労働委員会命令データベース

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  鹿沼カントリー倶楽部 
事件番号  栃木地労委昭和50年(不)第12号 
栃木地労委昭和50年(不)第13号 
申立人  総評・全国一般労働組合栃木地方本部 ほか3名 
被申立人  株式会社 鹿沼カントリー倶楽部 
被申立人  鹿沼ゴルフサービス 株式会社 
命令年月日  昭和51年12月22日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  新会社への移籍、定年制導入を利用した組合脱退勧奨、組合員に対する賃金・カート使用等差別、ストによる業務運営阻害を理由に組合支部長ら2名を解雇、1名を譴責処分に付した事件で、脱退勧奨の禁止・賃金及び使用カートの差別取扱い禁止、差別賃金是正に伴うバックペイ(本件申立後、組合脱退した者も含む)、解雇および譴責処分の取消し、原職復帰・バックペイを命じ、新会社を名宛人とすること及びポスト・ノーティスについては棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社鹿沼カントリー倶楽部は、申立人総評・全国一般労働組合栃木地方本部の鹿沼カントリー支部組合員に対し、鹿沼ゴルフサービス株式会社へ移籍させるに際し、又は定年制の運用に際し、組合からの脱退を勧奨してはならない。
2 被申立人株式会社鹿沼カントリー倶楽部は、申立人組合の組合員キャディと鹿沼ゴルフサービス株式会社に所属するキャディとの間で、賃金及び使用するカートについて差別取扱いをしてはならない。
3 被申立人株式会社鹿沼カントリー倶楽部は、申立人組合の組合員キャディ(本件申立て当時申立人組合に在籍し、その後脱退した者も含む。)に対し、昭和50年8月19日以降の賃金につき、鹿沼ゴルフサービス株式会社に所属するキャディに適用されている賃金体系で計算した額と申立人組合の組合員キャディに支給された額との差額を支払わなければならない。
4 被申立人株式会社鹿沼カントリー倶楽部は、申立人X1及び同X2に対し、次の措置を含め昭和50年9月15日以降同人らが解雇されなかったと同じ状態に回復させなければならない。
(1) 昭和50年9月15日付けの解雇を取り消し、原職に復帰させること。
(2) 解雇の日から原職復帰の日までの間に同人が受けるはずであった諸給与相当額(その間の賃金計算は鹿沼ゴルフサービス株式会社に所属するキャディの賃金体系によって行い、出勤日数、欠勤日数及びラウンド数については解雇以前の3カ月間の平均を用いること。)を支払うこと。
(3) 昭和50年8月19日から解雇の日までの賃金については、主文第3項と同様に取り扱うこと。
5 被申立人株式会社鹿沼カントリー倶楽部は、申立人X3に対してなした昭和50年9月16日付けの譴責処分を取り消さなければならない。
6 その余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0418 組合の統制違反
労組法第5条第2項の規定は正当な争議行為についての実体的な要件を定めたものでなく、組合規約の定める正規の手続を経ないで開始されたストであっても、事実上組合員の意思に基づく組合の統一的行動と認められる限り、組合内部において組合規約違反の責任問題を生ずることは格別、使用者に対する関係ではなお正当性を失うものではない。

1201 支払い遅延・給付差別
新・旧両社間に賃金上格差のあることが明らかであること、会社が新会社への移籍問題についての団交申入れを拒否し、組合を通じての移籍の道を閉ざす一方、様々な方法で組合脱退を勧奨し、脱退者はいずれも新会社へ移籍していること、会社は新会社キャディに対して労組法上使用者と認められるからたとえ便宜上、キャディを統轄する新会社を設立したとしても、会社が新会社に所属するキャディについてのみ有利な労働条件を付与すべき合理的理由があるとはいえず、所属する会社が異なることによる本件賃金差別は不当労働行為である。

0421 幹部責任
1102 業務命令違反
本件ストは、労使間の深刻な対立のなかで、会社が組合の切り崩し、弱体化を進める道具とした電動カートを組合員に使用を強制しようとしたため、その使用を拒否するため行われたものであり、その目的の点で正当であり、クラブ主催のゴルフ大会を混乱に陥れることのみを目的として行われたものではなく、本件ストには、その正当性を失わしめる要素は見当らない。ストは正当な組合活動であるので、これを理由にする本件処分は不当労働行為である。

1302 就業上の差別
使用カートについて組合員キャディには手動カートを使用させ、組合を脱退して新会社に移籍したキャディには電動カートを使用させて就労させているが、新会社は、会社の一事業部門にすぎないものとみるのが相当であり、会社が電動カートを導入しない計画であることについて、合理的理由を認めるに足る疎明がないから、カート使用についての差別取扱いは不利益取扱である。

2621 個別的示唆・説得・非難等
定年制は、組合員、非組合員の別なく実施されたが、会社役員の定年制の実施をちらつかせ、組合脱退勧奨行為をした言辞は支配介入である。

2620 反組合的言動
会社が労働委員会へあっせん申請した直後にキャディの新会社移籍問題に関する組合の態度を非難するとともに良識ある行動をとるよう呼びかけた文書を組合員宅に郵送したことは支配介入である。

2620 反組合的言動
2901 組合無視
組合にいまだ提示していない新会社の賃金体系を記載した文書を組合員宅に郵送し、キャディルームに掲示したことは、組合員に対して、組合を経ずして賃金体系を知らしめたことは、組合を無視し、組合は不必要であるとの念を組合員に与えようとしたものと認められ、支配介入である。

2901 組合無視
組合が新会社へ移籍した者を組合から除名するという決定していたことを十分知っていた会社が組合を無視して組合員であるキャディを集め、社長が直接新会社への移籍を勧誘したことは支配介入である。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
審査中組合から脱退し、新会社に移籍したキャディが脱退するまでの間、組合員なるが故に賃金その他の不利益取扱がなされたことが明らかである以上、その間の不利益取扱を原状に回復させるべきものと判断する。

4907 合併・組織変更後の新企業体
申立人組合は、被申立人として会社の外新会社のみをも救済命令の名宛人とすべきであると主張するが、新会社は別法人ではあるが実質的には会社の一事業部門に過ぎないのであるから会社のみを救済命令の名宛人とする。

業種・規模  娯楽業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集60集323頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]