事件名 |
日本トムソン |
事件番号 |
神奈川地労委昭和49年(不)第3号
神奈川地労委昭和49年(不)第9号
神奈川地労委昭和50年(不)第2号
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申立人 |
総評全国一般労働組合神奈川地方本部 |
被申立人 |
日本トムソン 株式会社 |
命令年月日 |
昭和50年 7月25日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
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事件概要 |
分会長に対し配転を命じこれを拒否したことを理由に寮待機、再配転
を命じ、この間欠勤扱いとし、配転に関する団交を拒否したこと、一時金に関する回答について組合間で差別し、ストに対する賃
金カットの対象の拡大および一時金からの賃金カット等をめぐる事件で、配転命令の撤回・原職復帰・一時金の差額相当額の支払
い、同人に与えられるべき年次有給休暇の累計日数の付与、調整給、資格および役職手当からのカット分の支払い及び誓約書の手
交を命じ、精皆勤手当及び一時金からのカットについては棄却した。 |
命令主文 |
主 文
1 被申立人は、申立人の組合員X1に対して昭和48年4月1日以降、次の措置を含め同日付 の配置転換命令がなかったと同
様の状態に回復させなければならない。
(1)原職又は原職相当職に復帰させること。
(2)昭和48年4月1日から同年12月20日までの間同人が通常の成績で勤務したものとして取 扱い、昭和48年夏季一時金及び同年年末一時金の差額相当額を支払
い、昭和48年11月21 日以降同人に与えられるべき年次有給休暇の累計を与えること。
2 被申立人は、組合の実施した昭和48年5月18日、同月19日、同月22日同月23日、昭和49年 3月28日、同年4
月5日、同月9日及び同月18日のスト関し、これらに参加した組合員らに 対し、当月の賃金から控除した調整給、資格手当及
び役付手当にかかる部分相当額を支払わ なければならない。
3 被申立人は、下記文言の誓約書を本命令交付後7日以内に申立人に手交しなければならな い。
誓 約 書
当社は、貴組合傘下の湘南地域支部日本トムソン鎌倉分会に対して、X2分会長に対する 配転、寮待機、再配転とその間の
欠勤扱い、X1分会長の配転撤回要求に関する団体交渉拒 否、昭和48年夏季一時金並びに同年年末一時金の交渉経過において
他の労働組合に先に回答 したこと、ストに伴う賃金控除を一方的かつ報復的に実施したこと等が不当労働行為であっ たことを
認め、今後このような行為を一切しないことを誓約します。
昭和 年 月 日
総評全国一般労働組合神奈川地方本部
執行委員長 X3 殿
同湘南地域支部日本トムソン鎌倉分会
分 会 長 X2 殿
日本トムソン株式会社
社長 Y1 印
4 申立人のその余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
0110 結成行為の範囲とされた例
非公然分会の分会長X2が親睦会役員に就任以降、同会は賃金その他の労働条件につき要求、交渉したり、リボン着用、強制残業
反対斗争を実施しようとするなど労働組合的色彩が強まり、会社が同会の活動を嫌悪していたことは容易に推認し得るところであ
り、本件発令前の同人の活動は、分会公然化後の組合活動との連続性が認められ労組法上の組合活動もしくは組合結成活動と評価
される。
1203 その他給与決定上の取扱い
組合活動家X2に対する寮待機命令は不当労働行為と認められるから、その期間をすべて欠勤扱いとしたことによる反射的効果と
して年次有給休暇を与えない措置および夏季一時金並びに年末一時金の減額支給の措置はいずれも不当労働行為に該当するものと
して原状回復を命ぜざるを得ない。
1204 スト・カット
通常の欠勤については本給のみについてカットしながら、ストについては調整給、資格手当及び役付手当についてもあわせてカッ
トしたことは、通常の欠勤を優遇することにより、ストの場合は不利益に扱うということに帰着し、明らかに組合活動に対する報
復的措置とみとめられ、不当労働行為である。
1204 スト・カット
分会のストに応じて当月の精皆勤手当と当期の一時金を通常欠勤並みに控除したことは、正当な権利行使たるストといえども、現
に就労しなかった事実を通常の欠勤等と同様に機械的に取扱ったに過ぎず、それを越えた不利益取扱いがなければ、労使間の協議
抜きで実施した会社の措置は好ましくないが、これらの控除をもって不当労働行為とはいえない。
1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3900 「不利益の範囲」
労組的色彩が強まった親睦会の役員で非公然の分会長であるX2を工場から、東京本社へ配転したことには業務上の必要性、人事
交流の必要性、他の従業員との非代替性、緊急性は認められず、その真の理由は活発な組合活動家である同人を工場から排除し、
工場内の組合活動を抑圧しようとする意図にあったと認められ、それがたとえ栄転であったとしても不当労働行為の責を免れるこ
とはできない。
1300 転勤・配転
1401 労務の受領拒否
組合活動家X2が配転命令について諾否を明確にしなかったことを理由に寮待機、さらに再配転を命じたことは、同人が団交の結
論に従うと表明し組合も団交を申入れているにもかかわらずこれに応ぜず、後任が補充されたあとも寮待機のまま放置したこと、
再配転についても理由が不明確であることからみて、同人の組合活動を抑制せんとしてなした当初の配転に連なる不当労働行為で
ある。
2246 併存団体との関係
2250 未妥結・打切り・決裂
会社内に適当な団交場所がないことから工場外の会場を借りて行なった結果、会場の都合で交渉が打切られるなど多少の制約が
あってもやむを得ず、また、別組合も同様の取扱いであれば、あえて不当労働行為と断ずることは困難である。夏季一時金、年末
一時金等会社に存在する複数組合共通の交渉事項に関して、分会公然化以来2度とも分会に対する回答が遅れたのは意図的に別組
合と差別して行なわれたものと推認されてもやむを得ず、不当労働行為に該当する。
2301 人事事項
会社は組合活動家X2に対する配転撤回問題は、団交には馴染まないので苦情処理委員会で処理したい旨の提案を組合に拒否され
たと主張するが勤務地の変更という組合員の重大な労働条件の変更に関しては団交事項たりうることは当然であり、しかも、必要
性の高い本件について形式はともかく実質的に解決しようとしない会社の姿勢からみて、本件団交拒否は不当労働行為である。
4413 給与上の不利益の場合
組合活動家X2の一時金の査定は最下限にあるが、これは寮待機の期間がすべて欠勤扱いとされたことに起因すると認められ、同
人が優秀な技術者であったことは会社も認めていることから少なくともその査定ランクは平均以上とみなし差額を支払うべきもの
と思料する。
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業種・規模 |
精密機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集56集146頁 |
評釈等情報 |
労働経済判例速報 昭和50年9月20日
891号(26巻25号) 25頁
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