労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  第一交通 
事件番号  大阪地労委昭和48年(不)第26号 
大阪地労委昭和48年(不)第52号 
申立人  第一交通労働組合 
被申立人  第一交通 株式会社 
被申立人  Y1 
命令年月日  昭和50年12月20日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社の事実上の経営者の朝礼、社内放送等における組合非難の言動、事前協議協定に反して、同人の支配下の労働者を多数入社させ、新労を結成せしめたこと、日曜就労の強行と異種の賃金体系等の実施、新車の配車差別、振替出勤の差止め、クーラーベルトの取りはずし、ステッカー撤去、組合使用の会議室を一方的に新労事務所に転用したこと等をめぐる事件で、組合員に新車を配車すること、クーラーベルト取りはずしによる不就労についてバック・ペイ、撤去したステッカーの代金相当額の支払い、従前どおり会議室を使用させること、ポスト・ノーティスを命じ、慰謝料、その他経費の支払請求については棄却した。 
命令主文  主        文
1 被申立人第一交通株式会社と同Y1(以下「被申立人ら」と総称する)は、新車の配車に 関する慣行を遵守し、申立人組合員に新車を配車しなければならない。
2 被申立人らは、昭和48年7月27日午前中、クーラーベルトの取りはずしによって就労でき なかった申立人組合員に対して、就労できなかったことによる賃金減収相当額(これに対す る年5分の割合による金員を含む)を支払わなければならない。
3 被申立人らは、申立人に対して、昭和48年5月27日撤去したステッカーの代金相当額を支 払わなければならない。
4 被申立人らは、申立人に被申立人会社会議室を従前どおり使用させなければならない。
5 被申立人らは、縦1m×横2mの白色木版に下記のとおり明瞭に墨書して、被申立人会社事 務所の出入口付近の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
                    記
                              年  月  日
   申立人組合代表者あて
                            第一交通株式会社
                             代表取締役  Y2
                                    Y1
  我々は、下記の行為を行いましたが、これらの行為は、労働組合法第7条第1号及び第3 号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに今後このような行為 を繰り返さないことを誓約します。
                  記
 1 従業員の採用に関し貴組合との協議を行わず、従業員の入社について貴組合に文書通知   しなかったこと
 2 朝礼、社内放送を用いて貴組合を非難し、貴組合員に威迫を加え、団体交渉を無視して   日曜就労を行う旨の掲示を行ったこと
 3 昭和48年5月27日、試採用者を日曜就労させたこと
 4 試採用者に対して日曜就労等に関する会社の方針を説明するなどして、新第一交通労働   組合を結成させたこと
 5 貴組合が使用していた会議室を、一方的に新第一交通労働組合に貸与したこと
 6 昭和48年5月27日、貴組合の貼付していたステッカーを撤去したこと
 7 貴組合員を新車の配車から排除したこと
 8 昭和48年7月23日、X1氏の振替出勤を認めなかったこと
 9 昭和48年7月27日、貴組合員の乗務する車両のクーラーベルトを取りはずしたこと
  以上、大阪府地方労働委員会の命令によって掲示します。
6 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0200 宣伝活動
0211 その他の組合活動
自主計画配車闘争の間、安全輸送確立カンパ車と記載したステッカーを車両に貼付して組合員が就労したことは、ステッカーの文言からみて顧客から就労中に資金カンパを求めた活動と判断されてもやむを得ず、本件組合員の行動は正当な組合活動の範囲を逸脱するものと考えるのが相当である。

1302 就業上の差別
2901 組合無視
3103 労働協約締結をめぐる行為
従来の慣行に反し新労組合員にのみ新車を配車し、組合員には配車しなかったことは、慣行によると新車はまず組合員に配車されねばならなかったこと、また取締役Y1等が苦情処理委員会での慣行を遵守する旨の回答あるいは協定を無視してなしたもので、本件措置は組合の存在を嫌悪して行われた不当労働行為である。

1600 休暇の取扱い
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
従前認められていた休日の振替出勤について営業部長が組合員X1からの申し出を社長の指示によるとして拒否したことには、合理的理由は全く見い出せないこと等からすると同人に対する本件措置は、組合の存在を嫌悪していたことに起因して行なわれた不当労働行為である。

1401 労務の受領拒否
3102 争議対抗手段
就労中の車両に顧客から資金カンパを求める趣旨のステッカーを貼付したことは不当な組合活動であるとして使用者がクーラーベルトを取りはずさせたことは使用者の言動、労使間の対立が激化していたこと等の事情を総合すると、組合の闘争自体に対抗してなされたものとは認められず、当時、組合が日曜就労に応じないなど会社の労務政策に頑強に反対して各種の闘争を展開しその結果水揚げが低かったことに対する報復措置としてなされた不当労働行為である。

2500 別組合の結成・援助
会社の事実上の経営者Y1が、事前協議協定を履行せずに自己の支配する労働者を多数入社させたことは、日曜就労に反対する組合の方針と対立する集団を育成し自己の立場を有利にせんとしてなしたものであり、これら試採用者による新労結成も自主的に結成したものと認め難く、本件Yの行為は支配介入行為である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2613 使用者と取引関係者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
事実上個人として組合員の使用者たる地位にある前取締役Y1等が朝礼、社内放送等において、交渉中の事項に関し一方的に告示等をしたり、近く組合員になる試採用者を集めて組合の方針に反する日曜出勤、賃金体系について会社の方針等を説明したことは、組合との団交を無視し、組合を非難し組合員に威迫を加え、また試採用者を組合から離反させることを意図して行われたもので、支配介入である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
過去10年来組合が使用し、会社もこれを認めていた会議室を、使用者が組合の反対を無視し、十分協議を尽くさず、一方的に新労に貸与したことは、組合の意思と会議室使用についての従前の経緯を無視した不当労働行為である。

2901 組合無視
3103 労働協約締結をめぐる行為
一般に使用者は、労働組合に所属しない従業員の労働条件の決定について労働組合の同意を得る必要はないが、本採用と同時にユ・シ協定に基づき組合に加入することになる従業員の場合、これらの者の労働条件を組合加入前に組合員と異なる態様に、一方的に変更することはできず、日曜就労に関し団交が予定されていた時期に、また組合がそれに反対する旨通告するやいなや直ちに試採用者を日曜就労させたことは、新たな労働条件を設定することにより使用者の方針を貫徹するとともに試採用者と組合員とを対立させ、もって組合の弱体化をねらった支配介入である。

3020 組合活動への制約
非組合員が就労する際に組合ステッカーを全車両から撤去したことは、撤去が使用者と非組合員との会合終了直後に同人らの乗務車両のみでなく全車両について行われたこと、当時の激しく対立していた労使関係等を併せ考えると、ステッカーの撤去は使用者の指示によるとみられ、またステッカー貼付を一旦了承しておきながら特段の理由もなく突如として撤去したことは許されず、本件は組合の存在を嫌悪して行った支配介入である。

4413 給与上の不利益の場合
クーラーベルト取りはずしによる就労不能に係る賃金減収相当額に年5分の割合による金員相当額を付加して命じることが相当である。

4916 企業に影響力を持つ者
前取締役Y1が自分の意思のままに自由に会社全般を運営している諸事情その他を総合すると会社は法律的には株式会社である独立の企業体として存在し、また更生会社として法律上の制約を受けているとしても会社の実態は同人の個人事業であると認めざるをえず、同人は事実上個人として組合員の使用者たる地位にある者と判断される。

5003 第二組合、その他の組織に関する請求
5005 損害賠償の請求
組合は、新労の解散と新労組合員が申立人組合に加入するはずであったとしてその加入金と組合費の支払いを請求するが、結成後の新労の自主性の存否はともかく、現に存続している以上その解散を命ずることはできず、また加入金と組合費は組合加入者が負担すべきであって使用者が申立組合加入を妨害、阻止した場合であっても、使用者にこれらの支払いを命ずることはできない。

5003 第二組合、その他の組織に関する請求
使用者が新労組合員について異種の労働条件を確立したことに対し、組合は会社の労働条件を協定締結時どおり一本化することを請求するが、新労結成後は会社には組合と新労が併存しているのであり、それぞれの労働組合がそれぞれ異なる労働条件を決定することはやむを得ないことであるから組合の請求は認められない。

5005 損害賠償の請求
組合員が新車割当から排除され乗務能率が低下したことに伴う損害額の支払いを請求するが、慰謝料の支払い請求は不当労働行為制度の趣旨になじまず、また現に旧車手当が支給されている事情をも勘案すると、組合の請求は容認できない。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集57集444頁 
評釈等情報   

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