労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  伊原工作所・日之出水道機器 
事件番号  京都地労委昭和46年(不)第15号 
申立人  総評全国金属労働組合京滋地方本部伊原工作所支部 
被申立人  日之出水道機器  株式会社 
被申立人  有限会社  伊原工作所 
命令年月日  昭和49年 8月16日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  組合が作業環境改善要求に伴ない作業拒否を通告したところ、会社は問題解決後も組合員の就労を拒否し、その間の賃金をカットし、ロックアウトを行ない、ついには企業を閉鎖して組合員全員を解雇したり、雇用関係不存在を理由に親会社が団交を拒否した事件で、賃金カット分の支給、原職復帰、バックペイ、団交応諾を命じた。 
命令主文  1 被申立人らは、申立人組合の組合員X1、同X2、同X3、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8、同X9、同X10に対し、昭和46年6月分の賃金を既支給額を控除して支払わなければならない。
2 被申立人らは、申立人組合の全組合員(X11を除く)を原職に復帰させるとともに、昭和46年7月13日付のロックアウトから原職復帰に至るまでの間、同人らが受けるべきはずの諸給与相当額を支払わなければならない。
3 被申立人らは、申立人組合が要求する昭和46年度の昇給、夏季一時金、年末一時金及び作業環境の改善、職業病患者の救済などについての団体交渉にすみやかに応じなければならない。 
判定の要旨  0419 ロックアウトとの関連
3700 使用者の認識・嫌悪
会社が主張するロック・アウト事由はいずれも正当理由とは認められない。また、ロック・アウトまでの間に会社がとった諸措置は、いずれも事態を解決させるためというよりは、組合が、職場環境改善等を要求し正当な活動を展開してきたことを嫌悪し、経済的しめつけ等で組合を屈服させる目的のためになされたものと認めざるをえない。そして、会社役員と組合三役の話合が短時間でもの別れになった翌日に、親会社であるH社の承認を得て行なわれた本件ロック・アウトは、組合の弱体化を企図した先制的攻撃的なものと認められる。

0411 怠業
1201 支払い遅延・給付差別
3700 使用者の認識・嫌悪
会社は組合のタール塗装の作業環境の改善要求に対して、改善の意思のないことを表明したり、組合の塗装作業拒否の通告にも、具体的に作業方法を指示しなかったのであるから、組合が作業を拒否したことの責任は会社が負うべきであり、その間組合員が手塗り塗装、機械の手入れ等の仕事をみつけて作業をしていたにもかかわらず、当該課の組合員全員に対し、賃金カットをしたことは、作業環境の抜本的解決等を求めた正当な組合活動を嫌悪してなした不当労働行為である。

1800 会社解散・事業閉鎖
3700 使用者の認識・嫌悪
会社は、企業解散、全員解雇の理由として、親会社であるH社からの契約解除の申入れをうけるなど、企業存立の根拠を喪失したことをあげているが、両社の関係から判断すれば、H社からの契約解除は、H社の一製造部門に対する材料の供給の中止にすぎないとみるべきで、会社の解散に直ちにつながるものとはいえないこと、その他の諸事情を併せ考えると、組合の活発な活動を嫌悪し、H社の指示のもとに、本件措置が強行されたものと推認せざるをえない。

2130 雇用主でないことを理由
H社は、I社の組合からの団交申入れに対して、組合員が雇用者でないことを理由に終始拒否しているが、同社はI社従業員の実質的使用者と認められる以上、H社が団交を拒否したことは不当労働行為である。

2242 回答なし
組合の団交申入れが団交指定期日以前に会社のもとに送付されていたにもかかわらず、会社がなんら正当な理由なく応諾しなかったことは不当労働行為である。

4915 親会社
会社役員、日常の作業指揮、経理、発注量、加工賃料等の決定、資本金、労使関係等の面から総合判断すると、法形式上別個の法人であってもI社は実質的にH社の一製造部門であるとみざるをえず、H社とI社従業員間に雇用契約書がなくても、H社が実質的に使用者の地位にあったといわざるをえず、両社は本件不当労働行為の責任を共同して負担すべきである。

業種・規模  一般機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集54集181頁 
評釈等情報  労働法律旬報 1974年12月25日  871号 68頁 

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