労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大久保養鶏場 
事件番号  島根地労委昭和49年(不)第2号 
申立人  大久保養鶏労働組合 
被申立人  有限会社 大久保養鶏場 
命令年月日  昭和50年 7月26日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  組合を脱退した副委員長に組合再加入を説得した執行委員に対し及び時間中のビラ配布の行為に対して勧告書を発し、又、組合活動のための休憩室の利用を禁じ、労災休業中の副委員長を農業に従事したことを理由に出勤停止処分に付し、これについての団交を拒否し、さらに出張拒否を理由に執行委員に対し出張所長を解任したこと等をめぐる事件で、出勤停止処分の取消し、バック・ペイ、出張所長解任取消し、原職復帰、バック・ペイ及び誓約書の交付を命じ、組合副委員長の組合脱退及びポスト・ノーティスについては棄却した。 
命令主文  主     文
1 被申立人は、申立人所属のX1に対して行った昭和49年3月6日付の出勤停止5日の懲戒 処分を取り消し、同処分がなかったならば同人が受けるはずであった諸給与相当額を支払わ なければならない。
2 被申立人は、申立人所属のX2に対して行った昭和49年4月1日付出張所長を免ずる旨の 辞令を取り消し、同人を原職に復帰させ、かつ、昭和49年4月1日から原職復帰までの間に 同人が出張所長であったならば受けるはずであった諸給与相当額を支払わなければならな  い。
3 被申立人は、本命令書交付の日から7日以内に申立人に対して、下記文面の誓約書を交付 しなければならない。
                 記
              誓  約  書
  有限会社大久保養鶏場は、大久保養鶏労働組合の正当な組合活動に対して勧告書を発し、 また、組合活動のための休憩室利用を拒否し、あるいは、X1の懲戒処分に関する団体交  渉を拒否するなどによって、大久保養鶏労働組合の団結権を侵害し自主的な組合活動に支配 介入したことの非を認め、今後はこの種の行為を一切行わないことを誓約する。
  上記、島根県地方労働委員会の命令により表明する。
                               昭和 年 月 日
                         有限会社大久保養鶏場
                          代表取締役社長 Y1 印
   大久保養鶏労働組合
    執行委員長 X1 殿
4 申立人のその余の申し立てを棄却する。 
判定の要旨  1400 制裁処分
労働災害で休業中の組合執行委員長代行が自宅で農作業をしたとして十分な実情調査を行うことなく再三にわたり始末書の提出を求め、同人の提出拒否が会社の恩情を無視した誠意のない回答であるとして、出勤停止処分に付したことは当時の諸事情からみて当を得ず、同人の存在を嫌悪してなした不利益扱いである。

1603 組合活動上の不利益
春闘時において、組合教宜部長X2に約2カ月間の出張を命じ、X2がこれを拒否したとして出張所長を免じたことは、その出張が組合活動に多大な影響をおよぼすであろうと推認でき、たとえ出張の必要性があったとしても、事前協議協定にもとづく組合との話合いをしなかったものであることからみれば、不利益扱いである。

2300 賃金・労働時間
2301 人事事項
組合執行委員長代行に対する出勤停止処分は労働条件変更に関することで、組合が処分の正当性を質すため団交を要求することは当然であり会社が単に人事管理の問題であると回答するのみで団交に応じないのは、団交拒否の正当理由とは認められない。

2620 反組合的言動
3500 処分の時期
組合を脱退した副執行委員長X1に対し組合再加入を説得した執行委員あてに勧告書を発したことは、その内容に威嚇的言辞をもちいていること、組合結成直後の不安定な労使関係のもとで組合員数が減少傾向にあるときになされたこと等を考え合わせると、X1の組合脱退の動きを機として組合活動を萎縮させる意図の下になしたものと推認され、組合活動に対する支配介入行為である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
3020 組合活動への制約
組合活動に関する協定書で職場集会のために特定の場所を指定されていた事実は認められず、また、組合集会以外には自由に休憩室の利用を認めながら、施設管理上特別の事情も存しないのに、休憩時間中の職場集会に対してのみ休憩室の使用を禁止したことは、会社の施設管理権に籍口してなした支配介入行為である。

3020 組合活動への制約
3500 処分の時期
組合副執行委員長X1が輸送部運転手に教宣文を配布した行為は、勤務時間中の組合活動といえなくもないが会社業務運営になんら支障を与えるものでなく、事業所が広範囲におよぶ状況からして、同人の行ったような方法での教宣文配布さえも禁止することは、実質的には組合の団結活動を否定するに等しく、会社が同人に勧告書を発しこれを禁止しようとした行為は、支配介入行為である。

2621 個別的示唆・説得・非難等
組合副委員長X1の組合脱退は、本人の意思に基づくものであり、会社の脱退工作によるものと断ずることはできず、本件脱退が組合内部の団結力に影響を与えることがあったとしても、前記判断に影響を与えるものではない。

業種・規模  農業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集56集158頁 
評釈等情報   

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