労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  南大阪自動車教習所 
事件番号  大阪地労委昭和49年(不)第18号 
申立人  総評全国一般労組全自動車教習所労働組合 
被申立人  Y1 他1名 
被申立人  株式会社 南大阪自動車教習所 
被申立人  万代興業 株式会社 
命令年月日  昭和50年 2月 4日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  教習所解散、全従業員解雇決定後、一旦、分会員の解雇撤回、企業再開等を協定しながら、その後、業務再開不能を理由に分会員を再解雇し、前記協定後の賃金を支払わなかった事件で、原職又は原職相当職への復帰、年5分の割合による金員を含むバック・ペイ及びポスト・ノーティスを命じ、解散前の教習所の代表取締役個人および清算人個人に対する申立ては却下、陳謝文の手交については棄却した。 
命令主文  主     文
1 被申立人株式会社南大阪自動車教習所及び万代興業株式会社は、申立人組合南大阪分会員 らに対し、次の措置を含め昭和49年2月25日以降同人らが解雇されなかったと同様の状態に 回復させなければならない。
  (1)同人らを株式会社南大阪自動車教習所の解散前の原職又は原職相当職に復帰させること
  (2)昭和48年9月分以降同人らが受けるはずであった賃金相当額(ただし、既に支払った金   額を除き、その未払金に対する年5分の割合による金員を含む)を支払うこと
2 被申立人株式会社南大阪自動車教習所及び万代興業株式会社は、それぞれ縦1m×横2mの 白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して、すみやかに万代興業株式会社本社事務所及び堺市 三木閉の教習コースの、いずれも入口付近の申立人組合南大阪分会員らの見やすい場所に、 1週間掲示しなければならない。
                     記
                                   年 月 日
   申立人組合代表者あて
                       株式会社南大阪自動車教習所
                        代 表 者 名
                       万代興業株式会社
                        代 表 者 名
  株式会社南大阪自動車教習所及び万代興業株式会社は、貴組合及び貴組合南大阪分会員ら に対し下記の行為を行いましたが、これらの行為は労働組合法第7条第1号及び第3号に該 当する不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに、今後のこのような行為 を繰返さないことを誓約します。
                     記
 1株式会社南大阪自動車教習所が貴組合南大阪分会員らを何ら正当な理由なく解雇したこと
 2貴組合南大阪分会との間で昭和48年8月18日に締結された協定に違反し、堺市三木閉にお  いて何ら正当な理由なく業務を再開しないこと
 3株式会社南大阪自動車教習所が貴組合南大阪分会員らに対し昭和48年9月分以降の賃金を  何ら正当な理由なく支払わないこと
 以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。
3 申立人の被申立人Y1及びY2に対する申立ては、これを却下する。
4 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  4916 企業に影響力を持つ者
教習所に土地、建物を賃貸しているM社は、形式上別個の法人であるが、役員の構成及び両社の本社事務所が同一建物内にあり、教習所経理事務はM社従業員が行い、M社の都合により教習所従業員は自由にM社に移籍し、M社から賃金をうけながら、教習所業務に従事している者があり、教習生の送迎はM社が行い、教習所の備品につきM社が火災保険契約を締結し、保険料を支払い、両社の資金繰り操作は極めて密接で、教習所跡地売却に際し両社間に対価の授受又は補償の取り決めがない等の諸事情から総合すると、M社は教習所の実質上の経営者であり、教習所の分会員らに対し、使用者としての責を負うべき立場にある。

4905 経営補助者
Y1は教習所の代表取締役であり、業務再開を約した協定書にはM社及び教習所とともに、同協定上の義務の履行を認めた記載があり、同人も署名捺印しているが教習所の実質上の経営者はM社社長であり、協定における当事者としての法律上の責任はともかく、使用者としての責任を負うものではなく、Y1個人は被申立人適格を欠くものである。

4911 解散事業における使用者
教習所解散に伴う教習所清算人Y2の諸行為は、同人個人の行為ではなく、清算人としての行為と認められるので、Y2個人は被申立人としての適格を欠くものである。

1201 支払い遅延・給付差別
3800 行為の結果・その他
使用者は、その雇用する労働者に対し賃金を支払うべきは当然であり、資金のないことが賃金不払いの合理的理由たり得ない。しかも団交における教習所清算人の発言、本件紛争を金銭によって解決することを目論でいたこと等からみて、教習所が資金不足であったとは認め難く、本件賃金不払いは、分会員を経済的に困窮させんとしてなした不当労働行為である。

1800 会社解散・事業閉鎖
3105 事業廃止、工場移転・売却
教習所が業務の再開を不可能であるとする事情は何ら認められず、しかも、教習所清算人が分会員らに対し金銭を提示して退職を求めていることからみて、教習所が業務を再開しないのは、分会員らの動揺を誘いもって組合の弱体化を図った支配介入である。

4401 原職復帰と他の措置を併せて命じたもの
4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
4916 企業に影響力を持つ者
教習所は現在清算中であるが、審問結審時までの間、何らの清算事務は行なわれず、指定自動車教習所の指定は解除されているが、新コースはほとんど完成し、校舎を建築すればいつでも業務再開できる状況にあることからして、教習所に対し分会員らを原職又は原職相当職復帰を命ずるのが相当であり、またM社も教習所とともにその責に任ずべきものである。

1800 会社解散・事業閉鎖
3105 事業廃止、工場移転・売却
本件解雇当時、新教習コースはほぼ完成し、資金的にも業務が再開できる状況にあったこと、教習所清算人は、企業再開等に関する和解協定を無視して分会員等に退職を求めていること、M社及び教習所は仮処分決定等により協定不履行の責任を追及されていたこと等からみて、本件解雇は、教習所が新コースにおける業務から分会員らを排除するためになした不当労働行為である。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集55集92頁 
評釈等情報   

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