労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  浜寺病院 
事件番号  大阪地労委昭和48年(不)第37号 
申立人  総評全国一般大阪地連浜寺病院労働組合 
被申立人  医療法人  微風会浜寺病院 
命令年月日  昭和49年 8月17日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  使用者が組合員が主体となっている互助会と非組合員が主体となっている新互助会とを差別し、新互助会の会員には健康祝金、貯蓄組合からの貸付金を支給したこと、夏期一時金の組合員への支給を遅延させたこと。互助会会費のチェック・オフを拒否したこと、組合員の主任を解任したこと等をめぐる事件で健康祝金と貯蓄組合貸付金相当分の支給、チェック・オフの実施、主任の地位への復帰およびバックペイ、ポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人は、健康祝金金5,000 円を申立人組合の組合員である互助会員各人に支給しなければならない。
2 被申立人は、互助会会費についてチェック・オフを行なわなければならない。
3 被申立人は、昭和48年度賃金引上げ相当分として、申立人組合の組合員に対し金60,000円を支給しなければならない。
4 被申立人は、X1に対して、次の措置を含め、昭和48年6月15日の主任解任処分を行なわなかったものとして取扱わなければならない。
(1) 同人を主任として取扱うこと
(2) 昭和48年7月以降、同人が受けるはずであった主任手当および控除された加給手当上積分(月割 500円,9ヵ月分)相当額を支給すること
5 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木版に下記のとおり明瞭に墨書して、食堂内のある被申立人の掲示板に1週間掲示しなければならない。
             記
                    年 月 日
申立人組合代表者あて
               被申立人病院代表者氏名
 当病院は、当病院が行なった下記の行為は、労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。
               記
1 貴組合の組合員である互助会員に健康祝金として金 5,000円を支給しなかったこと
2 貴組合の組合員に対し、昭和48年度賃金引上げを行なわなかったこと
3 昭和48年度夏季一時金の支給に際し、貴組合員に対し病院提案を一方的に押しつけたり、支給を遅延させりしたこと
4 互助会会費のチェック・オフを廃止したこと
5 貴組合の組合員X1氏の主任解任処分を行なったこと
 以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
会社は、非組合員に渡したのは貯蓄組合からの貸付け金であって、嘱託契約制度採用にともなう特別退職金の支給の際にこれを差引き精算ずみであると主張するが、貸付け当時、病院職制は賃上げが遅くなるので借用の形で渡す旨、理事長は返済の必要はない旨発言していること、嘱託契約制度採用による特別退職金支給についての病院主張には矛盾が多いこと等から、病院はこれらの方法を通じて賃上げ相当額の支給を行なったもので、組合員に支給しなかった病院の措置は労組第7条第1、3号に該当する。

1601 福利厚生上の差別
2900 非組合員の優遇
休業補償金および健康祝金が全従業員を対象に支給されてきた経緯、互助会、新互助会とも、主として病院の負担金に財源を依存していること、病院の工作により互助会員が減少し相互扶助組織として機能することが困難になったことから資金を貯える必要があったこと等からみて、互助会の財政状態をみるまでもなく病院の責任において互助会員即組合員に同額の健康祝金を支給するのが当然で、本件健康祝金を支給しない病院の措置は、労組法第7条第1、3号に該当する。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
病院がX1の主任解任の理由とする行為は事実無根あるいは不明確なものであり、また、従来昼休み前昼食のための離席が黙認されており、かつ、病院が行なった慣行等の破棄通告が不当労働行為であるから病院はX1の離席を問責できず、したがってX1は管理委員会、主任再研修に出席しなければならない理由はなく、本件処分は労組法第7条第1、3号に該る不当労働行為である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2900 非組合員の優遇
病院は互助会費のチェック・オフを、協定がないことを理由に廃止したが、チェック・オフは従来無協定のまま10年以上にわたり、さらに同会分裂後も続けてきたこと、互助会と同一の性格をもつ新互助会との間に会費についてチェック・オフ協定が存する以上法的に支障ないと考えられることなどからみて、組合への支配介入行為と認められる。

2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
組合の夏期一時金要求に対し、非組合員が貯蓄組合から一時金に見合う貸付金を受けているという状況のもとで2ヶ月近く団行を行わず、その後の団交では、従業員、病院の各代表で構成された病院の機関である労働条件等委員会が了承した臨時賞与支給に関する5条件を組合が承認することを要求し臨時賞与の支給を遅らせたのは、組合員の動揺を誘おうとした組合に対する支配介入行為と認められる。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集54集219頁 
評釈等情報   

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