労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  仁丹テルモ・テルモサラミックス 
事件番号  静岡地労委昭和47年(不)第1号 
静岡地労委昭和47年(不)第6号 
申立人  全テルモ労働組合 
被申立人  株式会社 仁丹テルモ 
被申立人  株式会社 テルモサラミックス 
命令年月日  昭和48年 6月25日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  工場長の組合結成等についての発言、委員長の配転および自宅待機命令、組合員X1のスト終了後の就労拒否、組合員X2のスト支援活動による遅刻を理由とする就労拒否等をめぐる事件で、配転、自宅待機命令の取消し、原職復帰支配介入の禁止、誓約書の手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人株式会社仁丹テルモは、申立人組合員X3に対する昭和47年2月16日付配転命令および同月22日付自宅待機命令を取消し、同人を原職に復帰させなければならない。
2 被申立人株式会社仁丹テルモは、申立人の組合員に対し組合の御用化を要求したり、合理的理由なくして配置転換を命じたり、自宅待機を命じたり、就労を拒否したり、組合員を首にするとか組合をつぶしてやると言ったりなどして、申立人組合の運営に介入してはならない。
3 被申立人株式会社テルモセラミックスは、申立人組合員に対し、合理的理由なくして就労を拒否することにより申立人組合の運営に介入してはならない。
4 被申立人株式会社仁丹テルモは、下記(一)の誓約書を、被申立人株式会社テルモセラミックスは、下記(二)の誓約書を命令交付の日より5日以内にそれぞれ申立人組合に手交しなければならない。
              記
           誓 約 書 (一)
 当社のなした下記の行為は、貴組合の運営に介入する不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに、今後かかる行為をいっさいしないことを誓約します。
              記
(1) 工場長Y1毅が昭和46年11月14日貴組合員X3殿外2名に対し、会社の意に添った組合をつくるよう説得したこと。
(2) 工場長Y1毅が昭和46年12月18日忘年会の席上X3とX4は絶対に首にしてやる、組合を絶対につぶしてやると言ったこと。
(3) X3殿に対し、昭和47年2月16日配転命令を、昭和47年2月22日自宅待機命令を発したこと。
(4) 昭和47年1月31日X5殿を配転したこと。
(5) 昭和47年3月24日X1殿に対し就労を拒否したこと。
                    昭和 年 月 日
    全テルモ労働組合
        中央執行委員長 X3 殿
             株式会社 仁丹テルモ
               取締役社長 Y2
           誓 約 書 (二)
 当社が昭和47年3月24日貴組合員X2殿に対し、合理的理由なく就労を拒否したことは、貴組合の運営に介入する不当労働行為であったことをみとめ、ここに陳謝するとともに今後再びかかる行為をしないことを誓約します。
                    昭和 年 月 日
    全テルモ労働組合
        中央執行委員長 X3 殿
             株式会社 テルモセラミックス
               取締役社長 Y2 
判定の要旨  1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、勤務成績不良を理由に委員長を設計から生産課へ配転したことは、同人が非能率不熱心とは認められず、配転先は旧職場に比して甚だしく劣りかつ組合員も少ないことからみて、同人の組合活動を嫌悪して行なった不利益扱いであり、同時に組合に対する支配介入であると判断せざるを得ない。

1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、事務上の都合を理由に事務職である組合員を不良品選別作業へ配転したことは、小屋のような部屋での独り作業であり、作業場の入口に部外者立入り禁止の注意札をはり出し同人を孤立無援の状態に置いた事実等からみて、同人の組合活動に対する報復措置としてなした不利益扱いであり、同時に組合への介入行為である。

1401 労務の受領拒否
委員長の配転命令効力停止の仮処分決定がなされたのになお、会社が同人に自宅待機を命じたことは、配転命令が不当であるにもかかわらず配転命令の効力を維持存続せんとし、同人の原職復帰を拒否するものであり不当労働行為である。

1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、組合活動家X1の指名スト終了後の就労申出を拒否したことは、同人の興奮した態度では業務遂行不可能であったとする会社主張を認めるに足りる疎明がなく、却って仕事には何等懸念もなかったと認められることからみて、報復措置としてなされた不当労働行為である。

1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、他組合のスト支援活動により遅刻した組合員X2の就労を拒否したことは、同人が甚しく興奮状態にあったと認めるに足りる疎明がなく、従来、従業員が遅刻したために就労を拒否されたことはないことからみて、報復措置としてなされた不当労働行為である。

0110 結成行為の範囲とされた例
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
工場長が組合結成準備の中心人物に対し、企業内組合を作るよう説得したことは、いわゆる会社の息のかかった組合を作るためのはたらきかけとみるのが相当であり、組合結成に対する介入といわざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2700 威嚇・暴力行為
3410 職制上の地位にある者の言動
忘年会の席上、工場長が組合員に対し、「クビにしてやる、組合をつぶしてやる。」等の発言をしたことは、日頃組合に対し嫌悪の念を抱いていたことが窺われるから、そのうっぷんのあらわれとみられ、組合員の心理に不安動揺を与え、延ては組合の運営に影響を及ぼすことは明らかであるから不当労働行為といわなければならない。

1401 労務の受領拒否
1602 精神・生活上の不利益
3900 「不利益の範囲」
会社が、委員長に給料を全額支給し自宅待機を命じていても、故なく就労を拒否されていることは精神的に苦痛であることは明らかであるから労組法7条1号の「不利益扱い」に該当する。

業種・規模  精密機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集50集444頁 
評釈等情報  労働判例 1973. 9.15  181号 80頁 

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