概要情報
事件名 |
常磐車輛 |
事件番号 |
神奈川地労委昭和47年(不)第7号
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申立人 |
常磐車輛労働組合 |
被申立人 |
常磐工業 株式会社 |
被申立人 |
サンコー工業 株式会社 |
被申立人 |
常磐車輛株式会社 代表清算人 Y1 |
命令年月日 |
昭和50年10月 3日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
T工業が新工場に組合員のみを移動させたのち、旧工場にS社を設立し、さらに新工場の組立部門を独立させてT車輛を新設し、組合員全員をこれに移動させたうえ、このT車輛を解散、全員解雇した事件で、3社に対し解雇撤回、原職復帰、バック・ペイおよびポスト・ノーティスを命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人常磐車輛株式会社、サンコー工業株式会社、常磐工業株式会社は、申立人常磐車 輛労働組合の組合員に対してなした昭和47年2月26日付解雇を撤回しなければならない。 2 被申立人らは、常磐車輛労働組合の組合員全員をサンコー工業株式会社相模原工場の原職 相当職に復帰させるとともに、昭和47年2月27日から職場復帰に至るまでの間組合員らが受 けるべきはずの諸給与相当額を支払わなければならない。 3 被申立人らは、本命令交付後1週間以内に下記誓約書を申立人組合に手交するとともに 縦・横1m以上の白紙に鮮明に墨書し、サンコー工業株式会社相模原工場構内で従業員の見易 い場所に1週間にわたり破損することなく掲示しなければならない。 誓 約 書 常磐車輛(株)の昭和47年2月26日付貴組合の組合員全員に対する解雇常磐車輛(株)、 サンコー工業(株)、常磐工業(株)の3社が、実は同一の企業であり、貴組合を壊滅させ るため、実質的に同一企業の一部門にすぎない常磐車輛(株)を解散させることによりなさ れたもので、神奈川県地方労働委員会の認定したとおり不当労働行為でありました。 会社は、ここに組合員全員を今後とも従業員として処遇すると共に貴組合と組合員各位に 対し深く陳謝致します。 なお、今後再びかかる行為を一切行わないことを誓約致します。 昭和 年 月 日 常磐車輛労働組合 執行委員長 X1 殿 常磐車輛株式会社 代表清算人 Y1
サンコー工業株式会社 代表取締役 Y2 常磐工業株式会社 代表取締役 Y3 |
判定の要旨 |
1800 会社解散・事業閉鎖
S工場の組合部門を独立させ、T車輛を新設して組合員全員を移動させたのち、経営不振を理由に同社を解散、全員解雇したことは、新社設立の必要性が乏しいこと、製罐技術に熟達している組合員らを短期的に組立等の技術を修得させて、新設会社に移動させたこと、S工場の製罐技術不足が問題となるやわざわざ、S工業へ応援を依頼したことなどから、T車輛の経営不振は会社自らの手で導いた疑いがあり、これら一連の行為は計画的に組合壊滅を企図した不当労働行為である。
3105 事業廃止、工場移転・売却
T工業が新工場に組合員全員を移したのち、旧工場をS工業として新設したことからすれば、組合員を新工場に移すのは旧工場を閉鎖し新工場に重点を移行するためとの会社のあげた理由は肯けず、当時移動を嫌った組合員が多数退職したことなどからみて、新工場を作った真のねらいは、当時活発化した組合運動を嫌った結果であり、組合の弱体化を意図した不当労働行為である。
2625 非組合員化の言動
組合を脱退した一部従業員により設立されたS製作所と下請契約を結び、同人らを社外工として組合員と同一作業場内で作業させ、かつ、脱退者らの行為を称讃したことは組合脱退を奨励するものであり、しかも、組合結成以来本工を採用せずに、社外工のみに依存したり、社外工となることを奨励した会社の態度は、組合を嫌悪し、組合組織壊滅を意図してなされた不当労働行為である。
4911 解散事業における使用者
被申立人であるT車輛ら3社は、役員、従業員の兼任、資本、給料支払い、事業内容、取引先、経理処理、本社所在地などの面からみて形式上はともかく実質的には同一企業と認めざるを得ず、本件一連の不当労働行為も3社一体となって工作したことがうかがわれるので、T車輛の解散、全員解雇は、3社から全組合員を排除しようとする不当労働行為と認めざるを得ず、T工業、S工業は労組法上の「使用者」としてその責任は免れえない。
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業種・規模 |
一般機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集57集39頁 |
評釈等情報 |
労働判例 昭和51年2月1日 239号 72頁 
労働法律旬報 三浦守正 昭和50年11月25日 893号 68頁 
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