労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  三正電子 
事件番号  東京地労委昭和50年(不)第6号 
申立人  総評全国一般東京地本中部地域支部三正電子分会 
申立人  総評全国一般労働組合東京地方本部 
被申立人  三正電子  株式会社 
命令年月日  昭和51年10月19日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  分会結成を事前に察知した社長、職制らが従業員宅に電話をかけて組合結成の動向等について問いただし、分会結成後は、分会長に経歴詐称を理由に退職を慫慂した事件で、分会長が正しい履歴書を提出し直したときは、仕事を与えないなどの取扱い及び経歴詐称を理由に退職慫慂・解雇してはならない旨及び誓約文の交付を命じた。 
命令主文  1 被申立人三正電子株式会社は、申立人総評全国一般東京地本中部地域支部三正電子分会の分会長X1が、同人の正しい履歴書を被申立人会社あてに提出し直したときは、仕事を与えないなどの取扱いをしてはならず、「経歴詐称」を理由に退職を慫慂したり、解雇してはならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の文書を申立人両組合に交付しなければならない。
             記
             昭和  年  月  日
  総評全国一般労働組合東京地方本部
  中央執行委員長  X2 殿
  総評全国一般東京地本中部地域支部三正電子分会
  分  会  長  X1 殿
             三正電子株式会社
             代表取締役  Y1
 当社が行なった下記の行為は、不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。
 今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
              記
(1)昭和49年5月11日から12日にかけて、社長をはじめ職制が、貴組合の組合員の自宅に電話をかけ、貴分会結成の動きなどについて問いただしたこと。
(2)昭和49年12月5日、貴分会と予定していた年末一時金交渉の団交をとりやめ、同一時金の回答を一方的に全従業員の前に発表したこと。
(3)昭和50年1月以降、新規従業員の賃金を貴分会に通知しなかったこと。
(4)昭和50年1月21日、貴分会の分会長X1氏に対し、「経歴詐称」を理由に退職を慫慂し、同年3月以降X1氏に仕事を与えないなどの取扱いをしたこと。
(注、文書の年月日は、文書を交付した日を記載すること。) 
判定の要旨  0800 経歴詐称
分会長が経歴を詐称したことは信義則上許されないが、会社はこれ迄採用後の従業員の経歴を調査した例がなかったにもかかわらず、同じ頃他の2名の分会役員についても経歴調査を行なっていること等から、分会長退職を慫慂し仕事を奪った真の動機は、分会の中心人物である同人の会社における存在を嫌悪し経歴詐称に籍口してなした不当労働行為である。

1604 その他
2610 職制上の地位にある者の言動
2622 組合員調査
分会公然化直前に、社長をはじめ会社職制らが従業員宅に電話をして組合加入の有無を質した言動は、その時期、内容、電話のあった数日後に2名の者が分会を脱退した経過から推して明らかに分会結成の妨害ないし切崩し行為と認められる。

3103 労働協約締結をめぐる行為
従来新規採用者の賃金を含む労働条件を分会に通知していたのに、突然賃金についてのみ通知しなくなった動機が不審であり、組合に対する通知義務を定めた労働協約の運用に一貫性がみられず、このような会社の態度は、労働協約を一方的に運用して分会への重要な情報の提供を遮断し、分会の労働条件引上げ要求の検討に不便を与えるなどを意図した支配介入行為である。

4416 将来にわたる不作為を命じた例
4417 条件付命令・協議命令
分会長が前歴を正確に申告しなかったこと自体が、労働契約上の労使の信頼関係に亀裂をもたらしたことは疑いなく、これを放置したまま雇用関係を継続させることは相当でないと思料されるので、同人が正しい履歴書を会社に差し入れるときに限り、仕事を与えないなど不利益扱い、退職慫慂、解雇等をしてはならないものとした。

4825 その他
会社における職制とは係長以上の者を指し主任以下の者は一般従業員として取扱われていること、総務部経理課主任X3は会社経営上重要な業務に携っているものの単なる基礎資料の作成にとどまっていること、分会長たる同人が経理課主任であることにより組合、分会の自主性がそこなわれたとは認め難いこと等からすれば、同人はいわゆる使用者の利益代表者には該当しないから、組合及び分会は申立人適格を有する。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集60集49頁 
評釈等情報   

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