労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ワールド印刷 
事件番号  大阪地労委昭和49年(不)第79号 
大阪地労委昭和49年(不)第83号 
大阪地労委昭和49年(不)第111号 
大阪地労委昭和50年(不)第46号 
申立人  日本労働組合総評議会大阪地域合同労働組合 
被申立人  ワールド印刷 株式会社 清算人Y1 
命令年月日  昭和50年12月15日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  出勤成績不良を理由に組合書記長X1に対し、退職勧奨・解雇および同人担当の取引先会社倒産に伴なう損害賠償を同人に請求したこと並びに不況を理由に希望退職募集、会社解散、全員解雇した事件で、清算人あて解雇から本件命令書受領の日までの間のバック・ペイ(年5分の割合による金員を含む)、ポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  主         文
1 被申立人は、X1に対する昭和49年10月31日付け及び昭和50年4月30日付け解雇がそれぞ れなかったものとして取扱い、昭和49年10月31日以降本命令書受領の日までに同人が受ける はずであった賃金相当額(ただし、既に支払った金額を除き、その未払金に対する年5分の 割合による金員を含む)を支払わなければならない。
2 被申立人は、X2、X3、X4及びX5に対する昭和50年4月30日付け解雇がなかったも のとして取扱い、解雇の日以降本命令書受領の日までに同人らが受けるはずであった賃金相 当額(ただし、既に支払った金額を除き、その未払金に対する年5分の割合による金員を含 む)を支払わなければならない。
3 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して会社 正面玄関付近に10日間掲示しなければならない。
            記
                 年   月   日
 申立人代表者あて
                  被申立人代表者名
  当社の下記の行為は、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である ことを認め、ここに陳謝いたします。
                記
 1 貴組合ワールド印刷分会書記長X1氏に対して、退職を迫り、昭和49年10月31日付で    同氏を解雇し、更には損害賠償請求を行ったこと。
 2 貴組合ワールド印刷分会員各位に対し「『希望退職者』募集について」と題する文書を   送付したこと。
 3 貴組合ワールド印刷分会員各位を昭和50年4月30日付けで解雇したこと。
 4 昭和50年5月13日に会社を解散したこと。
 以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。
4 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0500 勤務成績不良
1301 出向
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会書記長X1の勤務時間は営業担当者という職務の性質上、入社以来相当の自由が認められており、職務変更のないまま、突如同人の勤務時間を就業規則どおりに変更した会社の措置は不当というほかなく、同人に対して出勤成績不良を理由に執拗に退職を勧奨し解雇したことは分会の中心的存在であった同人を企業から排除しようとしてなした不当労働行為である。

1800 会社解散・事業閉鎖
約束手形の支払期日の延期に応じても良かったとする債権者の言動などからすると、少なくともこの時点で倒産が不可避であったとは考えられず、一方、分会結成以来の労使の激しい対立的関係などを勘案すると本件倒産は、事業経営の行き詰まりのためではなく社長が組合との交渉を嫌悪するあまり事業継続の意思を放棄した結果とみるのが相当で、本件分会員全員に対する解雇および会社解散は不当労働行為といわざるを得ない。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社は希望退職募集を行なう一方で、さして必要と思われない警備員を2名採用していること、当時従業員の大多数が分会員であったことおよび分会結成以来の対立的な労使関係をも併せ考えれば本件希望退職募集は分会の弱体化を企図してなした不当労働行為である。

0500 勤務成績不良
1602 精神・生活上の不利益
取引先会社の倒産に伴なう損害賠償を担当者であった分会書記長X1に請求したことは、通常考えられないことであり、そうすべき特段の事情も認められないことから、同人へのいやがらせであって不当労働行為といわざるを得ない。

4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
4408 バックペイが認められなかった例
会社解散、全員解雇がたとえ不当労働行為意思から出たものであっても、経営者が事業経営を自ら放棄し、いかなる形にせよ事業の再開を目論んでいることを裏付ける証拠の見当らない本件の如き場合は、もはや原職復帰を命ずることは妥当でなく、また、バック・ペイについても、解雇から命令書受領の日までの間に留めるほかはない。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集57集369頁 
評釈等情報   

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