労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  浜寺病院 
事件番号  大阪地労委昭和47年(不)第73号 
大阪地労委昭和48年(不)第19号 
申立人  総評全国一般大阪地連浜寺病院労働組合 
被申立人  医療法人 微風会浜寺病院 
命令年月日  昭和48年12月 6日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  互助会の分裂による新保育所の設置、組合売店との取引中止、協定および慣行の破棄、健康祝金の差別支給、一時金上積み分の差別支給、団交拒否等をめぐる事件で、団交応諾、健康祝金の支給、協定書等の破棄通告の撤回、ポストノーティスを命じ、他は棄却した。 
命令主文  1 被申立人医療法人微風会浜寺病院は、昭和47年12月8日づけ「確認書」記載の事項を条件とすることなく、申立人総評全国一般大阪地連浜寺病院労働組合と誠意をもって団体交渉を行なわなければならない。
2 被申立人は、新互助会会員に対し、健康祝金として支給した金2,000 円を申立人組合の組合員各人に対し、支給しなければならない。
3 被申立人は昭和48年1月17日に申立人に対して行なった協定書等の破棄に関する通告を撤回しなければならない。
4 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して、食堂内にある病院掲示板に1週間掲示しなければならない。
            記
                  年  月  日
 総評全国一般大阪地連
 浜寺病院労働組合
  執行委員長 X1殿
                医療法人微風会浜寺病院
                 理事長 Y1
 病院は、病院が行なった下記の行為は労働組合法第7条第1号、第2号および第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。
               記
1 貴組合との団体交渉につき、離席屈の提出、交渉委員人数の制限等の条件を付し、団体交渉を拒否してきたこと
2 新互助会の設立、新互助会保育所等および新売店の設置を通じて組合活動に支配介入したこと
3 新互助会設立総会で土鍋セット等を提供し、また、同会を通じて健康祝金を支給し、さらに、ミカン狩りの実施について貴組合員を差別的に取扱ってきたことならびに私病等補償金および労災補償金を支給しなかったこと
4 昭和48年1月17日に、労働協約等の全面破棄の通告を行ない、組合活動に支配介入したこと
以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。
5 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
病院が、書記長ら14名に対し、年末一時金ベーター分を不支給ないし減額したことは、6ヵ月間の勤怠等を査定基準としていること、委員長ら4名を含めて組合員の77%が最高額の支給を受けていることなどからみて、組合員あるいは組合役員なるがゆえの不利益扱いとは認められない。

1601 福利厚生上の差別
2900 非組合員の優遇
4408 バックペイが認められなかった例
4603 その他
病院が、新互助会設立総会で出席者に対し、土鍋セットを贈り、弁当を提供したことは、新互助会員を優遇することによって同会の拡大を図り、ひいては組合の弱体化を企図した不当労働行為である。しかし、組合員に対しこのような物品ないしその相当額を支給せよとまで命ずる必要は存しないと考えるので、この点に関する救済請求は認めない。

1601 福利厚生上の差別
2801 団体運営に関する補助金支給
2900 非組合員の優遇
病院が、新互助会の行事の経費を負担したことは、例年病院が全従業員を対象に主催してきたことからみて、互助会分裂という事態の中で、新互助会の行事として行わしめたものと認められるから、これにより互助会員である組合員を不利益に取扱い、組合員に対し動揺を与えようとした不当労働行為である。

1601 福利厚生上の差別
2802 福利厚生資金に関する寄付・貸付等
2900 非組合員の優遇
新互助会が、同会員に健康祝金を支給したことは、従来同祝金が互助会財政に余裕があった場合に、私病等補償金および労災補償金の支給を受けない会員に均衡上支給されていたものであり、発足後間もない新互助会に余裕があったとは到底考えられないことからみて、病院が同会に資金援助を行ったものと推認され、このことは組合員を不利益に取扱ったものであり、不当労働行為である。

2249 その他使用者の態度
保育所直営化問題の団交において、病院が、保育所は病院とは無関係であるとの回答に固執したことは、保育所が病院の分裂工作により併設されたものであることからすれば、病院は組合との協議に応じなければならない立場にあるから、不当労働行為といわざるをえない。

2211 団交ルールの先議
2213 交渉人数
会社が、団交ルールの確立に固執し団交を拒否したことは、労使双方が団交正常化のためのルールを協定すること自体は望ましいことといえても、労使関係がきわめて悪化していたさなかに、交渉員数の制限などの妥当性を欠くものをも含む確認書の調印をせまるなど、固執した内容が当を得ないので不当労働行為といわざるを得ない。

2802 福利厚生資金に関する寄付・貸付等
2900 非組合員の優遇
病院が、互助会への所属を理由に組合員X2らに私病等補償金、労災補償金の立替え支給を行わなかったことは、互助会が私病等補償金などの立替え支給の手段として設立されたものであり、新互助会員に対しては立替え支給していることからみて、組合員の動揺を企図した不当労働行為といわざるを得ない。

3106 その他の行為
病院が、組合推せんの互助会委員に辞任を通告し、新互助会の準備委員会および総会において経費負担、物品の提供をしたことからみて、新互助会の設立は、互助会運営委員の多数派となった組合を嫌悪し、組合の弱体化を企図してなした不当労働行為である。

3106 その他の行為
病院が、新互助会保育所を設置し、のちにこれを、直営保育所としたことは、理事長別荘敷地内に病院職員を使って保育所の建設にあたらせたことなどからみて、互助会の保育所の運営を困難な状態に追い込むことによって、組合の弱体化を企図したと考えるのが相当であり、不当労働行為である。

3106 その他の行為
病院が、組合経営の売店から商品の購入を中止し、組合の売店に隣接して新売店を建設したことは、組合の売店担当者の引き抜き工作を行ったことなどからみても、組合の売店経営を困難ならしめ組合財政に打撃を与えることによって組合を弱体化せんとした不当労働行為である。

3103 労働協約締結をめぐる行為
会社が、労使間で締結された協定等は現状に即応しなくなったとして、これらを一方的に破棄したことは、団交を拒否し続ける中で破棄予告をし、ついで組合活動を著しく制限する協定書案を提案していることからみて、組合活動の大幅な制限を企図したものと考えるのが相当である。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集52集150頁 
評釈等情報   

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