労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  住友重機械工業 
事件番号  東京地労委昭和46年(不)第53号 
東京地労委昭和46年(不)第61号 
東京地労委昭和47年(不)第105号 
申立人  日本労働組合総評議会全日本造船機械労働組合浦賀分会 外個人18名 
申立人  日本労働組合総評議会全日本造船機械労働組合 
被申立人  住友重機械工業 株式会社 
命令年月日  昭和50年10月21日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  監督者研修での反組合的教育、外部研修に分会員派遣、執行部批判派の署名運動援助、研修終了後の同期的グループ等の結成援助、執行部批判派グループ結成に際し、便宜供与、分裂後新組合のためのチェック・オフ実施、執行部派と執行部批判派間の定昇査定差別、組合闘争方針批判のビラ配布等をめぐる事件で、組合について批判中傷の禁止、定昇の再査定、バック・ペイ、組合を中傷するビラ配布の禁止及びポスト・ノーティスを命じ、チェック・オフについては棄却した。 
命令主文  主          文
1 被申立人住友重機械工業株式会社は、今後従業員に対する教育、研修等に際して、その方 法内容等を通じて、申立人日本労働組合総評議会全日本造船機械労働組合並びに同浦賀分会 の組織運営等について批判中傷してはならない。
2
 (1)被申立人は申立人X1ら18名に対して昭和46年4月1日の定期昇給についてなした考課査   定を取消し、民連系代議員全員と比較して不利益に差別しないよう再査定しなければなら   ない。この再査定に当っては下記基準による点数を下回ってはならない。
  (ア) 再査定によって申立人X1ら全員に与える昇給点数合計と昭和46年度の民連系代議員     全員に与えた昇給点の合計点数との割合は、前者および後者の昭和43年より同45年ま     での3年間の昇給点合計点数の割合と同じとする(同年度中、点数制によらない年度     がある場合は、当該年度の成績査定区分を点数に換算して計算する。以下同じ)。
  (イ) 再査定により申立人X1ら各人に与える昇給点数は、(ア) の基準により申立人X1     ら全員に与えられる昭和46年の合計点数を、各人が前同3年間に取得した昇給点合計     点数に応じて配分すること。但し、本命令において取消を命じた昭和46年度の昇給点     を下回ってはならない。
 (2)被申立人は、上記再査定の結果、申立人X1らに対して、昭和46年度中に支払った賃金   (時間外手当、休日手当などの手当および一時金を含む。)についての差額を支払わなけ  ればならない。
 (3)被申立人は定期昇給の査定について、申立人分会員であることを理由に、今後、被申立人   会社の他の従業員と差別してはならない。
3 被申立人は、申立人両組合の組織活動について批判中傷するような内容のビラを配布して はならない。
4 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に縦55cm×横160cm(新聞紙4頁大)の大き さの白紙に下記の内容を楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の本社、浦賀造船所、川間製 造所、追浜造船所の正面玄関の従業員の見やすい場所に掲示しなければならない。
 その掲示期間は10日間とする。
                    記
                          昭和  年  月  日
   日本労働組合総評議会
    全日本造船機械労働組合
     中央執行委員長  X2 殿
   日本労働組合総評議会
    全日本造船機械労働組合浦賀分会
     執行委員長  X3 殿
                       住友重機械工業株式会社
                        代表取締役  Y1
  当社は、貴組合及び貴分会に対し、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は不当労 働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。今後このような行為を繰り 返さないよう留意致します。
                    記
 (1)昭和45年2月から同46年8月までの間に行なった各種の研修に際して、貴組合および貴分   会の組織、活動を批判、中傷する研修を行なったこと。
 (2)貴組合の「浦賀民主化総連合を解散せよ」との指示の撤回を求めるために、同総連合に所   属する者が昭和46年8月上旬から中旬の間において行なった署名運動を援助したこと。
 (3)監督者研修に際し、分会の姿勢をあらためさせるために同期生グループの結成を勧奨した   こと。
 (4)昭和45年9月11日の職長会の結成並びに同46年4月21日の浦賀民主化運動総連合の結成に   際して、結成場所の設営に便宜を与えたこと。
 (5)昭和46年度昇給の査定にあたり、貴組合の活動方針を支持する分会員を不利益に差別した   こと。
 (6)昭和46年4月27日に貴分会を批評するビラを配布したこと。
5 被申立人は第2項による再査定の結果を、当委員会に速かに書面で報告しなければならな い。その際、民連系代議員37名全員についての昭和43年度から同45年度までの各年度の昇給 点数表(またはこれに代る考課査定区分)を添付しなければならない。
6 その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
5121 挙証・採証
46年度の定期昇給において分会主流派代議員が批判派代議員より低く査定されていることが外形上存在する以上その合理的理由は会社において疎明すべきで、その疎明を欠く本件については会社の差別査定に基づいたものと推認するほかはない。

2501 親睦団体の利用
監督者研修終了時に次々に同期的グループが結成されたのは人事課員等の勧奨によるもので自然発生的なものとは認められず、また、研修内容実行のための職長会結成会場に会社が密接な関係にある場所が使用され、さらに、執行部批判派グループの組織の結成会場借上げが会社名をもってなされていること等は、会社の助成、援助によるものでいずれも不当労働行である。

2620 反組合的言動
46年春闘において会社が従業員に配布したビラは、話し合いによる解決をとの会社の立場を説明したものに過ぎず、分会の闘争方針を批判したとまではいい難く支配介入にはならない。一方、45年春闘時におけるビラは、「組合の闘争主義を排す」など明らかに分会の闘争方針を批判しており、分会内民主化グループの配布したビラと同内容であることなどから、分会活動に対する介入である。

2620 反組合的言動
45年春闘時における会社のビラの内容は、明らかに分会の闘争方針を批判しており、分会内民主化グループの配布したビラと同内容であることなどから、分会活動に対する介入である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合分裂により新旧両組合にチェック・オフをなす義務がある場合、会社がその対象となる組合員の所属を確定するため所属組合員の氏名を明らかにするよう要求するのは当然の措置であり、また新労が一括して所属組合員の脱退届を旧労に郵送したとしても、その意思が正確に表示・伝達されている限り有効な届出といえ、分会が分会員氏名を提出しないため、新労提出資料に基づいてチェック・オフしたことは正当な取扱いである。

3011 従業員教育
生産性向上の名目でなされた監督者研修は、配布した文書、資料、講義内容、討議の方法と内容等からみて、上部組合並びに分会の活動方針等を暗に批判し、その体質改善や別組織への加入を期待してなされたものであり、分会内部の対立抗争が激化している時期になされたこと、会社はそれを充分承知していたこと、同研修を契機とした分会内批判勢力が台頭し新労結成に至ったことなどからみて支配介入である。

3011 従業員教育
会社は、反組合的色彩の強い外部研修会に分会の反対申入れに同意しておきながら、分会執行部批判派と目される者を、参加趣旨を明らかにして、参加、派遣したことは、分会の組織、運営に対する支配介入である。

3106 その他の行為
執行部批判派グループに対し分会および上部組合が行なった「解散指示」に対する撤回署名活動に際し、署名を働きかけた課長の行為は会社側利益代表者の行為として、また、組合員であると同時に会社の管理監督的立場にある係長、班長の行為は、就業時間中あるいは会議の席を利用してなされたもので、いずれも会社の責に任ずべき支配介入である。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
X4ら2名は申立後退職したが申立時に申立人組合の代議員であり、46年度定昇において不利益を受けていたのであるから、当然救済の利益を受けるべきである。

4415 賃金是正を命じた例
定期昇給の差別査定の救済として申立人らの再査定結果の昇給合計点と批判派代議員の今回取得した昇給合計点との割合を、組合が異議がない過去3年間の両グループの昇給合計点の割合と同じくし、つぎに申立人各人には過去3年間の同様割合により分配すること、但し、既になした査定を下回らないこと、再査定の結果を地労委に報告することを命ずる。

業種・規模  輸送用機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集57集94頁 
評釈等情報  労働判例 昭和51年3月1日  241号 63頁 
中央労働時報 西川美数 昭和51年12月10日  596号 17頁 

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