概要情報
事件名 |
日本アイ・ビー・エム |
事件番号 |
神奈川地労委昭和44年(不)第7号
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申立人 |
X1 外11名 |
被申立人 |
日本アイ・ビー・エム 株式会社 |
命令年月日 |
昭和51年 3月19日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
組合員に対して集団的に昇給差別をした事件で、43年12月分賃金を委員会が特定した増額補正すべき金額を下まわらないよう増額補正し、その金額を基礎として以後の各昇給、一時金を再計算したうえで差額相当額(年5分相当額を加算)の支給、ポスト・ノーティスを命じ、謝罪文掲載用掲示板の大きさ等については棄却した。 |
命令主文 |
〔判定事項44〕 (1) 被申立人は、申立人等の昭和43年12月分賃金をそれぞれ下表の金額を下らないよう増額補正し、上記補正後の金額を基として以降の各昇給および一時金支給における申立人等の賃金を再計算した上その差額相当額をそれぞれの申立人に支払わなければならない。 (下表略) (2) 被申立人は、前項の差額相当額に対して、それぞれ年5分相当額を加算して支払わなければならない。 (3) 被申立人は縦1メートル以上、横2メートル以上の白色木板に下記のとおり明瞭に墨書し、被申立人の本社および藤沢工場各正面入口の見易い場所に毀損することなく14日間これを掲示しなければならない。 記 総評全国金属労働組合日本アイ・ビー・エム支部 組合員 X1外11名殿 会社の貴殿に対する賃金支給行為は、貴殿等の組合活動を嫌悪したことにより、その額が一般従業員の賃金に比して低額に失するものとして今般神奈川県労働委員会から労働組合法第7条に違反する不当労働行為である旨認定されました。 よってここに陳謝の意を表するとともに昭和43年12月時点の賃金を是正し今後かかる差別行為のないよう、充分に注意いたします。 昭和 年 月 日 日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役 Y1 (4) 申立人等のその余の救済申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1201 支払い遅延・給付差別
申立人等の能力および勤勉度は、少くとも標準以下ではないと認められるにもかかわらず、43年12月分賃金はいずれも同一条件者の平均賃金額に及ばないばかりか、昇給時ごとにその格差が拡大されていく傾向にあり、これは会社が組合及び組合員を敵視し全社的組織のもとに組合切崩しを計ったり、賃金体系の変更又は改訂の都度大量の組合脱退者の出た事実と表裏一体をなすもので組合員に対する同上時期の賃金支払行為はいずれも不当労働行為である。
4413 給与上の不利益の場合
組合活動等を理由として賃金差別を受けたとする申立人等が、その差別の累積を43年12月時点において除去することを求めているのであるから、その救済さるべき範囲は、同時期における同一条件者の平均賃金額と、申立人等が現実に支給された賃金額との差額であることは明らかである。
5200 除斥期間
会社が年1回行う昇給決定措置はいわば青写真作成行為であり、これを受けた毎月の賃金支払行為は、上記青写真を具体化する実行行為であって、その不当性を主張するについては、毎月の賃金支払行為のみを捕えて主張することも可能であると解され、たとえ上記決定措置が除斥期間を徒過したものとしても、本件救済を求めるのは43年12月の賃金支払行為であるから除斥期間適用の有無についての判断をするまでもなく審査の対象となる。
4415 賃金是正を命じた例
昇給差別に対して是正として、12月分賃金を労委が特定した金額を下らないよう増額補正し、補正後の金額を基として以降の各昇給および一時金支給における申立人らの賃金を再計算した上その差額相当額およびそれに年5分相当額を加算して支払うよう命じた例。
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業種・規模 |
電気機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集58集334頁 |
評釈等情報 |
労働経済判例速報 昭和51年 5月10日 912号(27巻12号) 9頁 
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