労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  油研工業 
事件番号  神奈川地労委昭和45年(不)第15号 
神奈川地労委昭和46年(不)第15号 
神奈川地労委昭和47年(不)第2号 
神奈川地労委昭和47年(不)第10号 
神奈川地労委昭和48年(不)第10号 
神奈川地労委昭和49年(不)第20号 
申立人  総評全国一般労働組合神奈川地方本部 
被申立人  油研工業株式会社 
命令年月日  昭和51年 1月 7日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  和解により再採用された分会員に結婚祝金差別、永年勤続表彰を行わず、組合掲示板と組合事務所の貸与拒否、工場長の分会幹部批判、係長による紙筒撤去と分会員に対する警告、作業表提出拒否をめぐる懲戒処分、抗議行動に対する賃金カット、自己申告書の提出拒否等を昇給、一時金査定でマイナス要因とし、従業員教育での組合対策及び思想教育と受講差別、枠外の補佐人の公用外出扱い拒否、分会員個々人の査定結果開示拒否、団交の組合間差別、昇進・昇格差別、昇給・一時金査定差別等をめぐる事件で、結婚祝金の差額相当額の支払い、表彰の実施、懲戒処分の撤回と減給相当額の支払い、自己申告強要の禁止、思想教育や受講差別の禁止、団交差別の禁止、昇進・昇格是正と手当相当額の支払い、昇給・一時金査定の是正と差額相当額の支払い、年5分相当額の加算及び誓約書の手交と掲示を命じ、組合事務所等の不貸与、賃金カット、紙筒撤去及び補佐人の公用外出拒否は棄却した。 
命令主文  1. 被申立人は、結婚祝金の差額相当額として、X1及びX2に対し各 5,000円、X3に対し20,000円並びにX4に対し10,000円をそれぞれ支払わなければならない。
2. 被申立人は、X4、X5、X2、X1及びX3に対して、昭和40年12月 7日以前の勤続年数を加算した勤続年数によって永年勤続表彰を行なわなければならない。
3. 被申立人は、勤務調査に関する作業表の提出拒否を理由とするX6ら4名に対する減給及びX7ら25名に対する譴責を徹回し、減給相当額を支払わなければならない。
4. 被申立人は、申立人組合員たる従業員に対して、業務命令をもって自己申告を強要してはならない。
5. 被申立人は、従業員教育において、労働組合対策及び関連する思想教育を行ってはならず、受講について申立人組合員を他の従業員と差別してはならない。
6. 被申立人は、申立組合との団体交渉に関し、回答の内容及び時期並びに交渉員について、他の労働組合と差別してはならない。
7. 被申立人は、昭和48年 6月 1日づけで、X8を係長に昇進させ、X6及びX7を技手に、X9ら10名を工手にそれぞれ昇格させ、X8に対しては同日以降係長手当相当額を支給しなければならない。
8. 被申立人は、昭和45年以降昭和49年までの各昇給及び昭和44年年末一時金から昭和49年夏季一時金までの各一時金における申立人組合員に対する考課をそれぞれ標準ランクに是正してその差額相当額を支払い、申立人組合員中この期間中に退職した者については、是正された賃金を基礎として退職金を算定のうえ差額相当額を支払わなければならない。
9. 第1項、第3項、第7項及び第8項における金員の支払に関しては、それぞれの支払われるべき日の翌日以降支払の日までの間について、年利5分相当額を加算して支払わなければならない。
10. 被申立人は、下記文言の誓約書を申立人に手交するとともに、すみやかに被申立人会社藤沢工場、同茅ヶ崎工場及び同袋田工場の各正門脇の見やすい場所に、それぞれ縦横1メートル以上の白紙に鮮明に墨書して、1週間以上にわたり破損することなく掲示しなければならない。
           誓  約  書
 油研工業株式会社は、和解協定の不履行、職務調査、自己申告の強行、団体交渉における他の労働組合との差別的取扱い、昇給・一時金・昇進・昇格及び社内教育等についての分会員の差別的取扱い等のほか、次の事項も貴組合及び貴分会員諸兄に対する不当労働行為であったことを認めて陳謝し、今後かかる行為を行わないことを誓約します。
 (1) 茅ヶ崎工場において、貴分会に掲示板を長期間貸与しなかったこと
 (2) 昭和46年12月28日に、袋田工場長が朝礼において、当時の貴組合湘南地域支部長であった前田分会員を中傷したこと
 (3) 昭和46年12月28日に、職務調査にからむ懲戒に対する抗議を理由として、X6、X8両分会員に対して警告書を発したこと
 (4) 昭和47年4月の貴組合のストライキに関連して、X10分会員に一方的に警告書を発したこと
    昭和 年 月 日
      総評全国一般労働組合神奈川地方本部
        執行委員長 X11 殿
      同 湘南地域支部油研工業分会
        分会長 X8 殿
              油研工業株式会社
               社長 Y1
11. 申立人のその余の申立ては棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
会社の考課のしくみが、評定者の主観に左右される可能性が大きいこと、残業の多寡が査定の要素とされ、また正当な組合活動も考課の対象とされていること、審査の全過程にみられる会社の反組合的姿勢等を考慮すれば、組合員らの考課査定を低位に査定したことは不利益扱いである。

2246 併存団体との関係
会社が、少数組合の分会に対しては、有額回答、上積回答をあとまわしにし、また、別組合との団交には副社長、専務をはじめ多数の者が出席しているのに分会との団交には1人の常務しか出席せず、さらに、昇給基準の提示をめぐって会社側交渉員に食言的行為があったと認められる以上、会社は、本件団交を誠意をもってしたものとは認められない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社が、別組合には直ちに掲示板を貸与しながら、分会に対しては、労働組合としての自主性のないこと、分会員名簿不提出等を理由に掲示板貸与を5年近く渋ったことは故なく分会を差別的に取扱った不当労働行為である。

0211 その他の組合活動
作業表の提出を拒否した行為が正当な組合活動の範囲内にあるにもかかわらず、作業表提出拒否者を処分し、幹部責任を追求したことが不当労働行為とされた例。

1204 スト・カット
作業表提出拒否者を懲戒処分に付したことに対する抗議が30分程度勤務時間に食い込んだとして賃金カットしたことが不当労働行為に該当しないとされた例。

1202 考課査定による差別
職務調査のための自己申告書の提出拒否を理由として昇給・年末一時金の査定でマイナス要因としたことが不当労働行為とされた例。

1200 降格・不昇格
分会役員を係長に、分会員ら12名を技手等に昇格させなかったことが不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
ストに際し各分会員の持ち場におかれた紙筒を撤去した下級職制に抗議した組合員に警告書を発したことが不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
作業表提出拒否に関する懲戒処分に抗議した分会幹部が上司に暴言をはいたとして警告書を発したことが不当労働行為とされた例。

1604 その他
和解により再採用された分会員に対して、結婚祝金、永年勤続表彰の取扱いを異にしたことが不当労働行為とされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
朝礼における工場長の組合支部長に関する発言が支配介入とされた例。

2613 使用者と取引関係者の言動
労使協調の指向、組合誹謗等を内容とする従業員教育を行ったことは、従業員教育に分会員が参加していなくても支配介入に当るとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
企業内に併存する両組合に組合事務所を貸与していない以上、分会の組合事務所貸与申入れを拒否しても直ちに支配介入とはならないとされた例。

3011 従業員教育
中堅社員教育に分会員のみを参加させなかったことが差別的取扱いとされた例。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
労委に出席する組合補佐人についてすでに認められた2名以外の者の公用外出扱いを拒否したことが、支配介入でないとされた例。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合が、分会員の査定結果の全容を知り得たものであるときは、会社が組合の査定結果開示要求を拒否しても、支配介入にはならないとされた例。

3605 他の処分で決着ずみのものを対象とした場合
スト中に分会の紙筒を撤去した下級職制を不問としながら、同人に抗議して口論した組合員にのみ警告書を発したことが、ストに参加したことに対する報復とみなされた例。

4413 給与上の不利益の場合
組合員に対する昇給・一時金差別について考課を標準ランクに是正し、その差額を支払うよう命じた例。

業種・規模  一般機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集58集47頁 
評釈等情報  労働判例 1976年 5月15日  246号 70頁 

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