労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本ファイリング製造 
事件番号  千葉地労委昭和47年(不)第1号 
申立人  総評合化労連東京合同労組日本ファイリング支部 
被申立人  日本ファイリング製造  株式会社 
命令年月日  昭和49年 8月31日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  昇給、期末手当の考課査定の組合所属による差別をめぐる事件で、本給に対する考課ランクおよび本給是正のうえ期末手当の考課乗率をそれぞれ是正し既払賃金額との差額支給と本件是正につき、従来の考課ランクと考課乗率を不利益に変更してはならないことを命じ、誓約書、謝罪文等の請求は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の組合員別表1乃至35記載の者に対する下記賃金期末手当について次のとおりの各金額を支払わなければならない。
 但し、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8の8名は、被申立人会社退職時まで、X9、X10の2名は、申立人組合脱退時までとする。
(1) 昭和46年度、昭和47年度及び昭和48年度の各賃金改訂について、各年度賃金改訂時における本給に対する考課ランクを5(昇給幅1.0)に是正し、該各賃金を再計算した額と既払賃金額との差額。
(2)ア 上記(1)による本給是正をした上で、昭和46年度夏季、同冬季、昭和47年度夏季、同冬季及び昭和48年度夏季の各期末手当について、毎期の考課乗率を1.0 に是正し、該各期末手当を再計算した額と既払期末手当との差額。
  イ 昭和47年度期末手当の精算額支給について、前項の是正によって得られる同年度年間期末手当支給額と既払精算支給額との差額。
2 被申立人は、1の(1)及び(2)につき、前記申立人の組合員の従来の考課ランク及び考課乗率を同人らに不利益に変更してはならない。
3 申立人のその余の申立は棄却する。
   別表 (省略) 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
組合員と別組合員との昇給額に格差が生じたのは、査定の考課ランク付が低位に集中していることによるものであるが、右査定の第一次評定者が対立組合の班長であり、評定要素が客観性に乏しい等公正である保証がなく、組合員と比較すべき具体的資料も提出していないこと、一方職制による組合脱退勧誘が相次いでいることからみて、本件昇給差別は、組合及び組合員を嫌悪し、組合を弱体化させることを意図した不当労働行為である。

1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
申立組合員に対する46年度より48年度夏季期末手当における平均考課乗率は、全社の平均より極めて低く査定されているが、これは賃金改訂と同様な理由による差別待遇であって、労組法第7条第1、3号に該当する不当労働行為である。

1201 支払い遅延・給付差別
5121 挙証・採証
申立人X11の48年度賃金及び夏季期末手当について、申立外組合員と比較して差別があるとして救済を求めているが、同人は元非組合員であり、48年度から申立組合員となったものであるが、疎明不十分であるので救済しないこととする。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
本件審査終了当時8名は既に会社を退職し、2名は既に組合を脱退しているが、退職若しくは脱退に至るまでは、他の組合員と同様に差別待遇を受けたのであるから、救済の対象に含め、他の被救済者と同様の措置をとるのが相当と認める。

4415 賃金是正を命じた例
考課ランクの格付は、実務職、要務職の別なく、第1ランク乃至9ランク一本立で格付されているものと言わざるをえず、標準平均ランクは第5ランクと認められるので、同ランクを適用して申立組合員の46から48年度の賃金額を是正することが相当と考える。

4413 給与上の不利益の場合
期末手当の計算において、本給が含まれている以上、申立組合員に対する46年度から48年度までの本給の考課ランクを5として再計算して是正し、更に各年度における各期末手当の平均考課乗率は1.0 であるから、これを適用して再計算して是正すべきを相当とする。

4417 条件付命令・協議命令
申立組合員に対する46年度から48年度までの賃金改訂及び46年度夏期から48年度夏期までの各期末手当並びに47年度期末手当精算額の是正について同人らの考課査定ランクを全社の標準平均ランクに格付けするように命じたが、この場合従来の考課ランク並びに考課乗率については、同人等に不利益に変更しないことが相当である。

4419 現存格差を一挙に是正した例
ベース・アップ分が考課に関係を持ち全社組合員同一考課であるとは考えられず、本給も相違し、全員一率に同額が支給されるとは考えられず、昇給に関しても、一率に同額を全社組合員に支給していないのであるから、全社組合員1人一率にベース・アップを支給すべきとの組合主張は採用することができない。

5201 継続する行為
組合は47年3月17日付で、46年度賃金改訂並びに同年夏期、冬季各期末手当の既払額との各差額の救済申立をしているが、その後継続する賃金、期末手当の不利益取扱いについても、その救済申立を推認し得るところ、会社の組合員に対する46年度賃金改訂並びに同年度夏季期末手当以降48年度賃金改訂及び同年度夏季期末手当の各差別が継続している以上、会社の不当労働行為の意思も継続して行なわれているとみるべきであり、しかして組合は48年11月16日付で、47年度の夏季期末手当及びその後の48年度の夏季期末手当に至る間の救済を当地労委の審査過程において求めているところより、47年度の夏季期末手当の不利益取扱いは、継続している行為とみて救済するのが相当であり、この点労組法第27条第2項により、47年度夏季期末手当の申立を却下すべきであるとの会社主張はあたらない。

業種・規模  家具・装備品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集54集260頁 
評釈等情報   

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