労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ユタカタクシー 
事件番号  大阪地労委昭和49年(不)第13号 
大阪地労委昭和49年(不)第28号 
大阪地労委昭和49年(不)第95号 
大阪地労委昭和50年(不)第30号 
申立人  ゆたかタクシー労働組合 
被申立人  ユタカタクシー 株式会社 
命令年月日  昭和51年 6月 5日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  社長の組合機関紙等に対する批判的発言、組合役員に対する辞任要求、賃金体系変更に関し会社提案書を一方的に配付、新組合結成援助、賃金改訂について不誠意団交、組合員使用の車両に対してのみ料金メーターの取り付け遅延、組合員対してのみインフレ手当不支給、会社慰安会から組合員のみを排除、組合掲示板の無断移動等をめぐる事件で、賃金改訂に関し誠意ある団交応諾、料金メーター取付け遅延による賃金減収文(年5分の割合による金員を含む)の支給、組合が労金から借入れたインフレ手当相当額の債務の肩替り、新組合の組合員らに支給したと同額の慰安会費用の支給及びポスト・ノーティスを命じ、慰謝料及び弁護費用等の経費支払いについては棄却した。 
命令主文  1. 被申立人は、昭和48、49両年度の賃金改訂に関する申立人との団体交渉を、誠意をもって行わなければならない。
2. 被申立人は、申立人組合員に対し、電子メーター取付けを遅らせたことによる賃金減収額(これに対する年5分の割合による金員を含む)を支払わなければならない。
3. 被申立人は、インフレ手当の支給にかえて、申立人組合員が大阪労働金庫に対して負っている債務を肩替りしなければならない。ただし、申立人組合員が当該債務を既に弁済しているときは、その弁済額を同組合員に対して支払わなければならない。
4. 被申立人は、申立人組合員に対して、1人当り15,000円を慰安会の費用として支払わなければならない。
5. 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に、下記の陳謝文を明瞭に墨書して被申立人会社内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
              記
                   年 月 日
   申立人代表者あて
                 被申立人代表者名
 当社は、当社が行った下記行為が、不当労働行為であることを認め、陳謝いたしますとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。
             記
 1. 点呼の場において、貴組合の大会議案書や機関紙の内容について批判的発言をし、また貴組合の賃金要求について一方的見解を述べたこと
 2. 遅番の者に対してのみ、賃金改訂についての会社提案書のコピーを配布し、また当社事務所前の通路に、当社、大淀交通株式会社及び第一交通株式会社の部分的な賃金比較表を掲出したこと。
 3. 一部の組合員を唆かして貴組合を脱退させ、新組合を結成させたこと
 4. 昭和48、49両年度の賃金改訂交渉を誠意をもって行わなかったこと
 5. 昭和49年度の賃金改訂の集団交渉に参加しなかったこと
 6. 貴組合員の使用する車両に対してのみ電子メーターの取付けを故意に遅らせたこと
 7. 貴組合員に対してのみ、昭和49年春の慰安会を開催しなかったこと
 8. 貴組合の掲示板を無断で移動させたこと
 以上、大阪府地方労働委員会の命令によって掲示します。
6. 申立人のその他の申立ては棄却する。 
判定の要旨  2244 特定条件の固執
 経営難その他合理的理由もないのに会社が組合の賃上げ要求に対して、組合員の多くの者が賃下げとなるような回答を行い、それに固執したことは、組合が受諾しないことを見越した上のこととみられるもので、このような会社の団交態度は解決に向けて誠実に努力しているとは認め難く、使用者の団交応諾義務を形骸化する、実質的な団交拒否である。

2221 集団・統一交渉
 会社は過去10年にわたり賃金改定の集団交渉に参加していたこと、48年賃金改定交渉では、社長が使用者側の交渉副委員長に就任したことなどからすると賃金改定交渉を集団交渉で行うということは、労使の慣行となっていたと判断され、この慣行は賃金体系が異質であっても影響をうけるものではなく、インフレ手当について集団交渉への参加を拒否したことは不当労働行為である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
 社長の発言内容は、使用者が本来容喙すべきではない組合大会の議案書を非難するものであること、団交継続中にあたかも組合が組合員の大部分が賃下げとなる要求をしているかのような印象を個々の組合員に与える言動を行ったこと、また、組合機関紙に対する発言は、労働組合にとって当然の認識ないし主張を非難するものであることなどから、いずれも支配介入にあたる。

3020 組合活動への制約
 組合掲示板は、労働組合の教宣活動等に重要な役割を果すものであり、会社が組合に無断で移動することは組合運営に対する不当な介入にあたること、組合の抗議の後、自らの不当な行為を隠ぺいする目的でペンキを塗ったものと判断されることなどからみて、本件会社の行為は会社にとって不都合な記事を掲出した掲示板を従業員の目から遠ざけるためになした支配介入である。

2500 別組合の結成・援助
 親組合が企画した慰安会に費用相当額を支出しながら、組合からの開催申込みに応じなかったことが不当労働行為とされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
 インフレ手当支給要求に対して賃金体系を他社と同一にするとの会社回答に応ずることを条件としたことが不当労働行為とされた例。

1302 就業上の差別
 組合員の車両への電子メーターの取り付けを非組合の車両と比べ1か年も遅らせたことが不当労働行為とされた例。

2500 別組合の結成・援助
 新組合の結成が、会社の介入によるものとされた例。

5008 その他
 慰謝料および申立てに要した弁護士費用等の経費の支払請求は、救済の限界を越えるものであるとして棄却された例。

5003 第二組合、その他の組織に関する請求
 新組合の解散、新組合との団交および便宜供与の禁止等を求める救済申立てが認められなかった例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集58集574頁 
評釈等情報   

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