労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ラジオ関東 
事件番号  東京地労委昭和47年(不)第50号 
東京地労委昭和47年(不)第81号 
東京地労委昭和47年(不)第88号 
東京地労委昭和47年(不)第13号 
申立人  X1 ほか16名 
申立人  ラジオ関東労働組合 
申立人  日本民間放送労働組合連合会 
被申立人  株式会社 ラジオ関東 
命令年月日  昭和49年 5月21日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含 む) 
重要度   
事件概要  組合幹部4名に対する行きすぎた争議行為、早退、業務不熱心、組合 ビラの内容等を理由とする出勤停止、減給などの各処分、組合員の配転、昇給昇格差別、正社員化の拒否などをめぐり争われた事 件で、一部処分の撤回、受けるべき賃金相当額の支払、原職復帰、昇給、一時金差別の是正、ポスト・ノーティス、命令の履行状 況の労委への報告を命じ、その他は棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社ラジオ関東は、申立人X3に対する昭和47年 3月13日付の減給処分を撤回し、同人がこの減給処分によって失なった賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、申立人X2に対する同年6月12日付の出勤停止処分を撤回し、この出勤停止処分がなされなかったとすれ ば、同人が受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。
3 被申立人会社は、申立人X1に対する同年5月16日付の配置転換命令を撤回し、同人を報道部へ復帰させなければならな い。
4 被申立人会社は、後記目録記載のX2ら77名に対して、昭和47年4月に遡ってつぎの措置を講じなければならない。
(1) 各人の同年4月の給与額を、昭和46年における考課区分を平均Aとして再査定した金額に増額すること。
(2) (1)の増額された給与額を基礎として、昭和47年4月における考課区分を平均Aとして再査定して昇給させること。
(3) 前記(1)(2)の個人別の決定については、労使で協議すること。この協議に際して、被申立人会社は(1)(2)項 によることが不当と思料する者については、明確な資料および理由を付けて、申立人ラジオ関東労働組合にその旨を申入れること ができ、交渉開始の日から2か月以内に妥結に至らない者については、何れか一方からの申請により、本委員会におけるあっ旋手 続において解決し、あっ旋の開始から3か月以内に協定が成立しない場合には、何れか一方からの申請により、本委員会における 仲裁手続において解決すること。
(4) 前(1)~(3)項によって定まった差額を支給すること。
5 被申立人会社は、後記目録記載のX2ら77名に対して、昭和46年年末賞与については前項(1)により増額した額を、昭 和47年夏期賞与については前項(1)(2)により増額した額をそれぞれ基礎として昭和46年年末賞与および47年夏期賞与 の査定における考課区分を平均Aとして再査定した金額に増額し、その差額を支払わなければならない。その個人別の決定につい ては、前項(3)に準ずるものとする。
6 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の文書を縦80センチメートル、横 120センチメートルの木板に楷書で墨書し、本社、東京支社および関西支社のそれぞれの正面付近の従業員の見易い場所に1週間掲示しなければならない。
               記
 当社が、貴組合の組合員X3氏を減給処分にしたこと、X2氏を出勤停止処分にしたこと、X1氏を制作部へ配置転換したこ と、X2氏ほか76名に対し、昭和47年度昇給査定、46年年末賞与および47年夏期賞与の査定に際して、貴組合の組合員以 外の者より低く査定したことは、いずれも不当労働行為であると、東京地方労働委員会で認定されました。今後このような方法で 貴組合の運営に支配介入いたしません。
 同労働委員会の命令によってこの掲示をいたします。
   昭和  年  月  日
           株式会社 ラジオ関東
            代表取締役 Y1
 ラジオ関東労働組合
   執行委員長   X7 殿
 日本民間放送労働組合連合会
   中央執行委員長 X8 殿
   (注 年月日は文書を掲示した日を記載すること)
7 被申立人会社は、すみやかに文書で本命令の履行状況を当委員会に報告しなければならない。
8 その余の申立てを棄却する。
  昇給および賞与の額を是正すべき者の目録(省略) 
判定の要旨  0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
「・・・社長は台湾独立運動に社の公金を流用」など、社長個人の思想、信条に関わる内容の組合教宣ビラは、事実の確認のない まま不特定多数に配布されているだけに不穏当である。

0415 職場占拠
0420 その他の争議行為
1400 制裁処分
窓に多数のビラを貼り、採光を妨げて窓の効用を失わしめたこと、拡声器を用いつつ事務室内をねり歩いたこと、会議室を一時占 拠したことは、争議中であることなどを考慮しても、正当な組合活動とは言えず、これを理由とする出勤停止処分は、対象が組合 三役に限られ、しかも必ずしも重いものでないことからみて、不当労働行為とはいえない。

0420 その他の争議行為
1400 制裁処分
拡声器を使い社長室前でシュピレヒコールをしたこと、ビラを強引に貼り、これをはがそうとした職制を泥棒呼ばわりまでしたこ とは行き過ぎであり、これらを理由とする出勤停止処分等は、対象が組合幹部に限られ、かつ重いものではないことを考え合わせ ると、不当労働行為とは言えない。

1202 考課査定による差別
45,46 両年度の査定が組合員に不利なものであったという背景下では、47年度の査定で組合員の平均が標準的で分布状態 も正常であるとしても、会社が組合員以外の考課区分を明らかにしない以上、労使関係がとくに改善されたとの反証がない限り、 組合員に不利に査定したとみるほかはない。

1202 考課査定による差別
46年年末賞与、47年夏期賞与の査定は、47年度昇給査定と同様の考課区分を使用しているとみるのが相当であり、47年度 昇給査定が不利益取扱いである以上、これら賞与の査定も不利益取扱いとみるほかはない。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
活発な組合活動家X1の報道部からの配転は、同部に第二組合の委員長がいること、新入社員全員を同部に配属し、これらが皆第 二組合に加入したこと、会社が昇給査定上、X1を不利益に扱ったことなどを考えると、会社が、同部内におけるX1の影響力を 排除するためになしたものとみるのが相当である。

1400 制裁処分
早退届を当日不在の上司の机上に置き、組合活動をなした組合役員X4に対して、会社幹部が早退届に関して追及し、早退による 組合活動はもってのほかであると注意し、これに反抗した同人の態度を理由に、減給処分にしたことは、この経過から推して、会 社がX4の組合活動を嫌悪してなしたものとみるのが相当である。

1400 制裁処分
組合員X2に対する、無断欠勤、業務不熱心等を理由とする出勤停止処分は、X2が雑誌に、会社の組合弾圧の模様などを書いて いることから判断して、会社がX2の組合運動の一環としての文筆活動を嫌い、X2の些細なミスを探して処分したものとみるの が相当である。

1500 不採用
嘱託から正社員への登用試験の内容が極度に難しく、組合員X5が不合格になったことについて、他の嘱託の受験の有無、合格者 数などX5と比較すべき者が明らかでない以上、会社が組合員であるX5を嫌って、極度に難しい出題をし正社員化を拒否したと 断定することはできない。

1200 降格・不昇格
会社が、47年4月1日に従前の昇格格差を解消しなかったことは、不作為の不当労働行為と組合は主張するが、会社は必ずしも 定期的に昇格を発令しておらず、不作為で組合間差別を行ったとは認められない。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
昇格査定について、41年度から43年度については組合員が不利益に扱われているものと認められるが、44年度については差 別はなく、組合もこれらの査定に異議を唱えることなく経過してきており、これらの査定による昇格格差については最早救済の利 益はなくなっている。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
会社は、組合との合意により労使間の争点は完全に消滅したと主張するが、合意中の特別調整は極めて少額であり、組合が賃金格 差是正についてもこれで合意に達したと解することはできない。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
組合員のうち、X6ら6名は、退社と同時に組合規約により組合員資格を失っており、又X7ら6名も、何の留保もなく脱退届を 組合に出しているので、組合がこれを承認していなくとも、これら12名は、本件救済の対象とはならない。

4417 条件付命令・協議命令
昇格格差の是正としては、組合員以外の者の考課区分の平均であるAをもって組合員の考課区分の平均とし、それにより再計算の 上、個人別金額の決定については労使で協議するように命ずる。

5124 その他の審査手続
審査終結後になされた、48年4月1日における昇給等に関する不利益取扱いの主張は、審査の過程において具体的な事実の主張 がなかった以上、取り上げない。

5124 その他の審査手続
会社は、組合が賞与の格差是正を求めるのに全く新たな申立てで許されないと主張するが、申立ての基礎となる事実は、申立人が 当初から申立てている事実とほぼ共通で、会社もそれに対して十分な防御をしており、全く新たな申立てとは言えない。

5121 挙証・採証
被申立人は、「救済内容変更の申立」につき答弁、証拠提出の機会が与えられず、又立証を許された審問期日が申立人より少ない 事を違法と主張するが、準備書面で反論していること、被申立人が立証を望んだ点は争点を離れていること、立証の期日が申立人 より少なかったことも手続の正当性をゆるがす問題ではないことを考えれば、違法はない。

5201 継続する行為
申立てより一年以上前の賃金査定につき、会社の不当労働行為意思が、毎月の給与支給の都度、具体化顕在化している場合は格 別、本件の場合は4月の昇給査定の結果に基づき機械的に実施されているものであり、差別的昇給査定が現に継続しているとみる のは困難である。

5201 継続する行為
昇格の格差について、申立の一年前よりさらに以前の昇格の格差は本件でとりあげることはできない。

業種・規模  放送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集53集353頁 
評釈等情報  労働判例 昭和49年9月1日  204号 59頁 

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