労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岩手銀行 
事件番号  岩手地労委昭和49年(不)第7号 
申立人  岩手銀行従業員組合 
被申立人  株式会社 岩手銀行 
命令年月日  昭和49年12月27日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  別件昇給、昇格差別についての労委の救済命令と緊急命令にもとづく差別是正要求を撤回しないことを理由に賃上げ等について妥結せず、その実施を拒否した事件で陳謝文の掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人銀行は、その費用をもって縦1メートル、横2メートルの白紙いっぱいに下記内容の事項を墨書し、これを被申立人銀行の本店本部及び同事務センター正面玄関並びに本店営業部、各支店及び各出張所の営業室内の見易い位置に10日間掲示しなければならない。
             記
                  昭和 年 月 日
    岩手銀行従業員組合殿
           株式会社岩手銀行
             取締役頭取 Y1
             陳  謝  文
 当行は貴組合との団体交渉において不当差別是正に関する要求を消滅せなければ賃上げ及び賃金体系改訂については妥結できないと主張し、またその実施を拒否したことは、貴組合に対する不当労働行為でありましたので、岩手県地方労働委員会の命令により、ここに深く陳謝いたします。
2 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  2249 その他使用者の態度
過去の昇給の評定及び人事考課の総合評定の結果の集積として賃金等に年令間格差が生じ、その是正を要求したこと自体著しく不当なものとはいえず、これに対して銀行から誠意ある回答が出されているとは認め難いので、組合が銀行に誠意をもって団交を継続するよう求めたことには理由がある。

1201 支払い遅延・給付差別
2244 特定条件の固執
銀行が、49年度賃上げについて、組合に対して、過去の昇給等の不当差別がなかったことを承認するとともに、差別是正要求の消滅を前提条件として妥結を求め、他方組合が、不当差別是正要求は交渉継続とし、賃上げについて銀行回答どおりで妥結することを求めたのに対し、これを拒否したことは、別組合に対しては付けられていない条件を付けて交渉の妥結を求め、事実上別組合と同一条件による妥結を拒否したのであるから、結局賃上げについて組合および組合員を別組合及び他の従業員と差別扱いしたものと認めざるを得ない。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
組合は、他従業員と同一基準による賃上げ等を、前提条件に固執せずに即時実施すること、不当差別是正要求に関し、誠意ある団交を継続することを求めているが、組合の申立ての趣旨に沿う銀行の釈明がなされた以上、その釈明にもとづき、賃上げ等はいつでも妥結し支給を受けることができ、また、不当差別是正要求につき、すでに銀行が団交を申入れたことにつき、組合は拒否し得ないと言うべきで、これらについての組合の被救済利益は最早失われたものと認める。

4613 P.Nのみを命じ、他の救済の必要性を認めなかった例
組合の求める陳謝文の掲示については、不当な前提条件を付して組合員に対する賃上げを拒否したことが不当労働行為と認められる以上、他の従業員と同一基準による賃上げが実施されるとしても、組合及び組合員の期間的、精神的利益が回復し得ないのであるから救済利益は存すると認められる。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集54集549頁 
評釈等情報   

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