労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  フジ乳業 
事件番号  大阪地労委昭和47年(不)第54号 
申立人  フジ乳業労働組合 
被申立人  フジ乳業 株式会社 
命令年月日  昭和48年 8月 9日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  組合結成に対する会社の言動、組合活動家に対する出向命令およびこれを拒否したことを理由とする解雇、人員整理を理由とする組合員の解雇、団交拒否、査定上の差別等をめぐる事件で、原職復帰、バックペイ、団交応諾、賃上げ、一時金の再査定、ポストノーティスを命じ、他は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、次の措置を含め、昭和47年5月13日づけX1に対する解雇、同月15日づけX2およびX3に対する解雇ならびに同月6月16日づけX4およびX5に対する解雇がそれぞれなされなかったものとして取扱わなければならない。
(1) 原職に復帰させること
(2) 解雇の日(X4およびX5については昭和47年6月1日)から原職復帰の日までの間、同人らが受けるはずであった賃金相当額(大阪地方裁判所の決定によってすでに支払われた額を除く)を支払うこと
2 被申立人は、X6に対して、次の措置を含め、昭和47年5月15日づけ出向命令がなされなかったものとして取扱わなければならない。
(1) 原職において就労させること
(2) 昭和47年5月15日以降同人が原職に復帰するまでの間、就労拒否がなかったものとして、受けるはずであった賃金相当額(大阪地方裁判所の決定によってすでに支払われた額を除く)を支払うこと
3 被申立人は、団体交渉の時間、議題および交渉人員数に関する被申立人掲示の団体交渉ルールが確立されないことならびに団体交渉要因である役員が多忙であることなどを理由に、申立人との団体交渉を拒否してはならない。
4 被申立人は、X7、X8、X9およびX10(以下「X7ら4名」と総称する)に対する昭和47年夏季一時金、同年冬季一時金および同年臨時昇給について、次のとおり措置しなければならない。
(1) X7ら4名の、上記夏季一時金における協力費、冬季一時金における評価加算および臨時昇給率のそれぞれの平均が被申立人会社富田工場の他の女子従業員の平均(後掲第1表ないし第3表に記載のとおり)を下まわらないよう再査定すること
(2) この再査定にあたっては、X7ら4名の各人の最低が被申立人会社富田工場の他の女子従業員の最低を下まわらないようにし、かつ従来の査定結果を同人らに不利益に変更しないこと
(3) この再査定によって生じた差額相当額を村田ら4名に対して、それぞれ支給すること
5 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり墨書して、被申立人会社の本社および富田工場の正門附近の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
                記
                       年 月 日
    フジ乳業労働組合
        執行委員長 X1 殿
             フジ乳業株式会社
               代表取締役 Y1
 当社は、貴組合および貴組合員に対して、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は労働組合法第7条第1号、第2号および第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。
                記
1 取締役兼富田工場長Y2らが、貴組合の結成を妨害し、従業員が貴組合に加入することを妨げ、組合脱退を慫慂するなどの言動をしたこと
2 正当な理由なく、貴組合員X1氏、同X2氏、同X3氏、同X4氏、同X5氏およびX11氏を解雇したこと
3 正当な理由なく、貴組合X6氏に出向を命じ、これを拒否したことを理由に同氏の就労を拒否し賃金を支払わなかったこと
4 正当な理由なく、貴組合との団体交渉を拒否したこと
5 昭和47年夏季一時金、同年冬季一時金および同年臨時昇給において、貴組合員を不利益に取扱ったこと
 以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。
6 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0500 勤務成績不良
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
作業遅延、職場離脱等勤務成績不良を理由にX1を解雇したことは、解雇理由についての会社主張がいずれも失当であり、同人が活発な組合活動を行なっていたことならびに会社は組合を嫌悪していたことなどからみて、不当労働行為であるといわざるをえない。

1102 業務命令違反
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
3700 使用者の認識・嫌悪
会社が、執行委員長に出向を命じ、これを拒否したことを理由に解雇したことは、出向命令が組合結成の翌日になされていること、拒否した同人に暴行を加え、さらに退寮を命じたうえ同人を解雇していること、同日、他工場でも組合の中心人物が解雇されていることから不当労働行為といわざるを得ない。

1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
会社が、夏季一時金考課査定について組合員を最低に査定したことは、その評価基準が明確でなく、主観的、恣意的な判断によってしか査定できないものであること、組合員の会社に対する貢献度が非組合員にくらべて劣っていたと認めるに足る疎明もないことから、組合員であるが故になした不当労働行為である。

1202 考課査定による差別
3700 使用者の認識・嫌悪
会社が、冬季一時金考課査定について組合員を低く査定したことは、組合員の評価が平均以上でありながら平均額を下まわるという本来あり得ないはずのものがいること、会社が組合を嫌悪していたことなどを考えあわせると、組合員であることを嫌悪してなした不当労働行為であると判断される。

1202 考課査定による差別
3700 使用者の認識・嫌悪
会社が、臨時昇給査定について組合員を低く査定したことは、組合員の評価が平均以上でありながら平均額を下まわるという本来あり得ないはずのものがいること、会社が組合を嫌悪していたことなどを考えあわせると、組合員であることを嫌悪してなした不当労働行為である。

1301 出向
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、組合活動家Fに出向を命じたことは、同人の勤務態度、勤務成績が優秀であること、K会社から派遣の要請があったとは措信しがたいこと、出向を命じた経過から、同人の活発は組合活動を嫌悪してなした不当労働行為である。

1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、組合員2名に対し、解雇予告後に何ら理由も告げることなく就労を拒否したことの不当なことは論をまたず、同人らを会社から排除し、もって組合組織の破壊を企図した不当労働行為である。

1102 業務命令違反
会社が、出向命令拒否を理由にFの就労を拒否したことは、本件出向命令が不当労働行為である以上、X6の拒否は当然であるから、不当労働行為といわざるを得ない。

2000 人員整理
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、人員整理を理由に組合員のみ5名を解雇したことは、人員整理の必要があったとは認められないこと、会社が組合を嫌悪していた事情をあわせ考えれば、同人らが組合員であることないしは組合活動を行なっていたことを嫌悪してなした不当労働行為といわざるを得ない。

2211 団交ルールの先議
会社が、団交ルールを組合が承認することを団交開催の前提条件としたことは、このようなルールは労使双方が協議を尽くした後に取り決められるべきことがらであるから、正当な理由もなく団交を拒否するものであって、不当労働行為である。

2245 引き延ばし
会社は、団体交渉要因である役員が多忙なため、団体交渉に応じられなかったと主張するが、このような理由によって、一切団体交渉に応じない会社の態度は是認できない。

2500 別組合の結成・援助
会社が別組合の結成に多大の便宜を供与したことは明白であるが、これらの事実のみから直ちに、会社が別組合を結成させたとは断じ難い。

2610 職制上の地位にある者の言動
2700 威嚇・暴力行為
一部従業員から要請があったとしてなされた工場長の発言は、組合内部の問題である組合結成の趣旨等についてX9に説明を求め、組合結成について会社に相談することを強要し、相談もなく組合を結成したら責任をとってもらうと強迫しているのであって、明らかに組合結成を妨害するものといわざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
非組合員X3が工場長の依頼により勤務時間中に女子組合員全員を集め、組合を脱退せよと述べたこと、および、工場長が女子組合員を一人ずつ呼び出し、組合活動から手を引くよう説得したことは、明らかに組合脱退を慫慂する行為である。

3100 スパイ
3411 その他の従業員の言動
X3が女子組合員を自宅に集め、組合の活動状況を尋ねたことは、非組合員である同人が組合の活動状況を組合員に尋ねることの個人的動機があったとの事情も認められず、会社が組合の結成について嫌悪し、妨害工作を行なっている状況からみて、会社の意を受けてなされた支配介入行為であり、会社がその責を負わねばならない。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
人員整理を理由に解雇されたSは、本件審問終結時、すでに組合を脱退しているので、同人に対する不利益取扱いについては救済の必要を認めない。

業種・規模  食料品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集51集97頁 
評釈等情報   

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