴力行為
3106 その他の行為
防火点検と称して寮室内に立入ったために発生したトラブルでの社長の行為が、組合への支配介入とされた例。

業種・規模  運輸に附帯するサービス業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集62集163頁 
評釈等情報   

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