労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  吉田鉄工所 
事件番号  大阪地労委昭和47年(不)第87号 
大阪地労委昭和48年(不)第73号 
大阪地労委昭和48年(不)第79号 
申立人  全大阪金属産業労働組合 
被申立人  株式会社 吉田鉄工所 
命令年月日  昭和49年11月18日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  賃上げ、一時金の各考課査定についての組合間差別、慰安会の実施や福利厚生各助成金の交付上の差別賃上げ、一時金の交渉についての組合間差別をめぐる事件で、賃上げ、一時金の考課査定点の是正、年5分の割合による金員を含む差額の支払、各助成金の支払、団交拒否等についてのポスト・ノーティスを命じ、将来にわたる誠意ある団交、助成金に対する年2割の加算金の請求は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、昭和46年年末一時金、同47年賃上げ、同年夏季一時金および同年年末一時金の各考課査定部分について、申立人組合吉田鉄工所分会の下記分会員の「精勤度」を除く平均査定点と被申立人会社の全従業員(ただし、下記分会員および課長以上の役職者を除く)の「精勤度」を除く平均査定点との格差点数を、下記分会員のそれぞれの従来の査定点に加算して上記賃上げ額および各一時金額を是正し、支払い済みの金額との差額(これに対する年5分の割合による金員を含む)を同人らに支払わなければならない。
                記
(1) 昭和46年年末一時金関係(10名)
 X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10
(2) 昭和47年賃上げ、同年夏季一時金および同年年末一時金関係(7名)
 X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7
2 被申立人は、申立人組合吉田鉄工所分会に対して、昭和48年度慰安会助成金として84,000円を、同年福利厚生助成金として34,146円をそれぞれ支払わなければならない。
3 被申立人は縦1メートル、横2メートルの白色木版に下記のとおり明瞭に墨書して、被申立人会社本社工場正門付近の従業員の見やすい場所に、1週間掲示しなければならない。
            記
                     年 月 日
    申立人組合代表者
                    あて
    申立人組合吉田鉄工所分会代表者
                被申立人会社代表者名
 当社は、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は労働組合法第7条第1号、第2号および第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。
                記
1 昭和47年年末一時金から同48年年末一時金までの各賃上げ、一時金要求に関し、貴分会と誠意をもって団体交渉を行なわなかったこと
1 昭和46年年末一時金から同47年年末一時金までの各賃上げ、一時金の各考課査定において、貴分会を低位に査定したこと
1 昭和48年度慰安会助成金、同年度福利厚生助成金の交付について、全日本労働総同盟全国金属産業労働組合同盟大阪地方金属吉田鉄工所労働組合とのみ協議し、かつ同組合にこれら助成金による事業の運営実施にあたらせ、これがため貴分会をしてその参加を困難ならしめ、事実上これから排除したこと
 以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。
4 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
一時金等の考課査定において、分会員全員が「精勤度」を除いても全従業員の平均査定点を大きく下廻っているが、これは、本件査定制度における精勤度以外の各評価項目が考課者の主観的判断にゆだねられていること、分会公然化以後労使関係は鋭く対立し、会社は、一時金等の考課査定で常に分会員を不利益に取扱ってきたこと、第一次、第二次考課査定が分会と激しく対立している別組合の組合員により行なわれていること、分会員個々の勤務成績等が他の平均的従業員より劣ると認める資料がないこと等を総合勘案すると、分会員を不利益に取扱い、もって分会組織の弱体化を意図した不当労働行為である。

1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
慰安会や福利厚生の実施について、会社が別組合とのみ協議・決定し、かつ、分会と別組合が鋭く対立していること知りながらその運営を別組合にゆだねたため、分会員らが、これらの事業に参加しなかったもので、会社の措置は、分会員を不利益に取扱い、もって分会組織の弱体化を意図して行ったものであり、不当労働行為である。

2246 併存団体との関係
使用者が、単に一方が少数組合であることを理由に、少数組合との団体交渉においては、多数組合に対する回答内容の単なる通知、説明に終始し、少数組合を労働条件の協議、決定の場から事実上排除することは許されない。本件で会社は、常に多数組合との交渉、回答を先行させたり、多数組合と妥結後はじめて分会との団交に応じ、その妥結額を最終回答として堤示するなど、賃上げ、一時金に関する会社の団交態度は、多数組合との団交のみを重視したもので、誠意ある交渉態度とは認められず、本件団交における会社の態度は不当労働行為である。

4415 賃金是正を命じた例
賃上げ・一時金の考課査定上の差別扱いの救済方法として、自動的に算出される「精勤度」を除く各評価項目について、分会員の平均査定点と分会員及び課長以上の役職者を除く非分会員の総平均査定点との格差点数を分会員の従来の査定点に加算し、額を是正するのが適切である。

4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
組合は、支払われるべき一時金等の差額にそれぞれ年2割の金員を付加するよう請求するが、年5分の割合による金員相当額を付加して支払いを命じることが相当である。

4407 バックペイの支払い方法
慰安会助成金については、会社が分会員の慰安会参加を事実上排除したのであるから、参加者1人当りに要した費用に分会員数を乗じた金員を、また、福利厚生助成金については、分会員を除く全従業員1人当りの金額に分会員数を乗じて算出した金員をそれぞれ分会に支給するのが妥当と考える。

4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
分会に支払われるべき慰安会助成金と福利厚生助成金について、年2割の金員を付加するよう請求するが、これら助成金の性質上賃金と同様に取扱うのは妥当ではない。

5001 将来における予防、不特定な内容の請求
分会は、本件団交のみでなく、今後の賃上げ・一時金の団交においても分会を不当に差別せず、誠意をもって交渉に応ずべき旨の命令を求めるが、一時金の団交の場で、会社は分会に対して、今後別組合と交互交渉、同時回答をなす旨約束しており、その後、この約束が破棄されたとの事実も認められないから組合の請求は棄却する。

業種・規模  一般機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集54集391頁 
評釈等情報  労働判例 昭和50年1月15日  213号 43頁 

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