労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  黒井産業 
事件番号  宮城地労委昭和47年(不)第13号 
宮城地労委昭和48年(不)第6号 
申立人  総評全国一般宮城合同労働組合 
被申立人  黒井産業  株式会社 
命令年月日  昭和49年 8月26日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  営業譲渡にあたり譲受会社が譲渡会社において締結された銭別金協定の承継を拒否したこと、各支部との統一団交を拒否したこと、権限ある団交、責任者を出席させなかったこと、スト時間以外の賃金をカットしたこと、一時金の支払を拒否したこと等をめぐり争われた事件で、統一団交応諾、権限ある交渉責任者の出席、スト時間以外の賃金カットの禁止、一時金の支払いを命じ、銭別金協定の遵守、慰謝料の請求は棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合および同原町自動車学校支部、同中央自動車学校支部、同仙北自動車学校支部からの統一団体交渉の申入れを拒否してはならず、また、団体交渉には社長またはこれに代わる実質的権限をもった責任者を出席させ、交渉に応じなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合が昭和48年4月2日から同年5月2日までの間において実施した、毎時15分間のストライキの賃金カットのほかに、残り45分間についての賃金カットを行なってはならず、また、一時金等の支給にあたって、その算定基礎である稼働時間数から当該時間数を控除してはならない。
3 被申立人会社は、昭和48年度夏季一時金を、申立人組合仙北自動車学校支部の組合員に対し、何らの条件をも付することなく、申立人組合原町自動車学校支部および同中央自動車学校支部の組合員に対し行なったと同一の計算方式で算出し、支払わなければならない。
4 申立人のその余の申立は、これを棄却する。
5 被申立人は、第3項の命令を履行した後、履行した旨をすみやかに当委員会に報告しなければならない。 
判定の要旨  1900 営業譲渡・合併
K社がS社に自動車学校を営業譲渡するにあたり、従業員の労働条件を低下させないことを繰返し強調していることなどからみれば、S社がK社の指揮の下に経営されているという実体あるいは会社の資金繰りのため営業譲渡が必要であったという会社の主張に疑問があるとしても、直ちに営業譲渡そのものが不当労働行為を構成するとはいえない。

2130 雇用主でないことを理由
合同労組および3支部の統一団交申入れに対して、K社は、各支部組合員が属するT社およびS社が別法人であることを理由に拒否しているが、T社における労働条件について実質的決定権はK社役員を兼ねた役員がもち、K社とその組合との妥結結果をもって妥結するのが通例であること、K社と親子会社の関係にあるS社に属する2支部の組合員の身分はいまだK社にあると認められること、3支部の労働条件は同一水準に近づいていること等からみて、会社の拒否理由は正当とは認められない。

2248 実質的権限のない交渉担当者
会社側交渉責任者に与えられた裁量権は極めて狭く、しかも、会社側交渉責任者と社長との連絡に時間が費され、会社側交渉責任者の言明がしばしば覆えされるなど、団交責任者は、社長又はこれに代わるような相当程度の権限を有していたとは認められず、この点において会社は誠意を欠いていたというべきであろう。

2901 組合無視
営業譲渡にあたり支部組合員の身分につき現在係争中にもかかわらず、譲受会社の従業員であることを組合が承認しないことを理由にS支部の組合員にのみ48年夏季一時金を支払わないことは、会社の掲示する不当な条件に従わないことを理由とする差別扱いである。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
毎時15分間の時限ストに対し、会社は自動車教習の実情から、事実上60分間のストライキに等しいとしてその間の賃金カットを行ったが、組合は残り45分間について就労意思を表示し、会社はこれを拒否していないから、労務の提供があったものと認むべきであって、当該時間についての会社の賃金支払債務は消滅しないものと考えられるから会社の行なった賃金カットおよび一時金支給の算定基礎である稼働時間から当該時間数を控除したことは、正当な組合の争議権を否定し、組合に打撃を与えること目的とした支配介入である。

3103 労働協約締結をめぐる行為
H校がT社からK社に営業譲渡される以前に、T社の労使間で締結された餞別金協定は、K社の意を体してなされたものであり、営業譲渡を受けたK社は本協定の承認を拒否できないが、その後K社と組合間で本協定を含めた退職金制度について継続審議する旨合意に達しているのであるから、K社が本協定を尊重しないことを理由に、不当労働行為を行なっているとの組合主張は採用できない。

5008 その他
救済方法について組合は慰謝料の支払を求めているが、このような慰謝料の請求は不当労働行為救済制度にはなじまないというべきで容認できない。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集54集240頁 
評釈等情報   

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