労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本硝子 
事件番号  神奈川地労委昭和48年(不)第3号 
神奈川地労委昭和48年(不)第5号 
申立人  総評化学同盟全硝労日本硝子川崎労働組合 
被申立人  日本硝子  株式会社 
命令年月日  昭和51年11月19日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、組合の分裂前後における職制らの組合脱退・別組合加入の署名活動を放任したこと及びチェック・オフの組合間差別をめぐる事件で、全従業員あて誓約文の配布・掲示、及び誠実履行並びに組合費相当額(年5分の割合による金員付加)の支払いを命じ、申立人組合を組織ぐるみ脱退させようとしたこと及び別組合に組合費を支払ったことについては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、下記声明文をB4版の大きさの白紙に読み易い大きさの活字で印刷し、本命令交付の日から1週間以内に川崎工場の従業員全員に配付するとともに、川崎工場の掲示板にこれを1週間掲示しなければならない。
           声      明
 昭和48年2月27日川崎労組から多数の組合員が脱退し、同日川崎支部が結成されましたが、この前後の時期に会社は、次に掲げる従業員の行為を放任していました。これは、日硝労連川崎労組に対する会社の不当労働行為であると神奈川県地方労働委員会により認定されました。
(1) 川崎労組の組合員に対し係、直主管、組長、組代などの職制が、その地位を利用した方法で、あるいは不利益取扱いを暗示するなどの方法により、川崎労組脱退、日硝労加入の署名活動などを行ったこと
(2) 課長らが上記職制らに休暇を与えるなどして署名活動等を行う便宜を与えたこと
(3) 課長が課員の川崎労組脱退、日硝労組加入に好意を示し、それに助勢したこと
(4) 横浜工場労務課係が川崎支部結成大会の会場を借り上げるなど、支部の結成に便宜を与えたこと
 会社としては、今後このような不当労働行為をくり返さないことを誓約します。
   昭和51年 月 日
     従業員の皆さんへ
             日本硝子株式会社
              社長 Y1
2 被申立人は、主文第1項の声明文の中で誓約したことを誠実に履行しなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の金額に年5分の割合による金員相当額を加算して支払わなければならない。
            記
(1) 昭和48年3月分組合費相当額 1,063,711円
(2) 昭和48年3月19日現在の申立人組合員から本命令交付の日に現に申立人組合員である者を除いた者について、昭和48年4月分組合費としてチェック・オフしたならば得られたであろう金員相当額
4 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  2500 別組合の結成・援助
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2623 脱退届け作成・提出強要
3410 職制上の地位にある者の言動
組合分裂前後の時期に組合員である下級職制らの脱退勧奨行為が一斉にかつ激しく行われ、しかも脱退届には必ず同職制らが署名し職場毎にとりまとめられていることからして、単なる組織崩潰作用とは見られず、また、同人らの行為はストのない労使関係をという会社の方針と軌を一にし、別組合の結成大会々場の使用手続が労務課の係により行われていること等を併せ考えると、会社の方針、意図するところに沿ってその地位を利用してなされたもので、会社はこれらを黙認、利用したものとして責任は免れず、これは支配介入である。

2501 親睦団体の利用
2610 職制上の地位にある者の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
組合脱退のための署名活動等が激しい時期に、いわゆる使用者の利益代表者に該当するY2課長が課員X1の組合脱退、別組合加入について組合委員長に了解を求めたり、また組合員X2に組合間差別を示唆する発言をした行為は、下級職制が署名活動を行っていることを支持し、それらの活動に便宜を与えて放任し、かつ助勢した支配介入である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
本件労使間の取り決めによれば、当月の賃金計算期間内に組合員であった者が当月分の組合費を支払うことは当然のことであり、組合規約上組合費の支払いが日割計算によりなされる規程もない等から、会社は、申立組合が3月分の組合費のチェック・オフを求めている以上これに応ずべきであったものと考えられ、会社の措置は、申立人組合の経済的圧迫を図り、他方別組合の立場を支援する形でなされたものと認めざるをえない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2901 組合無視
2月に申立組合を脱退し別組合に加入した従業員は組合分裂後2回目の4月分の賃金の計算期間中は申立組合員ではないことは明らかであり、会社がこれらの人を含め別組合組合員につきチェック・オフした組合費を別組合に支払ったこと自体は問題はないが、別組合組合員を除く残余の申立組合員についてチェック・オフすることは可能であったにもかかわらず何らの措置もとらず、また組合分裂後1回目の組合費について両組合に支払ってはならない旨の仮処分決定の前例を承知しながらいち早く別組合に組合費を支払ったこと等からみて、組合員名簿不提出を理由に申立人組合についてチェック・オフをしなかったことは別組合に対して好意的に便宜を図り、他方申立人組合に対して経済的圧迫を企図した支配介入である。

4603 その他
チェック・オフの組合間差別の救済方法として組合分裂後2回目の賃金支給日に遡って申立組合の組合員につき、チェック・オフすることを命ずることは適当ではないので会社に対して当時チェック・オフすればできたであろう組合費相当額と現に組合員である者の組合費相当額との差額を、この際一括申立組合に支払わせることとした。

2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
組合員である下級職制らが行った組合脱退を呼びかける署名活動等が会社の責に帰すべき支配介入とされた例。

4603 その他
申立組合分裂前後における職制の支配介入の言動やチェック・オフの不実施等に対する救済として、ポスト・ノーティス、チェック・オフをなすべきであった組合費相当額に年5分の割合による金員相当額を加算した額の支払いを命じた例。

業種・規模  化学工業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集60集182頁 
評釈等情報  労働判例 1977年 3月 1日  266号 56頁 

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