労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  新和工業所 
事件番号  大阪地労委昭和49年(不)第96号 
大阪地労委昭和50年(不)第20号 
大阪地労委昭和50年(不)第44号 
申立人  総評全国金属労働組合新和工業支部 
被申立人  株式会社 新和工業所 
被申立人  Y2 
被申立人  破産者 株式会社 新和工業所 破産管財人 Y1 
命令年月日  昭和50年12月25日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社役員の組合委員長に対する暴行、工場長等による退職勧奨、年末一時金に関する団交拒否、企業閉鎖全員解雇等をめぐる事件で、破産会社代表取締役個人と破産管財人あてに、組合員5名に対する解雇がなかったものとして取扱い、年5分の割合による金員を含むバック・ペイ、団交応諾、陳謝文の手交を命じ、原職復帰については棄却した。 
命令主文  主        文
1 被申立人Y2及び同破産者株式会社新和工業所破産管財人Y1は、申立人組合員X1、X 2、X3、X4及びX5に対する昭和50年1月10日付けの解雇がそれぞれなかったものとし て取扱い、同日以降、同人らが受けるはずである賃金相当額(これに対する年5分の割合に よる金員を含む)を支払わなければならない。
2 被申立人Y2及び同破産者株式会社新和工業所破産管財人Y1は、速やかに申立人との間 で、昭和49年年末一時金に関する団体交渉を行わなければならない。
3 被申立人Y2及び同株式会社新和工業所は、速やかに下記陳謝文を申立人に手交しなけれ ばならない。
                  記
                             年   月   日
   申立人代表者あて
                           被申立人    Y2
                        被申立人会社  代表者名
  Y2及び当社は、貴組合に対し下記の行為を行いましたが、これらの行為は労働組合法第 7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝いた します。
                    記
 1 貴組合委員長X1氏を殴打したこと
 2 貴組合員X6氏を退職に追い込んだこと
 3 貴組合員X3氏、X4氏及びX5氏に対して退職を勧奨したこと
 4 大型エアー・ハンマーを搬出しようとしたこと
 5 昭和49年年末一時金に関する団体交渉を拒否したこと
 6 昭和49年11月26日以降、企業を閉鎖したこと
 7 昭和50年1月10日、貴組合員全員を解雇したこと
4 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1800 会社解散・事業閉鎖
3105 事業廃止、工場移転・売却
会社は経営悪化及び支部組合員らによる脅迫的発言があったこと等を理由に企業閉鎖したというが、会社の経営状態が悪化したとしても急速に企業閉鎖しなければならない程度のものとは認められず、前記発言があったとの疎明もなく、むしろ会社が組合を嫌悪している諸事情からみて、労使紛争を奇貨として組合員らを企業から排除しようとして企業閉鎖に及んだもので、不当労働行為と認められる。

1800 会社解散・事業閉鎖
3105 事業廃止、工場移転・売却
企業閉鎖しなければならない程の経営悪化が認められないこと等からみて会社の自己破産申立ては企業閉鎖に至る会社の一連の不当労働行為に鑑み、企業閉鎖を法律的にも終結させる意図をもって行ったものと考えられ、本件解雇は不当労働行為意思に基づく企業閉鎖を貫徹するために行われたと認められる。

2230 不穏当な態度
団交開催予定日前日の紛争は、代表取締役が支部組合員らの行動を誤認し、同人らの意図を確かめもせずに体当りしたことから生じたもので、支部組合員らが脅迫的言辞を用いたとの疎明もないので、これらを理由とする団交拒否には正当理由はない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
工場長Y3が、代表取締役Y2の命を受けて組合員らの家庭を訪問し、希望退職を勧奨したことは、勧奨の対象から非組合員が除外されていることや、会社が組合を嫌悪している事情等からみて、組合員を排除して非組合員のみで営業しようとしたものと考えざるを得ず、本件退職勧奨は支配介入にあたる。

2700 威嚇・暴力行為
組合結成直後、組合委員長X6が会社代表取締役Y2の問にこたえて、組合員であると述べたところ顔面を殴打されたことは、組合の結成を嫌悪してなされた支配介入である。

2621 個別的示唆・説得・非難等
2803 その他
組合結成の中心人物である組合員X6の退職は、同人の会社への債務を免除し、前例のない高額な退職金を支給していること、その他会社役員による同人に対する退職説得等からみると同人の従業員に対する影響力を恐れた会社が、活発な組合活動を開始しようとした同人を嫌悪して相当な好条件を与えることにより退職に追い込んだものと認めざるをえない。

3106 その他の行為
修理に出すと称して会社営業上の中心的機械である大型エアーハンマーを搬出しようとしたことは、同機械は修理の必要がなかったこと、組合に何ら事前の連絡がなかったこと、会社の組合嫌悪の事情等からみて、組合員を排除して非組合員のみで、かつ会社外において営業しようとしたもので、組合の弱体化を目的とした不当労働行為である。

4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
会社は破産を宣告され、債権者集会で営業廃止が決議されていること、代表取締役Y2は会社代表としても個人としても企業再開をもくろんでいるとの疎明もないことから、被申立人らに対し原職復帰を命ずることはできない。

4912 破産事業における使用者
破産会社代表取締役Y2は、形式的には破産会社と別人格であるが、会社の意思決定はすべて同人によってなされており、会社と同人の財産が継続的に混同していたことから会社は名ばかりの存在にすぎず、同人こそ組合員らの労働関係上の諸利益に直接的な影響力ないし支配力を及ぼす地位にあると考えられ、使用者たる適格を有するものと判断する。

業種・規模  鉄鋼業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集57集486頁 
評釈等情報   

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