概要情報
事件名 |
日本ソフトウェア |
事件番号 |
東京地労委昭和47年(不)第127号
東京地労委昭和48年(不)第5号
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申立人 |
総評全国金属労働組合 |
申立人 |
総評全国金属労働組合東京地方本部日本ソフトウェア支部 |
申立人 |
総評全国金属労働組合東京地方本部 |
被申立人 |
富士通 株式会社 |
被申立人 |
日本ソフトウェア 株式会社 |
命令年月日 |
昭和49年 5月21日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
組合役員に対する処分の警告、組合員の行動調査、組合事務所、会議室の利用制約、会社解散による解雇、管理職研修、団交拒否などをめぐり争われた事件で、新規雇用がある場合の組合員の優先雇用、組合に対する陳謝文書送付を命じ、その他は棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人日本ソフトウェア株式会社は、新たに労働者を雇用する場合には、申立人総評全国金属労働組合東京地方本部日本ソフトウェア支部または、申立人総評全国金属労働組合東京地方本部にこの旨を通知し、現在の支部組合員のうちに希望者があれば同人を優先的に雇用しなければならない。この場合の雇用条件は、同人らが引続き日本ソフトウェア株式会社で就労していたものとして決定しなければならない。 2 被申立人日本ソフトウェア株式会社は、下記の内容の文書を作成し、申立人三組合に対し、内容証明郵便をもって送付しなければならない。 記 1 当社が、組合役員に対する処分の警告、職制による反組合的言動、警察と連絡をとって組合員らの行動調査を行なったこと、研修会による反組合的教育、会議室、組合事務所の利用の制約の行為をしたことは、東京地方労働委員会において不当労働行為と認定されました。 2 当社が、新たに労働者を雇用する場合には、まず総評全国金属労働組合東京地方本部日本ソフトウェア支部または総評全国金属労働組合東京地方本部に通知し、現在の支部組合員のうち希望者から優先的に採用いたします。 昭和 年 月 日 日本ソフトウェア株式会社 清算人 Y1 総評全国金属労働組合 中央執行委員長 X1 殿 総評全国金属労働組合東京地方本部 執行委員長 X2 殿 総評全国金属労働組合東京地方本部日本ソフトウェア支部 執行委員長 X3 殿 (注:年月日は、送付する日を記載し、各申立人に送付すること)
3 被申立人富士通株式会社に対する申し立て及び被申立人日本ソフトウェア株式会社に対するその余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1800 会社解散・事業閉鎖
会社は、経営が悪化し始めた頃から、職制らの反組合的言動、組合員の身元調査などにみられるように組合を嫌悪し、その影響力排除を目指したが、それが不可能と判断するや会社再建を断念したものと認められ、このような組合嫌悪を有力な要因とする会社解散に伴う解雇は不当労働行為と認められる。
2242 回答なし
賃上げ要求に対するゼロ回答が実質的団交拒否にあたるとの主張については、数多くの団交が行われ、その中で両者の意見が対立していたにすぎず、又ゼロ回答の余儀ない理由も説明していたことからみて、団交拒否にあたらない。
2610 職制上の地位にある者の言動
団交実施前に、「一時金は1.8ヶ月しか出せない、ストをやればさらに出せなくなる」との情報を職制を通じ流したことは、組合の存在を無視しようとした意図が窺われ、支配介入である。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
部長代理が、時差勤務はやらないと答えた組合員に「仕事はまかせられない」と発言し、また室長が、「組合員には仕事は流さず外注に出せ」と指示したことは、組合員を会社から排除しようとする意図が窺われ、支配介入と認められる。
2620 反組合的言動
スト中のビラ貼りや、職場集会に外部の者を参加させたことを理由とする組合幹部に対する処分の警告は、従来の慣行を無視したものであり、組合活動の制約を意図したものである。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
「争議中はトラブルを避けたい」などの理由で、従来は争議中でも許可していた会議室の使用を拒否したのは、慣行を無視したもので、組合活動の制約を意図したものである。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
社内の組合事務所の使用料を請求したことは、組合規模及び従来無償で使用を許してきたことからみて、組合活動を制約しようとした意図が窺われる。
2622 組合員調査
全従業員について、組合員か否か、共産党員か否か等の調査が人事課より行なわれ、F社発注の計画のプロジェクト構成員について、組合の影響力を排除しようとする人選がなされたことは、組合員を会社から排除しようとする意図の支配介入と認められる。
2622 組合員調査
春闘時に、警察の協力のもとに会社が行った組合員の行動調査、身元調査は、組合尖鋭分子の排除に利用しようとした意図が窺われ、支配介入である。
3102 争議対抗手段
管理職を対象として「不当労働行為について」「民青、日共と対決のポイント」などをテーマとして、春闘中に行なわれた研修会は、実施された時期、内容から見て、組合破壊を意図したものと窺われる。
3106 その他の行為
春闘要求等に対するゼロ回答、労働協約改訂申入れ、労働条件改訂申入れ、臨時休業の提案は、それぞれの内容が従来の労働条件の引下げになるとしても、赤字が予想される中で作成された下期対策の実施として行なわれたもので、この対策そのものが組合破壊を意図したものでない限り、不当労働行為ではない。
3410 職制上の地位にある者の言動
課長等が組合を誹謗し、組合脱退勧奨及び新設会社への入社勧誘を行なったのは、会社が企業規模縮少、希望退職募集を内容とする「再建計画」を発表する直前のことであり、管理職としてすでにこのことを知り、自らも新社入社を決意した上での個人的な行為とみるのが至当である。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
会社が団交ルールの協議を申入れ、組合も提案を行って、この間何回かの文書往復がなされる間団交は行なわれなかったが、まもなく口頭で了解点に達し、その後団交が行なわれているのですでに救済利益は失なわれている。
4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
組合を嫌悪してなされた会社解散に伴う解雇の救済としては、会社が清算に入り営業活動を行なっていないことにかんがみ、新規に労働者を雇用する際の組合員の優先雇用、不当労働行為と認定された旨の文書交付を命ずることとする。
4916 企業に影響力を持つ者
F社のN社への影響力は強いが、実権がF社派遣の幹部にあったとは言えないこと、一部作業をF社の指揮下で行ったのも受注形態の一つであること、F社がN社の労務政策を左右していたとは言えないこと等からみて、F社はN社の一株主又は主たる発注先にすぎず、N社従業員に対する使用者性は認められない。
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業種・規模 |
情報サービス・調査業(ソフトウェア業等)、広告業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集53集379頁 |
評釈等情報 |
労働判例 昭和49年8月15日 203号 65頁 
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